'08年02月06日
Report #054  フィッシングショーOSAKA2008見物記


早いもので2008年投げシーズンの開幕が近付いてきた。
毎年2月最初の週末にフィッシングショーOSAKAが開催されているが、ネット文化の恩恵で
ここ数年は直接フィッシングショーに行くことなくネットで情報をキャッチ・・・
後ほど釣具店で総合カタログを購入・・・というパターンが定着していた。

丁度2月第一日曜にはクラブの新年総会が開催されるので、一泊家族旅行で計画すれば
フィッシングショーと大阪観光,須磨水族園とクラブ新年総会,神戸観光の一石五鳥これついで
にと6年ぶりにフィッシングショーにちょろ2号と出かけてみた。

今年のお目当てはシマノが新型リール;スーパーエアロキススペシャルMgと機種追加された
スピンパワー365シリーズ。
そして、ダイワも新型リール;トーナメントサーフZ45とサーフベーシア35に、ロッドはトーナメント
サーフT-U。

実釣よりもSC競技・・・という私自身にとっては、特に新型リールに興味津々。
じっくりと手に取り、軽さ,バランス,回転精度と、新しいメカニズムやスプール設計をチェックした。

1. シマノ・投げリールブース

まずはシマノブースへ。
カタログ配布の列が約20m。並ぶこと約5分。

無事カタログを貰い、投げブースに・・・途中磯用品のブースがごった返しておりかなり混雑。

投げブースに着くと、まずはスーパーエアロキススペシャルMgを手に取る。
キススペシャルとのネーミングからパールホワイトの外装を予想したが、実はやや青みを帯びた
メタリックシルバー。
このあたり、ロッドとのマッチングでは、キス釣り競技志向のキススペシャルにはテクニウムMgが、
オールラウンダーのスピンパワーにはキススペシャルMgがカラーリングでもシックリきそうだ。


これまでシマノのフラッグシップモデルは『スーパースローオシュレーション』が必ず搭載されて
いたのだが、今回のモデルチェンジで・・・厳密にはスーパーエアロテクニウムMgはまだカタログ
モデルにラインナップされているので機種追加ということかも知れないが・・・シマノはスーパー
スローオシュレーションに別れを告げてエアロラップと称するオーソドックスな等速オシュレーション
に切り替えたようだ。

さらに、左利きユーザーのためにロータ回転方向が通常とは逆向きの『リバース』仕様を設定し、
12段階タラシ調整機構を持たせた超々ジュラルミン製35mmスプールを新設計するなど、常に
『投げる』ことに重心を置いた進化型リール設計はエアロならではの伝統だろう。

スーパーエアロキススペシャルMgを手に取った瞬間、軽さや重量バランス,デザイン面において
文句なしに素晴らしいと感じた。

補足するなら、10年前にスーパーエアロテクニウムが発売された時にも感じたあのフィーリング。
シルキーでスムーズ,しっかり感がありブレがない。
私の所有するシマノ投げ専用リール:SA157型スーパーエアロEVとは全く次元の異なる回転
フィールに、4.4倍の価格差を実感した。

ただ、個人的に気に入らないのが、大口径ノーテーパースプールが標準装備で、夢屋ブランドから
別売りされるオプションスプールも大口径&0〜4度マルチテーパースプール1種類しかない点。

そして、従来モデルのスプールは一切互換性がない、というエアロの欠点的伝統がまたしても
貫かれたこと。

出来れば初期エアロで定番だった小〜中口径&5〜6度テーパースプールのオプション販売や、
従来機用35mmスプールとの互換性を有するモデルの開発も検討して欲しいものだが・・・


さて、シマノ・リールブースでもう一台興味をそそられたのがこちら。


スーパーエアロ・スピンジョイXTという新シリーズ。
ストローク:30mmは投げ専用リールとして必要十分な遠投性能を発揮するはずであるし、何と
言っても上位モデル;スーパーエアロEVと同様にアルミ鍛造ノーテーパースプールを採用し、
おまけにハンドルはEVよりも高級感漂う80mmアルミマシンカット製とするなど、主に初心者〜
中級者向けの投げ専用リールでありながら手抜きのない本格設計には正直驚いた。

しかも、ドラグ付きのパワーエアロバージョンまであるということは、案外このクラスでもシマノは
ホンキで作ったようだ。

自重が540gとやや重くラインローラーがボールベアリング内蔵タイプではない点と、標準小売
価格が17,000円とやや高額である点がマイナスポイントだが、もしかするとスピンジョイXTを
ベースにした35mmストローク機が次期EVとしてリリースされるのだろうか?

2. シマノ・投げロッドブース

シマノ・投げロッドブースでは、レモンイエローにペイントされたスピンパワー365シリーズが注目
されていた。


従来からの395,405〜425,435の2種4バージョン×EX,DX,CX,BX,AX,XX,XXXの7グレード
構成に加えて、新たに365でFX+,EX+,CX,BXの4グレードが追加された。

CXとBXは、グレード記号こそ従来モデルと共通であるが、ロッドのアクション自体は全くの別物。
特に#2セクションの張りは従来モデルより一クラス上位グレード並みに強化されているようだ。

これならCX+,BX+と表示しても良いのでは?と感じたのだが、これはロッドが短いために感じた
錯覚なのだろうか?
やはり実際にシンカーを付けて投げてみなければ分からないが、365シリーズはカラーリングを
変えただけでなくブランクスの材質や構造にも手を加えているのでは?と感じた次第。

来場者の中には、フィールドテスター氏に
「従来の405に比べると365ではやはり飛距離は落ちるのでしょう?」
と質問されている方もいたが、今回のスピンパワー365シリーズでは投げるコツさえ掴めば通常の
実釣領域は完全に405シリーズにオーバーラップするのでは?と感じるくらい、飛びそうな印象を
受けた。

3. ダイワ・投げリールブース

続いてダイワブースへ。

混雑具合はシマノと互角。
しかし、フィールドテスター氏にアドバイスを求める人が多いシマノに対し、ダイワブースでは
思い想いのタックルを手に取り、じっくり吟味する人が多いように感じた。

特に注目を集めたのは、やはりトーナメントサーフZ45だろう。


今回トーナメントサーフは、Z45C〜Z45Uの設計仕様から完全にリニューアルされ、ネーミングも
Z45Vとはせずにリセット。
新たなベンチマーク機:Z45に生まれ変わり、リアル4と称する精密駆動システムやサイレント
オシュレーションなど、内部メカニズムの改良だけにとどまらず、エアメタル(マグネシウム合金)
のボディーは防水,防塵処理を強化し、機能上,構造上水や砂の浸入から内部のメカを保護
するためのカバーリングを徹底的に廃止。

ロータにはマグネシウム合金よりも軽くて強い新カーボン材;ザイオンを採用し、こちらも徹底的
に肉抜き・・・というより空洞化による質量低減を行っている。

さらに、従来機:Z45Uで初めて採用された6段階タラシ調整機構まで廃止し、徹底的に軽量化。
SC競技ならともかく、実釣の場面では6段階ものタラシ調整機構を利用するユーザーが少なく、
かつ社外品チューンド・スプールの使用比率が高いことへの対処なのだろう。

これまでにない手法での軽量化の結果、リールの心臓部であるボディーハウジングのみが
ケーシングされ、クラッチ収納部やベール反転時のロータストッパー機構が、ロータの後方や
側面から丸見え状態になってしまった。


軽量化を優先し、ここまで筐体の開口部を増すことが長期的な使用に対し影響がないものか
不安に感じるが、360g〜365gという投げ専用リール史上最軽量マシンがもたらすスウィング
スピードに魅力を感じるキャスターも多いことだろう。

私個人的には、現在使用しているZ45C,Z45Uの実測質量:420〜425gや駆動系の回転精度
にも概ね満足している。

新しいリアル4システムも魅力的ではあるが、SC競技専用でリールを使用する場合には少々の
回転ザラつきも気にならない方なので、今のところ新型Z45は購入予定リストに入っていない。

そもそも、標準小売価格が90,000円+αという新型Z45を購入するための資金もないし・・・

ただし、今回のモデルチェンジではスプールのディメンションが見直されており、こちらには注目
している。
というのも、新型Z45スプールには従来機にはなかった前端径:62.0〜67.6mm(中口径)で2〜6度
のスプールが採用されているが、これらはダイワ45シリーズの伝統により旧型モデルへの転用
が可能とのこと。
これらのうちナイロン2号ラインが230〜270m巻き取れるタイプの発売が楽しみなのだ。


この他、ダイワ・投げリールブースで興味を持ったリールは、サーフベーシア35とタイドサーフQD
の新しいスーパーメタル(アルミニウム合金)ボディー・シリーズ。


左:サーフベーシア35              右:タイドサーフQD

これらのモデルは、従来のグランドサーフ,パワーサーフQDの系統がリニューアルされたもの、
と判断できるが、標準小売価格は10,000円以上も上昇し、サーフベーシアが40,000円,
タイドサーフQDが35,500円〜40,000円と、従来機より一クラス上位グレードの価格設定だ。

サーフベーシア35は自重465〜470gと、トーナメントサーフ35(440g)やトーナメントサーフ
ベーシア45U(440g)に匹敵する軽量化を、比較的安価なスーパーメタルボディーで実現。
従来機:グランドサーフシリーズよりも50〜100gほどダイエットに成功している。

その他の従来機との違いとしては、リアル4の搭載,スクリューロック式アルミマシンカット
ハンドル,エアベール,小型ハンドルノブなどが採用され、替えスプールが1個付属されている。
(タイドサーフのハンドルはマシンカットではなくダイカスト製で大型の中空ノブとなる。)

一方でロータとスプールは従来機の仕様をほぼそのまま受け継いでいるが、サーフベーシア
ではスプールフロント面の開口形状がグランドサーフVよりも平坦なデザインとなり、スカート部
のホール加工が省かれるなど、コストダウン目的と思われる設計変更を加えている。

また、展示サンプルではラインローラーが従来の窒化チタンタイプではなくクロムメッキ風の
ローラーが装着されていたが、これが仕様変更によるものかそれともプロトタイプ故の仮部品
装着なのかは定かでない。
しかし、これがもし仕様変更によるものであれば、こちらもコストダウン目的の設計変更に該当
するのであろう。

どうやらダイワは、シマノ・スーパーエアロスピードキャストの標準小売価格:40,000円を強く
意識し、サーフベーシアを同一価格でリリースするためにパーツ毎のコスト配分を十分に吟味
工夫したようだ。

総合すると、釣行後の手入れにそれ程気を使わなくて済む『スーパーメタル』ボディーで、かつ
軽さと滑らかな回転が魅力的なサーフベーシア35。
キス釣り専用に一台欲しい気もするが・・・実売価格ではあと10,000円上乗せすれば上位機:
トーナメントサーフ35(キャスティズム)やトーナメントサーフベーシア45Uに手が届くというのは、
ラインナップ上ではやや中途半端な存在に感じた。

投げタックルに力を入れているダイワならではの充実した商品ラインナップ間での目移りが、
購入意欲を減衰させることを予測しなかったのだろうか?
やや疑問点が残るダイワ・投げリールブースであった。

4. ダイワ・投げロッドブース

最後に、ダイワ投げロッドブースへ。
こちらの目玉も、シマノ同様実釣用ロッドが主体だ。

スピンパワーの独壇場だった本格振出投げロッドの市場に切り込み、瞬く間に人気を広げた
通称『赤サーフ』が満を持して第二世代;トーナメントサーフT-Uへと進化した。



今回のモデルチェンジでは、ブランクスのHVFからSVF化と、5ガイドから7ガイド化,
チタン製別体リールシートから樹脂成形一体シート化の3つの変更が主な内容のようだ。

ブランクスのSVF化によりカーボン繊維密度が極めて高くなり、そのせいか30号クラスでも腰の
張りは半端じゃなく並継ぎに近いものとなったようだ。
この辺りは、一足先にモデルチェンジしているスピンパワーTも同様で、CX(30号)でもかなり
硬そうな感じであったが、T-Uはスピンパワーよりもほんの少しだが張りがあるように感じ
られた。

ブースでは、新開発の一体型リールシートにトーナメントサーフZ45を装着し、使用感をチェック
している来場者も見受けられたが、ロッドのブランクス径が細くなっているにも関わらず掌に
シックリと納まる立体成形グリップは、なかなかの快適性をもたらすようだ。

実釣用振出ロッドとしては究極の一本と言っても過言ではないだろうが、あまりに究極過ぎる
ので、私のようなヘボ釣り師にはもったいない一本だ。


この他、昨年のデビューから人気を得ているらしいキャスティズムには18号〜23号の超軟調子
タイプが追加発売。

18号は2.95mの2ピース,20号と23号は3.65mの3ピースタイプとなるが、18-295は投げロッドと
言うよりはむしろダブルハンド・ルアーロッドのテイスト。
これら軟調子ロッドで波打ち際に潜む20cmクラスのキスを掛けると、かなり面白い釣りができる
のだろう。

一方で、27号〜30号クラスは同じカラーリングであるがブランクスの造りは全く別物。
シマノ・スピンパワー365シリーズと同様強靭な腰を与えて遠投性能を確保しているらしい。
(そもそも、スピンパワーはキャスティズムをお手本の一つとして開発されたのだろうが・・・)

私自身はスカイキャスター33-405をキス釣りのメインに使用しているが、キャスティズム30-385
はスカイキャスター33号よりも一クラス硬めの設計であるらしく、トーナメントキャスター30-405や
サンダウナー・コンペティション-U31-405と比べても、かなり張りのある設計のようだ。

5. むすび

今回、投げタックル二大メーカーであるシマノとダイワを中心にフィッシングショーを見物したが、
両社ともリールは超軽量化と高機能,高品質化が加速し、価格もそれなりに上昇してきている。

かつては実売価格が10,000〜20,000円でかなり満足度の高いリールが手に入ったのだが、
各社今年のラインナップでは主力中級機で実売価格:30,000円前後、フラッグシップモデルでは
実売価格:70,000〜80,000円とかなりの高額商品になってしまった。

価格が上昇すればユーザーは自ずと高耐久性を期待するが、あくまでも個人的印象では、
シマノ・スーパーエアロキススペシャルMg vs. ダイワ・トーナメントサーフZ45の対決では
見た目のしっかり感からシマノ・スーパーエアロに好感を持った。

ダイワ・トーナメントサーフZ45については徹底した軽量化に感激したのだが、やはり奇抜過ぎる
リール筐体の開口設計と、非常に高額な価格設定には購買意欲を感じなかったが、新しい
スプールを旧型機ユーザーにも互換性をもたらしてくれる配慮には好感を持った。

また、ロッドでは両社とも実釣用アイテムの充実が今年の目玉になっており、SC競技用ロッドに
関してはサンダウナー・コンペティション-U33-390が追加されたのみ。

やや寂しいフィッシングショーとなってしまったが、これは2008年がSC競技用ロッドのモデルライフ
成熟期に相当するためにブランニュー・モデルの出品がたまたまなかっただけ、と信じたい。

実釣用新製品では、スピンパワー365 vs. キャスティズム & トーナメントサーフT-Uの対決に
おける共通項は、恐らく「新しい投げ釣りスタイルの提案」ではないだろうか?

オールラウンドタイプ・ショートロッドで積極的に攻める釣りと、振出の機動力に高感度化アイテム
を装備することによる、魚を感知して攻める釣り。

ユーザーがそれぞれのフィッシングスタイルに応じてタックルを選択する自由度が大幅に増し、
より投げ釣りが楽しく快適になるようなニューコンセプトは、いつかSC競技用ロッドにも水平展開
されてSC競技がより楽しくエキサイティングになることと期待して、本レポートを締めくくりたいと
思います。