シマノ
 チタノスエアロ GT8000

2017年6月24日現在

飛距離指数:1.013 (
★★★☆☆
平均飛距離:167.51m
(テスト回数:8回)


スペック チタノスエアロ GT8000
発売時期 1985年
スプール 前端径 φ59.0mm
算出後端径 φ67.6mm
ストローク 35mm
勾 配 7度
エッジ開放角度 約20度
全 長 54mm
糸巻き量 ナイロン2号−300m
本体材質 カーボン樹脂
リング材質 SiC
スカート なし
カタログ自重 440g
ナイロン2号糸込み質量 476g
フルストローク全長 182mm
オシュレーション方式 円筒カム単軸
2スピード:2.6度綾巻き
前:6.5ターン/後:10.0ターン
ボールベアリング 2個
ラインローラー SiC-U型
マスターギア 超ジュラルミン
(鍛造)
メインシャフト スチール
φ6.5mm
ボディー&ローター チタノス補強カーボン樹脂
ハンドルタイプ 左専用/85mm
ハンドルグリップ 表層:ソフトラバー/コア:樹脂
ローター回転方向 時計回り
ギヤ比 1:3.8
メーカー希望小売価格 24,000円
前モデル:エアロキャストシリーズでは、廉価版から上級者向けフラッグシップモデルまで4機種
9タイプの仕様が存在したが、二代目エアロでも豊富なラインナップを展開。

ラインナップ構成は、以下の3タイプ5機種となった。
@最廉価版:24mmストロークの5000ESと5000EXの2タイプ
Aミドルクラス機:28mmストロークのES6000(廉価版)とGT6000(ハイスペック版)
Bフラッグシップモデル:35mmストロークのGT8000

最上位機のGT8000は、初代7000EXから受け継いだ35mmストロークと、9000EXから
受け継いだ2スピード・オシュレーションを装備しつつ、スプールバリエーションが以下の4タイプ
6種類が設定された。

@ナイロン1.5号用(250m巻き) 7度スプール(アルミリング&SiCリング)
Aナイロン1.5号用(250m巻き) 10度スプール(アルミリング)
Bナイロン2号用(300m巻き) 7度スプール(アルミリング&SiCリング)
Cナイロン5号用(200m巻き) 3度スプール(カーボン樹脂一体)

これらのスプールの組み合わせによって、
(a) @SiCリング+A+Bアルミリング=極細仕様
(b) @アルミリング+BSiCリング+C=標準仕様
(c) BSiCリング+C           =パワー仕様
の3仕様に設定分けされた。

ボディー&ローターは初代のアルミニウム合金製からチタノス補強カーボン樹脂製に換わり、
ネーミングも「エアロキャスト」から「チタノスエアロ」となった。

その「チタノス」とは、チタン酸カリウムウイスカーを添加したカーボン樹脂製釣具の商標呼称
であるが、1985年〜1990年頃にかけてシマノ製リールの多くに「チタノス」のネーミングが与え
られ、カーボン樹脂製ボディーやローターの強度アップ目的で添加していたようである。

同年代に発売されたリョービ・プロスカイヤー7セラテックノーズや同・プロスカイヤー7スーパー
ノーズ4570にもほぼ同じチタン酸カリウムウイスカーがカーボン樹脂の補強材として添加されて
いたようである。

キャスティング競技においては、軽量でライン放出抵抗が小さくなるSiCリング付き7度スプールを
装備したGT8000が、先代モデル:エアロキャスト7000EX&9000EX以上に人気を得て、現在でも
GT8000を愛用する選手は多い。

テスト投擲では、エアロキャスト9000EXをしのぐ飛距離指数をマークする機会が数回あった反面、
リリース直後に一気に解けたラインがガイドリングを叩きがちで、飛距離が極端に悪くなることも。

結果的に、飛距離指数が1.040前後をマークするか、それとも1.000前後に落ち込むかの二面性
が現れて、平均飛距離指数は1.013と期待外れな値となった。

表2 シマノ・チタノスエアロ GT8000での実投比較データ
比較対決リール BM
飛距離指数
BM
平均飛距離
チタノスエアロ GT8000 テストロッド
平均飛距離 飛距離指数

リョービ・プロスカイヤー7
スーパーノーズ
1.000 163.23m 162.66m 0.997 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425
1.000 180.14m 177.93m 0.988 リョービ・BORONプロスカイヤー
PROTOTYPE 40-425
1.000 163.13m 163.87m 1.005 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.000 164.08m 164.65m 1.003 魚心観・HYBRID HERITAGE 410
リョービ・プロスカイヤー7
スーパーノーズ4570
1.015 159.04m 162.50m 1.038 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
ダイワ・ウイスカーTHEキャスター
EX-8000
1.019 178.72m 175.66m 1.002 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425
ダイワ・トーナメントプロキャスター
SS-45U
1.025 163.11m 165.94m 1.043 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425
シマノ・12スーパーエアロ
フリーゲン
1.034 168.06m 166.86m 1.027 魚心観・HYBRID HERITAGE 410
チタノスエアロ GT8000 総合評価 167.51m 1.013


チタノスエアロ GT8000は先代モデル:エアロキャスト9000EXと同様に軽くて重量バランスに優れた
リールではあるが、投擲動作中にリールの重心位置が明確に感じられず、フィニッシュでロッドを
押し込む際のフィーリングに少し不満が残った点も、飛距離指数が揃わなかった原因かも知れない。

特に多く比較テストを行ったリョービ・プロスカイヤー7スーパーノーズとの飛距離差が予想外に
小さく、勝負は2勝2敗で互角の争いとなってしまったことが飛距離指数低下の第一要因ではない
だろうか。

歴代投げ専用リールの中でも特に軽量な部類のチタノスエアロ GT8000(ライン込み476g)が、
逆に最も重量級投げ専用リールの一台であるプロスカイヤー7スーパーノーズ(ライン込み608g)
に圧勝できなかった原因は、紛れもなくスウィング中のリール重心位置の認識が希薄である点で
あり、リールが軽いが故にロッドの曲りを最大限に得ることができていなかった。

プロスカイヤー7スーパーノーズは重いのだが、重心位置がリールフット直下にしっかりと認識でき、
ロッドを上手く曲げることができるために飛距離も安定する傾向が強いのだ。

と、言い訳を重ねてみたものの、やはりこの飛距離指数(1.013)には納得できない。

過去には、チタノスエアロGT8000を使用してキャスティング競技ST種目で連戦連勝を飾った選手
もいるだけに、このリールに適合するガイドセッティングやロッドチョイスをすれば、恐らく飛距離
指数は1.030〜1.040を揃えることも可能なのだろうが・・・

そんなモヤモヤを抱えたまま、チタノスエアロ GT8000の実投比較テストを中断して数年の月日が
流れてしまったが、東広島市河内町のキャスティング会場での練習使用期限が間近に迫り、
これがチタノスエアロ GT8000での最後の実投比較のチャンスかと思い、2017年夏のある日に
「新旧タックル直接対決!」を行った。



練習場に持ち込んだのは、2014年以降のキャスティング競技&練習でメインリールとなっている
11スーパーエアロ キススペシャル コンペエディションと12スーパーエアロ フリーゲンである。

  

過去の投げ専用リール実投比較では、風向風速コンディションの変化影響による有利不利を打ち
消すために繰り返し評価を3回以上行うことを常としてきたのだが、今回の『対決!』は練習場の
使用期限切れのためやむなく2回分しかデータが取れていない。

データ数が少ない点は、どうかお許しをいただきたい。

表2 チタノスエアロGT8000の遠投性能調査結果
リール機種 シマノ
チタノスエアロ
GT8000
シマノ
12スーパーエアロ
フリーゲン
シマノ
11スーパーエアロ
キススペシャル CE
評価項目 上位60%
飛距離
平均飛距離 上位60%
飛距離
平均飛距離 上位60%
飛距離
平均飛距離
第1回テスト
(各7投)
168.31m
167.39m
162.07m
160.83m
164.65m 167.16m
167.00m
166.61m
165.03m
166.45m
第2回テスト
(各8投)
171.19m
170.20m
166.48m
163.46m
162.97m
166.86m 170.67m
169.65m
168.29m
165.88m
165.84m
168.06m 170.67m
170.42m
169.40m
169.02m
164.78m
168.86m
総合評価 165.88m 167.35m 168.86m

結果としては、やはり近代投げ専用リールがチタノスエアロ GT8000に対して平均飛距離で勝利
している。

興味深い点は、最長レースでは2戦中2勝しているチタノスエアロ GT8000であるが、平均飛距離
ではボトム値が足を引張り2敗してる点であろうか。

最長と最短の飛距離差が11スーパーエアロ キススペシャル コンペエディションで約6m,
12スーパーエアロ フリーゲンで2〜5mの差となっているが、チタノスエアロ GT8000は7〜8m開く
傾向にある。
このボトム値側飛距離の発生要因は主に糸ヨレに関連するガイドフレームへのテーパーライン接触
と、リリースタイミングのバラツキによる飛距離ダウンである。

ラインローラーがボールベアリングを内蔵しない旧式仕様のチタノスエアロ GT8000では糸ヨレの
蓄積は避けられず、結果としてラインリリース直後のガイド叩きによって数mの飛距離ロスを生じる
ことが多くみられた。

やはり、5回しか投げることができないキャスティング競技においては、糸ヨレの蓄積による飛距離
ロスを生じる恐れのある旧式リールよりは糸ヨレの蓄積が少ない近代モデルをチョイスする方が
より良い選択ではないだろうか?と感じた『新旧対決!』であった。