シマノ スーパーエアロ テクニウムMg
  with 夢屋 ノーテーパースプール & WINDS 5°テーパースプール

2011年6月4日現在

@夢屋 ノーテーパースプール装着時
飛距離指数:1.021 (
★★
平均飛距離:168.05m

(テスト回数:25回)

AWINDS 5°テーパースプール装着時
飛距離指数:1.029 (
★★★★
平均飛距離:171.32m

(テスト回数:14回)

 
夢屋 ノーテーパースプール装着                    WINDS 5°テーパースプール装着

スペック スーパーエアロ テクニウムMg (SA23型)
発売時期 2003年
スプール スプールタイプ 夢屋 PE1.5号用
ノーテーパースプール
WINDS PE0.8号用
5°テーパースプール
前端径 φ74.1mm φ68.5mm
算出後端径 φ74.1mm φ72.8mm
ストローク 40mm 40mm
勾 配 0度 2.9度(胴径からの計算値)
エッジ開放角度 56度 67度
実測自重 67g 53g
全 長 55.5mm 55.1mm
糸巻き量 ナイロン2号-280m(実測) ナイロン2号-260m(実測)
材 質 本体:超々ジュラルミン 本体:耐磨耗性樹脂
リング:超々ジュラルミン一体 リング:耐磨耗性樹脂一体
スカート なし なし
希望小売価格 10,000円(税別) 5,250円(税込み)
カタログ自重 417g 409g
ナイロン2号糸込み質量 451g 435g
フルストローク全長 191mm 190mm
オシュレーション方式 円筒カム複軸
等速:0.4度超密巻き
前後各56ターン:0.7mmピッチ
円筒カム複軸
等速:0.4度超密巻き
前後各56ターン:0.7mmピッチ
ボールベアリング 10個(うち1個ローラーベアリング)
ラインローラー パワーローラーV
(耐食処理ボールベアリング2個内蔵)
マスターギヤ 超々ジュラルミン
(冷間鍛造)
メインシャフト アルミニウム合金
φ6.5mm
ボディー&ロータ マグネシウム合金
ハンドルタイプ 左右組替え式共用/70mm
(スクリューシャフトのみ左・右各専用)
ハンドルグリップ 中空成型コア/軟質ラバー表皮
ロータ回転方向 時計回り
ギヤ比 1:3.3
メーカー希望小売価格 65,000円(税抜き)
メタルボディーの剛性感がもたらすシルキーな回転フィールに、飛ばすために拘ったロングストローク
スプールやシマノ独自のオシュレーション機構を搭載したスーパーエアロ テクニウムシリーズ。

初代テクニウム(SA139,149)と二代目チタニウム(SA190,200)はスプールのディメンションは共通
に、オシュレーション方式を2スピードとスーパースローで住み分けることで、同時期に二極のフラッグ
シップモデルとして1997〜1998年の発売から2002年までの間、名実ともに歴代エアロシリーズの
頂点に君臨し続けた。

これらテクニウムシリーズの後継機として、ボディー&ロータに比重:1.8のマグネシウム合金を採用
し、大口径:φ73mm×ロングストローク:40mmにも関わらず極薄肉化と大胆な肉抜き加工を施した
超々ジュラルミン製軽量ノーテーパースプールとスーパースロー・オシュレーション,ベールレスライン
ローラーを搭載し、歴代エアロの中でも最軽量:395g〜410gのSA23型スーパーエアロ テクニウムMg
が2003年に発売された。

大口径・ノーテーパースプールとスーパースロー・オシュレーションの組み合わせは、主に極細PE
ラインでの飛距離アップとトラブル・レスを両立するハイバランス設計であるとメーカーでは説明して
いる。

しかし、私自身は過去にシマノ・スーパーエアロXT-SS(スーパースロー・オシュレーション)と
同XT(2スピード・オシュレーション)との実投比較やリョービ・プロスカイヤー7スーパーノーズ4570,
ダイワ・トーナメントサーフZ45U-Competitionなどの実投テストを行ってきた結果から、
スーパースロー・オシュレーションや大口径・小勾配スプールについては飛距離アップが見込めない
と思い込んでいた。

ところが、スーパーエアロ テクニウムMgを手にして投げた第一印象的に、
『飛ばすのはスプールやオシュレーションではなくロッドとリールのコラボレーションである』
ということに気付いた。

飛ばすためにはロッドを曲げることが最重要であり、曲がらないロッドに弾かれたシンカーが飛ぶ
ことはない。
そして、ロッドを曲げることへのリールの寄与,貢献が予想以上に大きいことを実感したのだ。

結論的に、スーパーエアロ テクニウムMgは『ロッドを曲げるためのリール』 として求められる要件
を満たす特徴を備えており、
@リールフット軸がリール重心軸より後方(竿尻側)にある
A人差し指のラインキープ角度が80〜85度となる
ことがスーパーエアロ テクニウムMgだけが持つ、キャスティング時にロッドの曲がり(ポテンシャル)
を最大限に引き出すための特徴ではないかと感じた。

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多くのロングストローク投げ専用リールが、リールフット軸をリール重心軸に接近させることで、
リーリング時のハンドルやロータ,ベールアームなどの回転駆動系のブレを抑えている。

また、スプールを最も前進させた状態で、スプール後端がラインキープする人差し指の直下に位置
するため、人差し指でのラインキープ角度は直角(90度)となる。

このような重心位置,ラインキープ角度のレイアウトであれば、キャスティング時も持ち重り感がなく、
スウィング動作のフィニッシュでリール重心軸をブレなく正確に押し込めるため、より正確な遠投を
実現する。

 
 リョービ・プロスカイヤー7スーパーノーズ4570        ダイワ・トーナメントサーフZ45C

一方でスーパーエアロ テクニウムMgでは、遠投性能を向上するための大口径・ノーテーパースプール
とスーパースロー・オシュレーションを目玉技術として採用しているが、それらによる利便性の低下
…ロータの大型化に伴う回転ブレ増大とキャスティング時のスプール前出し困難化…
を打開するためのベールレス仕様によって回転バランスの中心が移動したせいか?
リールフット軸はリール重心軸よりも若干後方(竿尻側)にオフセットされた。

これに伴い、スプールを最前進した状態でのスプール後端がラインキープする人差し指より15mm程度
前方に位置することになり、人差し指でのラインキープ角度は80〜85度となる。


   シマノ・スーパーエアロ テクニウムMg

ラインキープ角度が鋭角(90度以下)になり過ぎると、スカートレス・スプールではスウィング動作中
にラインがスプール後端からロータやメインシャフトに滑り落ちる恐れがあるのと、人差し指への
ラインの掛かりが深くなり過ぎるためにスウィング動作のフィニッシュでラインリリースするタイミング
が不安定になる恐れがあるのだが、80〜85度の範囲であればそれらの心配はなく安全,正確に
キャスティングが可能である。

さらに、ラインキープ角度が80〜85度とやや鋭角であるが故にスウィング動作中のシンカー荷重が
リニアに感じられ、より確実にロッドを曲げ込むことが可能となるようだ。
そして、曲げたロッドの反発挙動を感じたところでラインリリースするのだが、この時の弾道が不思議
と上昇角:35度前後に揃う点は、重心軸とリールフット軸の位置関係が他の投げ専用シールとは
異なるディメンションを与えられたことの恩恵ではないかと推測する。

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では『飛ばすためのリール』 としての要件は満たしているのだろうか?
飛ばすためのリールとしての要件が、大口径・ノーテーパースプールとスーパースロー・
オシュレーションの組み合わせによる飛距離への貢献度、ということになるだろう。

ここでようやく飛距離指数の話題に入るのだが、夢屋 ノーテーパースプールでの飛距離指数は
1.021と、35mmストロークマシンと肩を並べる値でしかない。
これは、テスト条件が大口径スプールが不得手とするローライダー改6点ガイド仕様のロッドでの
データと、ハイスピンダー6点ガイド仕様のロッドでのデータが混在するためであるが、ローライダー
改6点仕様のロッドでのテストデータ=飛距離指数:1.000を取り除くと、ハイスピンダー6点ガイド
仕様に限定した飛距離指数は1.025とまずまず優れた値になる。

ダイワ・トーナメントサーフZ45Cとの直接対決では5勝9敗と完全に負け越しているが、同じく大口径・
小勾配スプールを搭載しリール自重も近い値となる、ダイワ・トーナメントサーフZ45U-Competition
でのハイスピンダー6点ガイド仕様に限定した飛距離指数:1.024とほぼ同じ飛距離指数となること
から、スーパースロー・オシュレーションによる飛距離向上代はダイワ方式の『クロスラップ』と同等
ということになろうか。

やはりノーテーパースプールではライン放出時の摩擦音がやや騒々しく、特にスプール前端側約1/3
ストローク範囲からラインが出て行く際にスプールリング(エッジ)とラインとの摩擦音が大きいようだ。

これに対して、WINDS 5°テーパースプールは夢屋スプールにはない大勾配仕様での飛距離アップ
が期待されたのだが、このスプールの実測勾配は何故か2.9°と中途半端な値。
何とかスプール後端側の外径実測値:φ77.0mmのギリギリまで下巻きで実勾配を拡大し、見かけ上
で5°勾配の巻き上がりに細工をしてテストを行った。

結果的にWINDSスプールでは5°テーパーの効果が明確に現れ、ライン放出時のスプールリングと
ラインとの摩擦音は夢屋 ノーテーパースプールに比べて数段静かになり、スプール前端側の約1/5
ストローク範囲からラインが出て行く際にのみ、ごく僅かな摩擦音を発しているようだ。

こちらの飛距離指数は0.993〜1.051(平均:1.029)とバラツキがやや大きなとなっているが、飛距離
指数が1.024を下回ったのは14回のテスト中4回であり他の10回のテスト結果では1.024〜1.051の
飛距離指数に落ち着く傾向がみられる。

WINDS 5°テーパースプールと夢屋 ノーテーパースプールとの直接対決では3勝0敗。
また、ダイワ・トーナメントサーフZ45Cとの直接対決では3勝3敗と、WINDS 5°テーパースプールは
なかなかの遠投性能を有していることが分かる。

ただし、これまでの14回のテスト最中にパーマやガイドへのライン絡みなどの「ライントラブル」が
投擲回数のうちの10%程度で発生しており、夢屋 ノーテーパースプールに比べるとライン巻き取り時
のテンションの掛け具合やラインの経時劣化状況などの影響を受け易いようだ。

特に、ラインへのヨレの蓄積が顕著になるとトラブルの発生率も増大するが、今のところこまめに
新しいラインに巻き替える以外に効果的な対策は見つかっていない。

さらに、ギリギリまで薄肉化された樹脂製のWINDS 5°テーパースプールは、真夏の環境下に
ナイロンラインを巻いたままで保管すると、スプール胴部がナイロンラインの収縮力で変形してしまう
欠点がある。

WINDS 5°テーパースプールを装着したスーパーエアロ テクニウムMgの遠投性能を純粋に評価
するとそのポテンシャルはかなりハイレベルであり、私が2001年から大会本番用に愛用している
ダイワ・トーナメントサーフZ45C系と同等かそれ以上であろう。

ただし、樹脂製スプールの耐久性やライントラブルの発生率に若干の不安を感じることから、大会
本番用リールへの昇格の見込みは、今のところない。

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ところで、スーパーエアロ テクニウムMgを使い始めて1年強が経過したが、この間にメンテナンス上
の気付き点があるので紹介しよう。

まず、スプールツマミをキッチリ締め込んでいる状態で、スプール前端部を手で持ちスプールに回転
方向のトルクを掛けた際に、スプールが1〜3mm程度の振幅でガタつく場合がある。

このような時には、スプール軸(メインシャフト)と摺動子(オシュレーションスライダー)を締結する
摺動子固定ボルトに緩みを生じているため、本体ガード(リヤキャップ)を固定する小ネジ1本と
注油穴キャップネジ2箇所を外して本体ガードを取り除き、リール内部の摺動子固定ボルト2本を
増し締めする。

             

従来のエアロシリーズでは、摺動子固定ボルトには必ずロックタイト(緩み止め剤)が塗布されて
いた上に、機種によっては1本の摺動子固定ボルトの頭をもう1本の摺動子固定ボルトの頭が
押さえるように締結するレイアウトだったのだが、コストダウンの影響か?テクニウムMgでは
ロックタイト塗布が省略されて摺動子固定ボルトのレイアウトも変更されたために、ネジの緩み
によるスプール軸のガタつきが頻繁に起きるようだ。

ちなみに、摺動子固定ボルトに緩みを生じると、リーリング中のオシュレーションも乱れるため、
ラインの密巻きピッチに狂いが生じる。
その結果、投擲時にパーマやガイドへのライン絡みなどのトラブルを頻発するため注意が必要だ。

これまでのメンテナンス実績では、2〜3ヶ月のキャスティング練習の都度、摺動子固定ボルトの
増し締めを行っていることから、適正なメンテナンス周期は200〜300投前後と考えれば良いだろう。

また、投擲時にアームカム(ローラーアーム)を反転することでロータの空転をロックするはずの
内ゲリレバーが確実に機能せず、スウィング動作中にロータが空転してしまうことがある。

このような症状がみられるままに放置すると、本体側に突起したアームカムストッパーが磨耗して
内ゲリレバーの当たりがますます弱まり、ついにはロータ空転防止機能が大幅に低下するようだ。

この症状は早い段階で症状をキャッチして処置を施す必要があるようなのだが、下の写真に示す
内ゲリレバーとそのカバーを固定するネジ:ガード固定ボルト(B)を増し締めすることで、内ゲリ
レバーと本体側突起との接触が回復するため、スウィング中のロータ空転が防止できる。

             

ただし、このネジは強く締め込み過ぎるとガード固定ボルト(B)またはロータ側のメネジを傷めて
しまう恐れがある。
内ゲリレバーの固定ボルト増し締めでは、特に入念に適正な締め付けトルクを掛ける必要がある
だろう。