13スーパーエアロ サーフリーダーCI4+ 35 (SA49)
  with 標準ナイロン3号用スプール & 夢屋・ナイロン2号用2027スプール

2014年3月2日現在

①標準ナイロン3号用スプール装着時
飛距離指数:1.025 (
★★★★☆
平均飛距離:170.25m

(テスト回数:15回)

②夢屋・ナイロン2号用2027スプール装着時
飛距離指数:1.013 (
★★★☆☆
平均飛距離:166.09m

(テスト回数:6回)

   
    標準ナイロン3号用スプール装着仕様               夢屋・ナイロン2号用2027スプール装着仕様

スペック 13スーパーエアロ
サーフリーダーCI4+ 35 (SA49)
発売時期 2013年
スプール スプールタイプ 標準ナイロン3号用スプール 夢屋・ナイロン2号用2027スプール
前端径 φ73.5mm φ72.0mm
算出後端径 φ77.5mm φ76.0mm
ストローク 35mm 35mm
勾 配 マルチテーパー4度 マルチテーパー4度
エッジ開放角度 57度 67度
全 長 52.6mm 50.6mm
糸巻き量 ナイロン2号-300m ナイロン2号-270m
材 質 本体:アルミニウム合金 本体:超々ジュラルミン
リング:アルミニウム合金一体 リング:超々ジュラルミン一体
スカート なし なし
希望小売価格 5,100円(税別) 16,000円(税別)
カタログ自重 435g 415g
ナイロン2号糸込み質量 456g 432g
フルストローク全長 191mm
オシュレーション方式 円筒カム複軸
等速:0.6度密巻き
前後各23ターン:1.52mmピッチ
ボールベアリング 6個(うち1個ローラーベアリング)
ラインローラー パワーローラーⅢ
(耐食処理シールドボールベアリング1個内蔵)
マスターギヤ 超々ジュラルミン
(冷間鍛造)
メインシャフト アルミニウム合金
φ6.5mm
ボディー&ロータ カーボン繊維強化樹脂
ハンドルタイプ 左右両用/80mm
ハンドルグリップ 樹脂
ロータ回転方向 時計回り
ギヤ比 1:3.5
メーカー希望小売価格 28,100円(税別)
近年の投げ専用リールでは上位グレード機種と下位グレード機種との格差が広がる傾向にあり、
上位機種ではメタルボディーの採用による滑らかな回転精度が求められる一方で、下位機種では
樹脂ボディーの採用による低コスト化が求められる風潮がある。

メタルボディーはさらにマグネシウム(以下Mg)合金製とアルミニウム(以下Al)合金製の2種類に
差別化され、最上位機種がMg合金製ボディーを、準上位機種がAl合金製ボディーを採用するのが
セオリーとなっている。

メタルボディーの素形材はダイキャスト成形法で製造されるが、同一形状で異種材質モデル展開を
する場合にはメタルボディーの成形用金型を2つ用意するかもしくは1つの成形用金型で2種類の
材質がダイキャスト成形可能な高度な技術力と設備を持つ素形材メーカーと手を組む必要がある。

現実的には1つの成形用金型でAl合金とMg合金の2種類の成形を行うことは難易度が高過ぎる
ために材質毎に専用の成形金型を起こすことになり、Mg合金製ボディーを採用する機種と
Al合金製ボディーを採用する機種とは異なるデザインを与えること(が可能)となる。

そのような技術的背景の中、シマノ・08スーパーエアロ キススペシャルMgと同・09スーパーエアロ
フリーゲンは一見同じボディーデザインとなっているようであるが、実は組み合わせるローターの
形式に応じて重心位置がリールフット部直下となるようリールフットからボディーに至る形状を変更
しており、材質毎に別々の金型でボディー素形材を成形していることがうかがえる。

これは恐らく、最上位機種である08スーパーエアロ キススペシャルMgのデザインコンセプトや
ステイタスが準上位機種にも移植できていることを明確にアピールするため、敢えてごく類似の
ボディー形状でMg合金製とAl合金製の異種材質モデル展開をしているのではないだろうか。

~~以下、Mg合金製ボディーとAl合金製ボディーの製造方法の違いを技術的知見で解説~~~

Mg合金はAl合金に比べて酸化や水酸化反応をし易く、酸化したMg合金材では成形した素形材の
品質,強度が期待通りに得られない。
そこで、Mg合金をダイキャスト成形する際には、溶融Mg合金が空気に触れることなく射出できる
ようダイキャストマシンの溶湯射出機構を溶湯保持炉の内部に組み込んだ『ホットチャンバー式』
にすることが一般的である。

成形用金型に射出充填された溶融Mg合金は数秒~数十秒間の冷却により凝固し取り出されるが、
金型から素形材を取り出し易くするために金型表面に塗布する『離型剤』も溶融Mg合金を酸化や
水酸化反応をさせ難くかつ塗布前後で金型温度を変化させない油性離型剤を使うことが多い。

酸化反応には神経質なMg合金であるが、ダイキャストマシンの溶湯射出部材との化学反応性は
ほとんどないためにホットチャンバー式ダイキャストが成立するのだが、一方でAl合金は高温状態
で鉄を強く浸食する特性があるためホットチャンバー式ダイキャスト成形ができない。

従って、Al合金用ダイキャストマシンでは溶湯射出機構は溶湯保持炉と分離され、溶融Al合金は
『ラドル』と呼ぶ耐火材で被覆された汲み取り容器で溶湯保持炉から射出部材へ注湯装填した後、
射出成形される。

Al合金ダイキャストマシンの溶湯射出部材は窒化処理やニッケル系耐熱合金被覆などにより
耐浸食性を高めた特殊鋼が使用される点も、Mg合金用ダイキャストマシンとは異なる。

さらに、Mg合金ダイキャストでは鋳造品質を高めるために金型を加熱オイルで温度調整すること
でMg合金の凝固速度を制御するのに対し、Al合金ダイキャストでは凝固収縮量が大きなAl合金
を急速に冷却・凝固させるために金型内部には冷水を流して温度調整している点でもMg合金
ダイキャスト用の成形設備とは仕様が異なる。

もしボディー&ローターをMg合金製とAl合金製で同一形状・同一ダイキャスト設備で混合生産を
しようとするならMg合金をコールドチャンバー式ダイキャストマシンで成形しなければならず、
その場合には溶融Mg合金の酸化を防止するために特殊なラドルを用いたり射出部材の潤滑油
や金型に塗布する離型剤も特殊な非酸化性品種に切り替える必要がある。

成形用金型についても、Al合金ダイキャストに用いる金型の冷却機能を加熱オイルで温度調整
できるよう設備仕様を切り替えなければならないが、それでも溶融Mg合金の酸化反応に起因する
不良が多く発生するであろうから、たくさん成形した素形材の中から欠陥のない良品を選り
すぐって製品に組み付ける苦労が付きまとうはずである。

これらの技術的事情により、同一形状での異種材料モデル展開は成形用金型を2つ用意するか
もしくは1つの成形用金型でMg合金とAL合金の両方でダイキャスト成形が可能な高度な技術力
と設備を持つ素形材メーカーに生産を委託する必要がある上に、製品価格もそれなりに高額と
なってしまうのだ。


~~~以下、話題を13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35 のインプレッションに戻して~~~

これらのハードルを乗り越えて実現するMg合金製とAl合金製の2種類のメタルボディーモデル
展開は、どちらも優れた強度特性と寸法精度により高い剛性感とシルキーな回転性能が得られる。

一方樹脂ボディーを採用する下位機種はローターやスプールについても樹脂製パーツを採用し、
さらに生産拠点をアジア諸国に移管することで製造コストを抑えているが、上位機種の最新型
スプール設計に準拠したモディファイ型遠投仕様スプールを採用するなどしてコストバリューの
最適化と最低限のキャスタビリティー付与という位置付けで、投げ専用リールとしての市民権は
得ているようだ。

しかし所詮は樹脂製投げ専用リールであるから強度特性や寸法精度はメタルボディーの比では
なく、キャスティング競技ではボディー剛性の不足したリールだとスウィング動作中にラインリリース
タイミングが摑み難く正確な投擲が困難になる。
一方実釣時のリーリング中に、マスターギヤやピニオンギヤなど主要駆動部品の保持精度が低い
とリズミカルな巻き取りができず、折角針掛かりした獲物に逃げられる恐れが生じる。

ではメタルボディーを採用する上位機種と樹脂ボディーを採用する下位機種との中間的スペック
の投げ専用リールは存在しないのだろうか???

そんなニーズにマッチするのが、13シマノ・スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35 である。
ボディー&ローターはカーボン繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)
で成形されており、従来の樹脂製パーツに比べて1クラス強度が向上しているようだ。

ハンドルを回した感触ではマスターギヤやピニオンギヤの保持状態にガタがなく、メタルボディー
を採用する上位機種にも遜色ない滑らかさに仕上がっている。

夏の炎天下でも実投比較テストを重ねたが、気温35℃以上の環境でもボディーやローターの軟化,
剛性不足は全く感じらず、メタルボディーに近い硬質なフィーリング故に
『本当にカーボン補強樹脂製なの?』と疑ってしまうほど主要部品はしっかり作り込まれている。

さらに、標準スプールは上位機種のシマノ・11スーパーエアロ キススペシャル コンペエディションや
同・12スーパーエアロ フリーゲンとほぼ同じディメンションが与えられ、スプールの前端側5.0mm
区間と後端側1.5mm区間をノーテーパーとしてライントラブルを防止しつつスプール胴部28.5mm
区間はライン放出抵抗を低減するために4度テーパーとしたマルチテーパー設計を採用している。

08スーパーエアロ キススペシャルMgや09スーパーエアロ フリーゲンのノーテーパースプールや、
11スーパーエアロ キススペシャル・コンペエディション,12スーパーエアロ フリーゲンの
マルチテーパースプールと、夢屋ブランドで販売されているC-1タイプ・スーパーエアロ互換スプール
が全て使用可能なので、PEラインでのキス数釣りからナイロンラインでのカレイ,アイナメ釣りは
もちろんキャスティング競技まで幅広く楽しめる、マルチプレーヤー投げ専用リールでもある。

    
標準ナイロン3号用4度マルチテーパースプール   夢屋ナイロン2号用4度マルチテーパースプール

13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35に標準装備されるマルチテーパースプールは耐食性
アルミニウム合金の切削加工製となっているようで、夢屋・ナイロン2号用2027スプールで採用
されている超々ジュラルミン冷間鍛造製(16,000円)と比べてリーズナブルな価格設定(5,100円)
でありながら、12段階:約2cm刻みでキャスティング時のタラシ量が調整可能な、かなり優れた
スプールである。

 
       スプール受けの12段階タラシ微調整機構とスプールの六角形着座面

ジュラルミンや超々ジュラルミン製スプールに比べて、Al-Mg-Si系などの耐食性アルミニウム合金
ではスプールの強度を得るために肉厚を増す必要が生じるが、加工歪の除去と時効硬化を兼ねた
熱処理(T5)を施すだけでも十分な耐食性が得られるので、比較的安価に海水環境下で使用可能
なスプールが製作可能である。

さらに夢屋ブランドからもアルミニウム合金冷間鍛造製スプールが販売されているが、こちらは
冷間鍛造製とはいえ13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35の標準装備スプールとほぼ同じ
自重値(ナイロン1.5号用:58g,ナイロン3号用:68g)であり、スプールバンド(メーカー価格:500円)
とサンドプロテクター(同:300円),専用収納ケース(単体での販売はなし)をセットして6,000円の
価格設定であることから、スプール単体での実質価格は13SAサーフリーダー 35標準スプールと
同等額と考えても良いだろう。

これらを踏まえて推測すると、13SAサーフリーダー 35標準スプールと夢屋・アルミ冷間鍛造スプール
の材質や肉厚設計はほぼ同一仕様で、成形プロセスに鍛造工程を採用できる国内生産タイプが
夢屋スプールに、鍛造工程が採用困難?な海外生産タイプが13SAサーフリーダー 35標準スプール
に区分されているのではないかと考える。

夢屋・アルミ冷間鍛造スプールについては全面に金色のアルマイト処理が施されており、実釣に
おける耐食性向上効果ももちろんだが、デザイン的なクオリティー向上の効果も得られるため、
13SAサーフリーダー 35のドレスアップに有効かと思われる。


   夢屋・ナイロン1.5号用アルミ冷間鍛造スプール装着仕様

替えスプールを購入する際には、好みのスプールカラーに応じて13SAサーフリーダー標準スプール
か夢屋・アルミ冷間鍛造スプールかをチョイスすれば良いかと思うが、夢屋スプールに関しては元々
がカスタムパーツとして一定数のみの販売しか行っていないらしく、希望するタイプのスプールが
今現在入手できるかどうかは不明であるが・・・

ところで、13SAサーフリーダー 35標準ナイロン3号用スプールにナイロン2号ラインを300m巻いた
状態では、スプールの前端5mmと後端1.5mmのノーテーパー区間の存在感はなくなり、一般的な
シングルテーパースプール風の巻き上がりとなる。

ライン放出時に抵抗となるオシュレーションターン箇所でのラインの盛り上がりはなくキレイな巻き
上がり外観となるが、スーパースローオシュレーション特有のパーマトラブル対策なのか?スプール
後端径の目一杯までラインを巻いた状態でもスプール前端側にはやや高め(0.3~0.5mm)にエッジ
が残る仕様となっているが、幸い飛距離への悪影響はないようだ。

 
      ナイロン2号ラインの巻き上がり状態             スプールのみ拡大

2011年から2014年に発売されたシマノ・スーパーエアロシリーズでマルチテーパースプールを採用
する機種はスーパースローオシュレーション仕様となっているが、
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35では『スーパースロー5・オシュレーション』と称する
1.52mmピッチ密巻き仕様となっている。

上位機種が採用する『スーパースロー10・オシュレーション』が0.7mmピッチ密巻きであるのに対し、
約2倍の粗さで巻き取る『スーパースロー5・オシュレーション』では投擲時にスプールを最も前進
させたポジションでベールを起こす操作が容易化され、実釣,キャスティング競技ともに投擲の
手返しが早くなるメリットがある。

また、『スーパースロー10・オシュレーション』ではオシュレーション用ウォームシャフト(クロスギア)
にピニオンギヤの回転力を伝達する機構にウォームギア(螺旋歯車)を用いて減速比を高めている
が、13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35が採用する『スーパースロー5・オシュレーション』
ではウォームギアよりも構造が単純な段付き形状の減速歯車を2個用いて減速する方式で、軽量・
コンパクト・低コストにスーパースローオシュレーションを実現しているようだ。


  オシュレーション減速ギヤの一例

上の写真は、08スーパーエアロ キススペシャルのオシュレーション駆動部であるが、ノーマル
オシュレーション(クロスラップ方式)ではピニオンギアとウォームシャフトギアは直接噛み合うが、
それらの中間に外径差を持つ中間ギア(減速歯車)を介する構造とすることでオシュレーション
速度をノーマル比で約2.5倍に減速している。

この2.5倍減速オシュレーション機構は、以下の投げ専用リール等に幅広く採用されている。
・08スーパーエアロ キススペシャル
・09スーパーエアロ フリーゲン
・09スーパーエアロ スウィングキャスト XT
・10パワーエアロ フリーゲン TD
・13スーパーエアロ フリーゲンSD
・13パワーエアロ スピンパワー
・16スーパーエアロ キススペシャル
・17フリーゲン 35
・17フリーゲン 35 SD

一方で13SAサーフリーダー 35では、この減速歯車を2つに増やすことで2.5倍減速×2個=5倍
減速までスローオシュレーション化したメカニズムを採用している。

ノーマルオシュレーションの場合、スプールストローク1往復間のローター回転数は12~14回転が
標準的であるが、1段減速型スローオシュレーション機では12回転前後に、さらに2段減速型
スローオシュレーションでは23回転まで低速化できる。

11スーパーエアロ キススペシャル コンペエディションや、12スーパーエアロ フリーゲンが採用する
ウォームギア式減速機構を用いた『スーパースロー・10オシュレーション』でのスプールストローク
1往復間のローター回転数:100回転に比べると減速比は小さいが、少ないスペースで安価に
2.5倍減速と5倍減速の2種類のスローオシュレーションを作り分けるメカニズムは、非常に合理的な
設計だと言えるだろう。

この他にも、上位機種と同様のデザインで45gまで贅肉を落とした『ライトマシンカットハンドル』
や継ぎ目がなく極細PEラインも絡みつかない『ワンピースベール』,マスターギヤーへのグリース
塗布を容易にする『オイルインジェクションホール』などが備わっており、実売価格2万円強の中位
機種ジャンルに革命をもたらした13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35。

  
     ライトマシンカットハンドル            ワンピースベール          オイルインジェクションホール

気になる飛距離の方も、上位機種に匹敵する優秀な数値を叩き出している。

2014年3月2日時点での飛距離指数は、
①標準ナイロン3号用スプール:1.025
②夢屋・ナイロン2号用2027スプール:1.013
となっており、期待に反してキャスティング競技専用の夢屋・ナイロン2号用2027スプールよりも
標準ナイロン3号用スプールが歴代投げ専用リール中でもまずまず上位に付ける結果となっている。

印象としては強い向かい風コンディションで飛距離の低下が大きいようであるが、この点は大口径
スプールを採用するリールの多くが同様の傾向を示しており、スプールから放出されたラインが
向かい風を受けて大きな螺旋を描きながらバットガイドに進入することでガイド通過抵抗が増し、
飛距離をロスしているものと推測する。

一方で無風~追い風コンディションでは2001年から2013年にかけてキャスティング競技用メイン機
として使用していた小口径・大勾配スプールの代表機:ダイワ・トーナメントサーフZ45系リールと
同等の飛距離指数を出しており、ベーシア45Cとの直接対決でも互角の争いを展開した。

約20gの軽量化により飛距離アップが期待された夢屋・ナイロン2号用2017スプールはというと、
残念ながら6回の比較テスト中1回のみベンチマークリールに-7.7mもの大差で敗北し、飛距離指数
の平均値を大幅に下げてしまう結果となった。
実力的には標準ナイロン3号用スプールと同等かそれ以上の飛距離指数に落ち着くはずなので、
この1回の惨敗が悔やまれるところである。

ところで、標準ナイロン3号用スプールと夢屋・ナイロン2号用2027スプールともに、28mmストローク
マシンであるリョービ・プロスカイヤー7スーパーノーズやダイワ・ウイスカーTHEキャスターEX-8000
をベンチマーク機に選択すると、比較テストで敗北する傾向(ジンクス?)がみられる。

これらのベンチマーク機は、28mmショートストロークながらも6~10度ものスプール勾配を持つ機種
であり、特に弱向かい風~弱横風コンディションでの飛距離安定性の高いリールたちである。

このようなベンチマーク機たちにとって有利なコンディションが、13SAサーフリーダー 35にとっては
やや苦手なコンディションになるということなのだろうか。

標準ナイロン3号用スプールでの実投比較データを表2に、夢屋ナイロン2号用スプールでの実投
比較データを表3に示す。

表2 標準ナイロン3号用スプールでの実投比較データ  
比較対決リール BM
飛距離指数
BM
平均飛距離
13スーパーエアロ
サーフリーダー CI4+ 35
標準ナイロン3号用スプール
テストロッド
平均飛距離 飛距離指数

ダイワ・トーナメントサーフ
ベーシア 45C
1.031 175.30m 172.44m 1.014 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425
1.031 170.18m 170.44m 1.032 リョービ・BORONプロスカイヤー
PROTOTYPE 40-425
1.031 167.22m 166.62m 1.027 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.031 170.63m 171.28m 1.035 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.031 166.03m 166.49m 1.034 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420

シマノ・スーパーエアロ
キススペシャル
1.029 169.54m 173.32m 1.052 シマノ・ハイパワーXプロセレクト
420XX
1.029 172.69m 171.78m 1.024 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.029 177.14m 179.76m 1.045 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.029 177.44m 175.54m 1.018 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
リョービ・プロスカイヤー7
セラテックノーズ
1.019 172.71m 177.34m 1.046 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425

ダイワ・ウイスカーTHEキャスター
EX-8000
1.019 165.96m 164.10m 1.008 リョービ・S-DHZプロスカイヤー
40-425
1.019 171.02m 168.93m 1.007 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420

リョービ・プロスカイヤー7
スーパーノーズ4570
1.015 161.98m 159.78m 1.002 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.015 167.17m 172.30m 1.047 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
リョービ・プロスカイヤー7
スーパーノーズ
1.000 165.16m 163.62m 0.991 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35
(標準ナイロン3号用スプール)総合評価
170.25m 1.025


表3 夢屋ナイロン2号用スプールでの実投比較データ  
比較対決リール BM
飛距離指数
BM
平均飛距離
13スーパーエアロ
サーフリーダー CI4+ 35
夢屋・ナイロン2号用2027スプール
テストロッド
平均飛距離 飛距離指数

ダイワ・トーナメントサーフ
ベーシア 45C
1.031 160.17m 161.50m 1.039 リョービ・BORONプロスカイヤー
PROTOTYPE 40-425
1.031 175.40m 175.08m 1.029 リョービ・BORONプロスカイヤー
PROTOTYPE 40-425
1.031 167.22m 164.71m 1.015 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
1.031 170.74m 170.11m 1.027 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-420
シマノ・スーパーエアロ
EV (SA157)
1.018 162.90m 162.23m 1.014 シマノ・05スピンパワー
425XX
リョービ・プロスカイヤー7
スーパーノーズ
1.000 170.55m 162.88m 0.955 リョービ・BORONプロスカイヤー
競技スペシャル 40-425
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35
(夢屋・ナイロン2号用2027スプール)総合評価
166.09m 1.013

ところで過去に実投比較テストを行ったシマノ・スーパースロー・オシュレーションリールでは、
シンカー高度の上昇過程で速度低下が小さいものの、最高高度付近からの落下過程で
ライン放出抵抗の増大影響によると思われるシンカーの急失速降下が見られた。

しかし、13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35ではシンカーの急失速降下は明確には
見られず、安定した飛距離が得られる印象を持った点がこれまでのスーパースロー
オシュレーションリールとは異なる。

オシュレーション速度が変更を受けた恩恵か、それともマルチテーパースプールの効果なのか、
定かな点は不明であるが、スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35は今までのスーパースロー
オシュレーションリールとは一味違ったキャストフィールの持ち主であることに違いはないだろう。

特に気に入った点は、ナイロン2号ライン込みで456g(標準ナイロン3号用スプール)しかない
軽量設計とリールフットから若干スプール寄りに設定されたリール重心位置のレイアウトにより、
スウィング動作中はリール重心位置が認識し易くロッドの振り抜き感が安定しているところだ。

13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35のメカニカルレイアウトは1998年製スーパーエアロ
テクニウムをルーツとしており、リールボディーに内蔵する重量パーツのうちオシュレーション
機構のレイアウトをリールフットに接近させることでリール重心をロッドに近付けて持ち重り感を
低減している。

下の写真は旧式メカニズムレイアウトの事例として1988年式チタノス スーパーエアロ GT7000
と13SAサーフリーダーとのオシュレーション機構の配置比較をしたものである。

88チタノス スーパーエアロ GT7000ではクロスギヤやその駆動部品とオシュレーション摺動子が
メインシャフトより下側(リールフットからより遠い部位)に配置されているのに対し、
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35ではオシュレーション関係パーツがすべてメインシャフト
より上側(リールフットに近い部位)に配置されていることが判る。


              新旧モデルでオシュレーション機構の配置比較

この低重心・低持ち重り感レイアウトの効果として、スウィング動作中のリール重心バランスが
歴代エアロシリーズ中でも最も良い印象を持っており、ロッドの曲がりをさらに大きくするための
最後の一押しが確実にできるために飛距離も伸びて安定する傾向がある。

リールフットとスプール後端の位置関係も良好でありごく自然な角度でラインキープができること
から、スウィング動作中にはラインテンションがリニアに感じられてリリースタイミングを測り易い。

結果として、リリースしたシンカーの弾道高度やスピード,方向性が狙った通りに精度良く決まる
確率も高く、飛距離だけでなくフェアゾーン投擲率の高さでもキャスティング競技用として十分に
活用できるポテンシャルを有していると感じた。

これらのキャストフィールは03スーパーエアロ テクニウムMgに似た好印象を持っているが、
中級機種でありながら旧フラッグシップモデルと同等かそれ以上の総合評価に落ち着く可能性を
秘めている。

先の表2,表3に挙げた比較テストと並行して、歴代投げ専用リールの中から
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35とキャラクターが近いと思われる3機種についても、
実投対決比較テストを行った。

実投対決比較テストに持ち込んだのは以下の3モデルである。

①歴代エアロ中の最高傑作モデル:
シマノ・スーパーエアロ キススペシャル
②元祖スーパースロー・ミドルクラス機:
シマノ・スーパーエアロ XT-SS
③ダイワ版コストバリュー追及モデル:
ダイワ・サーフベーシア 35

※1:スーパーエアロ キススペシャルの飛距離指数(1.029)をベンチマーク(BM)として各リールの
  飛距離指数を算出し比較を行った。
※2:テストロッドにはリョービ・BORONプロスカイヤー競技スペシャル40-420を使用した。



それぞれの投げ専用リールが過去の実投テストで得ている飛距離指数から推定すると、
シマノ・スーパーエアロ キススペシャル>シマノ・スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35>
シマノ・スーパーエアロ XT-SS>ダイワ・サーフベーシア 35 の順位で飛距離の優劣決着が付く
のでは?との予測をした。

その予想順位の中で、新鋭機:シマノ・スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35がどれほどの
遠投性能を発揮するのか?に注目した訳であるが…

実投対決比較テストの結果を表4に示す。

表4 13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35 vs. 歴代投げ専用リール代表 実投対決比較結果
リール機種 シマノ
スーパーエアロ
キススペシャル
シマノ
スーパーエアロ
XT-SS
ダイワ
サーフベーシア
35
シマノ
13スーパーエアロ
サーフリーダーCI4+ 35
評価項目 上位60%
平均飛距離
飛距離指数
(BM)
上位60%
平均飛距離
飛距離指数 上位60%
平均飛距離
飛距離指数 上位60%
平均飛距離
飛距離指数
第1回テスト 172.69m 1.029 170.65m 1.017 168.04m 1.002 171.78m 1.024
第2回テスト 177.14m 1.029 173.25m 1.007 179.84m 1.045 179.76m 1.045
第3回テスト 177.44m 1.029 173.20m 1.005 171.19m 0.993 175.54m 1.018
総合評価 175.76m 1.029 172.37m 1.010 173.03m 1.013 175.69m 1.029

結果的に、ほぼ事前予測の通りに飛距離指数順位は並んだ。

やはり同一コンディションで投げ比べた場合、リール自重の違いはスウィング動作に少なからず
影響を与えて、軽いリール(重量バランスの良いリール)で飛距離は向上・安定傾向にあるが
重いリール(重量バランスの悪いリール)は飛距離が伸びずに不安定となる傾向がみられた。

比較テストした4機種では、
・スーパーエアロ XT-SS:594g
・スーパーエアロ キススペシャル:523g
・サーフベーシア 35:489g
・シマノ・スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35:456g
の順にナイロン2号ライン込み自重が重い。

これらの中で最重量級となるスーパーエアロ XT-SSは、軽量スリム設計のアルミニウム合金
ダイキャスト製のボディーに樹脂製で大型化されたローターと大口径ストッパークラッチ機構,
スチール製メインシャフトなどの重量パーツを組み込んだことで自重値が他の投げ専用リールに
比べて70~140gも重くなっており、リール重心位置もリールフット直下から若干ローター寄りに
シフトしている。

このため、スウィング動作中にはリール自重がかなり重く感じられて、ロッドを振り切ることにかなり
の労力を必要とし、スウィングスピード(シンカー初速度)の低下とそれによる飛距離ダウンの傾向
がみられた。

一方で、ライン込み自重が2番目に重い523gのスーパーエアロ キススペシャルは大口径クラッチ
機構が装着される前の世代であるため、ローター内部はピニオンベアリングが装着されているだけ
の軽量・コンパクト設計となっており、自重値ほどは重く感じず重心位置もリールフット直下付近に
存在するのでロッドの振り切り易く飛距離が安定する。

サーフベーシア 35は自重値こそ軽量仕様の部類に入る489gであるが、スウィング動作中のリール
重心位置の認識がやや不明瞭な印象で、フィニッシュ直前の最後の一押しタイミングを逃してしまう
傾向がある。

また、スプール勾配が2度しかないことでライン放出抵抗が比較テスト機中最大級になっている点も
飛距離指数低下の要因になっているものと推測され、他の4度マルチテーパースプールや
5度テーパースプールに比べてサーフベーシア 35のライン放出音はかなりノイジーである。

これらの結果から、キャスティング競技用リールとしては以下のスペックを有する機種が望ましい
との結論に至った。
・自重値は520g以下であること
・スプール勾配は4度以上であること
・リール重心位置がリールフット直下に明確に感知できること
・スーパースローオシュレーションであるかクロスラップであるかは大して重要では無い

総合的に判定して、13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35の遠投性能は歴代投げ専用リール
中でもかなり上位にランクインしており、低重心設計のお陰でスウィング動作が安定して最後の
一押しもタイミングを逃すことなくできる点で、価格以上にすぐれたリールであると言えるだろう。

と、ここまでは13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35を絶賛する記述を進めてきたが、
12スーパーエアロ フリーゲン,11スーパーエアロ キススペシャル コンペエディションを含めて
『スーパースロー・3兄弟』の実投テストを開始して以来の4年半でバックラッシュの克服に相当な
時間を要した。

ちなみに、13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35での2017年12月24日現在のバックラッシュ
発生率は、
・標準ナイロン3号用スプール:307投中26回=8.5%
・夢屋ナイロン2号用スプール:133投中 5回=3.8%
となっている。

通常、ナイロンラインでのバックラッシュはラインリリース直後のテーパーライン区間か、もしくは
テーパーラインと2号ラインの結節部から10m以内で発生することが殆どである。

これは、バックラッシュの発生原因がスプールに巻き取られたラインのごく表層部数ターンで上層の
ラインがその下層のラインを押さえ込み、オシュレーションターン部にラインのずれ落ちや噛み込み
を引き起こすことにあるためである。

特にスプールの後端側でラインの噛み込みを生じた場合はラインが1ストローク分ごっそりと吹き
出すので、飛距離は大幅に低下するかもしくはライン切れを引き起こすことになる。

スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35でのバックラッシュは、このスプール後端側のライン噛み
込みが、オシュレーションターン数でいうと3ターン(1.5往復:約30m)~6ターン(3往復:約60m)も
下層で起こることが特徴となっている。

このようなバックラッシュ発生の真因追及を重ねてきたが、現状で判明している現象・原因と対策は
以下の通りである。

No. 現  象 原  因 対  策
2号ラインとテーパーラインの結び目がスプールから離れる際に下層の2号ラインを引き連れて出て行く 2号ラインとテーパーラインの結び目(端糸の出っ張り)が大き過ぎる 結び目(端糸の出っ張り)を小さく整える
2号ラインとテーパーラインの結び目の位置が人差し指でラインキープしている16号ライン終端の直下付近にある 結び目をスプールの上端側ノーテーパー区間と4度勾配区間の境界付近に設ける
テーパーライン区間がスプールの上端側と下端側の何れかでオシュレーションターンする場合にその下層の2号ラインがバックラッシュする テーパーラインがオシュレーションターンする箇所で下層にある2号ラインの密巻き規則性を乱してズレを生じている テーパーラインは上記①の箇所を起点にスプール下端側に向かって1ストローク以内で巻き付ける
スプール後端フランジと密巻き2号ラインらせんの最下端部との隙間にテーパーラインが潜り込みリリース時に2号ラインの上部数層を強制的にスプールから押し出している 上記①の箇所を起点にスプール下端側までテーパーラインを巻いても余る場合はスプール下端から3~5mm上でスプール上端方向へ折り返して巻き付ける

人差し指でラインキープしている16号ライン終端部を起点に直下層の2号ラインがバックラッシュする 投擲時のラインテンションにより16号ライン部の終端が密巻きされた2号ラインらせんの隙間に潜り込みリリース時に2号ラインの上部数層を強制的にスプールから押し出す 密巻きされた2号ラインの間隙に16号ラインを食い込ませないために16号ラインの終端2~3周をクロスラップ状に巻き直し16号部でのライン交点を2~3箇所作る
上記①~③に該当する症状なしに2号ラインがバックラッシュする 2号ラインの密巻きらせんピッチが一定・規則的でなく「逆戻り」や「乗り上げ」を生じている 2号ラインを巻き取る際にしっかり指で摘まんでテンションを一定に付加する
2号ラインの巻き取り速度を一定に保つ
(早巻き,変速巻きをしない
ラインローラー部のベアリングへの注油またはベアリング交換
オシュレーション摺動子とメインシャフトの締結部を増し締めする
2号ラインにキンクや真円度異常(圧迫,ガイド擦れ,小石擦れなど),ヨレがある 2号ラインを新しいものに交換する

上記対策により、バックラッシュトラブルの発生率を低減しているが、それでもゼロ化はできていない。
どうしても3%前後の確率でバックラッシュトラブルは起きてしまうが、この発生率自体はクロスラップ
仕様の投げ専用リールでも同様の値である。

クロスラップ方式の投げ専用リールに比べると神経質かも知れないが、丁寧に調整を行えば
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35をキャスティング競技に使用することは十分に可能だろう。

そんなスーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35であるが、いよいよ今年(2018年)ビッグ・マイナー
チェンジにより二代目(18サーフリーダー CI4+ 35)へと進化する。

スーパースロー・5オシュレーションとは決別して、08スーパーエアロ キススペシャルと同じ等速
スローオシュレーション(2.5倍減速タイプ)になるものと推測されるが、ピニオンギアが高強度真鍮に
換装される点とラインローラー&ボールベアリングがシールド一体型の「Xプロテクトラインローラー」
に進化することから、キャスティング性能ではなく実釣性能のアップが主目的のマイナーチェンジの
ようである。

また、ナイロン3号用スプールがラインナップから消えてナイロン1号用&1.5号用がドラグレス仕様
への装着スプールとなっている。

なお、18サーフリーダー CI4+ 35に13スーパーエアロ サーフリーダー CI4+ 35世代のスプールたち
を装着することは可能であるが、逆に18サーフリーダー CI4+ 35用スプールを11~14年モデル
スーパーエアロたちに装着することは、糸落ち防止カラーやローターとの干渉によりできないとのこと。

18サーフリーダー CI4+ 35のスプールは、デザイン的に質感が大幅向上するようなので是非とも新旧
モデルでスプール互換性を与えて欲しかったのだが・・・それだけが残念でならない。