ダイワ
 サーフベーシア35

2013年12月7日現在

飛距離指数:1.007 (
★★☆☆☆
平均飛距離:168.51m

(テスト回数:10回)

スペック サーフベーシア35
発売時期 2008年
スプール 前端径 φ68.4mm
算出後端径 φ70.8mm
ストローク 35mm
勾 配 2度
エッジ開放角度 50度
全 長 54.6mm
糸巻き量 ナイロン2号−300m
材 質 本体:アルミニウム合金
リング:アルミニウム合金一体
スカート なし
カタログ自重 465g
ナイロン2号糸込み質量 489g
フルストローク全長 201mm
オシュレーション方式 円筒カム複軸
等速:3.0度綾巻き
前後各6.1ターン
ボールベアリング 9個
ラインローラー ツイストバスターU
(シーリング付2ボールベアリング)
マスターギヤ ジュラルミン
(マシンカット)
メインシャフト アルミニウム合金
φ6.0mm
ボディー&ロータ アルミニウム合金製ボディー
樹脂製ロータ
ハンドルタイプ 左右両用/90mm
ハンドルグリップ ソフトタッチ樹脂
ロータ回転方向 時計回り
ギヤ比 1:3.5
メーカー希望小売価格 40,000円
サーフリール=45mmストロークマシンとの認識が定着していた2006年、ショートストローク・サーフリール
の最高級機としてトーナメントサーフ35がデビュー。

超遠投性能にこだわるのではなく、狙ったポイントを的確に射抜く機動力でより多くのキスを求める
ユーザーへの新たなフィッシングスタイルの提唱が受容され、それ以降ショートストローク・サーフリール
として35mmマシンが再び脚光を浴び始めた。

その結果、スプール互換性を有する上級者向けハイスペックマシン・トーナメントサーフ35キャスティズム
やビギナー向けベーシックマシン・グランドサーフVが派生機種として相次いで発売された。

その流れの中で、初心者からベテランまで幅広くユーザーに受け入れられるべく、付属スプールの仕様
を極細(PE:0.8〜1.0号対応),標準(同:1.0〜1.5号対応),太糸(同:2〜3号対応)の3機種設定に加え、
ギヤ比も極細,太糸仕様が低速(1:3.5)で標準仕様が高速(1:4.1)と異なるチューニングを与えた
サーフベーシア35が2008年にデビュー。

サーフベーシア35では、トーナメントサーフ35の基本設計の多くを継承しているが、価格を抑える目的で
ボディー材を高価なマグネシウム合金からアルミニウム合金に変更しながらも、トーナメントサーフ35
の445gと遜色ない465g軽量マシンに仕上げた。

外観的デザインは45mm&35mm上級機種の特徴でもある細長く存在感のあるメッキ処理リヤキャップは
採用されず、従来のサーフリールに比べてやや薄く設計されたボディーの形状曲線に沿ってボデー後端
の広い範囲をカバーリングする、新しいデザインのリヤキャップとなった。

この新しいデザインは、一見サーフリールではなくソルトゲーム用リールの系統にも見えなくはないが、
前端面を大胆に肉抜き加工したアルミニウム合金製鍛造スプールを装備し、90mmマシンカットハンドル,
エアベール,リアル4システム,2ボールベアリング化されたラインローラーを採用している点では本格的
サーフリールとしての要求仕様は十分に満たしていると言えるだろう。

では実際の使い心地は如何なものだろうか。

遠投性能は、飛距離指数:1.007と35mmストローク・サーフリールの中でも下位の性能でしかない。
やはり、スプール勾配が2度しかない実釣向けのチューニングが影響しているのだろう。

35mmサーフリールで飛距離指数が1.015を超える機種のほとんどが5〜8度の大勾配スプールを採用
しているのだが、シマノ・SA157スーパーエアロEVに0度勾配・SA257スーパーエアロEVスプールを装着
しての飛距離指数も1.009と低い値となっている。

やはり遠投性能を求めるなら、最低でも5度のスプール勾配が必要であると考えても良いだろう。
サーフベーシア35で遠投性能を求めるのであれば、スプール装着の互換性があるグランドサーフ35の
6度勾配スプールか、社外品の5度勾配スプールを買い足すのも一つの手段だろうか。

しかしながら、この種のサーフリールの存在意義は遠投性能に重心を置いておらず、PE0.6〜1.0号での
実釣場面における使い勝手こそが最大のセールスポイントになるだろう。

その使用目的に限定した評価でも、実はこのリールについてはやや辛口の採点をせざるを得ない。
メーカー希望小売価格が40,000円ということは実売価格では30,000円前後と解釈するのだが、その
価格をもってしてもこのリールのクォリティーに対する正当な価格であるとは、個人的には感じていない。

何が不満かというと、メカニカルな部分でルーズなところが目立ち、使い勝手も良いとは言えないのだ。

まず最初に気になったのは、ベール解放時のロータストッパーの効きが甘い点である。
ベールを解放した際にロータ内のカムでストッパーが作動し、このストッパーがボディー側の突起に
接触することでロータの回転がロックされるのだが、サーフベーシア35ではストッパーの掛りが甘い
ためにロータがロック位置を通り過ぎてしまうことがある。

幸い、ロータストッパーがロック位置を通り過ぎても解放したベールが反転しないカム構造になっている
ので、不意にベールが戻ってライン放出が停止するようなトラブルにはならないが…

ちなみに、全く同じロータパーツを使用するグランドサーフ,パワーサーフQDでは、ロータストッパーに
ゴム製ブレーキパーツが付属しており、このブレーキパーツがボディー側突起形状部と摩擦する構造
により、ロータがストッパー位置でキッチリ停止する仕組みになっているようだ。

 ロータストッパー構造の比較
     
     写真左:サーフベーシア35           写真右:パワーサーフQD

サーフベーシア35では軽量化と製造コスト削減の目的で一部の機能部品に設計変更が加えられ、
ゴム製ブレーキ機能が廃止された結果、ロータストッパーの効きが甘くなったものと推測される。
やはりこのクラスの価格帯であれば、ロータストッパーはカチッと止まって欲しいものであるが…

次に気になったところは、タラシ長さの調整が困難であること。

砂浜でのキス釣りやキャスティング練習をする際には、殆どのキャスターは利き手の人差し指に
フィンガープロテクターを装着していると思う。
その状態でサーフベーシア35のスプールノブを着脱しようとすると、直径もリブ状突起もともに極小さい
スプールノブでは摘んで回すことが困難である。

この点をメーカーサイドが不便だと認識したのかどうかは定かではないが、2010年に発売された35mm
ストローク機の廉価版:ウィンドサーフ35ではスプールノブのリブ状突起が大型化されて着脱性が改善
されている。

 スプールノブの形状比較
     
     写真左:サーフベーシア35用         写真右:ウインドサーフ35用

さらに、スプールを持ち上げてメインシャフトの面取り形状部とスプール側の角型シャフトホールの嵌合
を解除しスプールを半回転することでタラシ長さを調整するのだが、このときスプールをメインシャフト
から完全に抜き取るところまで20.0mmも持ち上げなければなない。

メインシャフトのスプール固定座面からスプールノブ取り付けネジの先端までの20.0mm範囲に面取り
形状が加工されているためなのだが、このタラシ調整の最中にスプールからラインが脱落して
メインシャフトに巻き付いてしまうのだ。

メインシャフトの面取り形状範囲は、トーナメントサーフZ45Cでは11.0mmしかなくタラシ長さの調整時に
スプールを持ち上げる量も11.0mmで済むため、作業も容易でラインがメインシャフトに巻き付くことも
まず起こらない。

サーフベーシア35もトーナメントサーフZ45Cもメインシャフトの直径が6.0mmでスプールノブ取り付け
ネジがM4(外径3.9mm)で同一寸法なのだが、メインシャフトの面取り形状部寸法がサーフベーシア:
3.5×5.0mm,トーナメントサーフZ45C:4.0×6.0mmと、サーフベーシア35の方が一回り細くなっている。

サーフベーシア35では、メインシャフト面取り形状部の短径がスプールノブ取り付けネジの外径よりも
細くなることからネジ部についても短径:3.5mmに面取り形状部が延長されてしまい、タラシ長さを
スプール半回転分調整するためにはスプールをメインシャフトから完全に抜き取るところまで持ち上げ
なければならない構造となっている。

 メインシャフトの面取り形状長さ比較
     
     写真左:サーフベーシア35         写真右:トーナメントサーフZ45C

メインシャフトの面取り形状がこのような寸法取りになった理由というのも定かではないのだが、推測
されるのは旧式の35mmストローク・サーフリールとのスプール互換性を維持しないための仕様なの
ではないだろうか?

ダイワからは、35mmストローク・サーフリールとして1988年以降トーナメントプロキャスターSS-35や
同SS-35U,トーナメントサーフZ35Tがラインナップされていたのだが、これらの旧式35mmストローク・
サーフリールのメインシャフト面取り形状部寸法はトーナメントサーフZ45Cと同じ様式であるため、
現行35mmストローク・サーフリール(グランドサーフ35,トーナメントサーフ35,サーフベーシア35,
ウインドサーフ35)との間にスプールの互換性が全くないのだ。

ダイワ45mmストローク・サーフリールでは1987年発売のトーナメントプロキャスターSS-45以降2008年
発売のトーナメントサーフZ45まで全シリーズにスプール互換性を与えている一方で、35mmストローク・
サーフリールでは閉鎖的ともとれる設計変更を行っている点は、個人的には歓迎しない。

これらの他にも、サーフベーシア35には使ってみると不満なところが幾つかある。
スクリューロック式のアルミニウム合金製マシンカットハンドルはデザイン的には歓迎するアイテムなの
だが、90mmものハンドル長さが余計である。

主に砂浜でのキス釣りに使用することを想定したリールでは、手首の動きだけでリーリングが可能な
70〜85mmハンドルの装着が一般的ではないかと思うのだが、サーフベーシア35は何故か90mmもの
長いハンドルを採用している。

その一方で80mmハンドルをオプションパーツとして販売するメーカーの姿勢を、商品をカスタマイズする
ことでの機能面の拡張性を利益に繋げようというセコい考えと捉えるのは私だけだろうか?

いろいろと問題点ばかり指摘するレポートとなってしまったが、サーフベーシア35には褒めるポイントも
少しは存在する。

2ボールベアリング化されたラインローラーでは、ボールベアリングに掛る荷重が軸方向に対し常に
垂直(ラジアル)方向に維持されて2箇所に分散するため、ラインの巻取り中に不快な雑音を生じること
なく無音でサラサラと回り、ボールベアリング寿命も1ボールベアリングタイプと比較して伸びるものと
期待される。

リアル4システムで得られる駆動系の滑らかな回転フィールも、トーナメントサーフZ45Cに比べると随分
軽くてシルキーであり性能の向上を実感させるポイントである。
ただ、回転が滑らかになったが故にマスターギヤとピニオンギヤの噛み合わせにおいて不可欠な微小
クリアランス分のガタつきがハンドルに伝わってきてしまうのが惜しいところだ。

ラインローラーとギヤ駆動系の回転フィールが旧世代のフラッグシップモデルよりも向上しており、実売
価格で20,000円近く高価なトーナメントサーフ35と20gしか違わない軽量設計を実現している点は
サーフベーシア35は高く評価できるだろう。

今のところサーフベーシア35の印象は良いところ4割:悪いところ6割といった感じであるが、トーナメント
サーフ35は高価過ぎて手が届かないので約30,000円の支出で「トーナメントサーフ35に似たリール」で
キス釣りが楽しめればそれで良いかと妥協して使っている。