2013年01月04日記録開始
                                                     2013年01月10日Rev.02
                                                     2013年01月21日Rev.03
                                                     2013年02月11日Rev.04.2
                                                     2013年03月13日Rev.05
                                                     2013年04月27日Rev.06F

Report #088  KWガイド-6点(Ver.01)実投比較テスト! 
       テストロッド:リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425



1. ガイドセッティングの変遷とKWガイドに期待するポイントは

私自身のキャスティング競技用ロッドのガイドセッティングの変遷は、以下の通り。
@1991年〜2002年:ハイスピンダー5点式(SF-16F,SVSG-16,20,HVSG-25M,30H)
A2003年〜2004年:ハイスピンダー6点式(SF-16F,SVSG-12,16,20,HVSG-25M,30H)
B2003年:ローライダー6点式(MNST-10H,LCSG-8,10,12,16,20)
C2004年〜2008年:ローライダー改6点式(MNST-10H,LCSG-10,10,12,16,HVSG-25M)
D2008年〜2012年:ハイスピンダー6点式(SF-16F,SVSG-12,16,20,HVSG-25M,30H)

これらの変遷において、ガイドセッティングを変更したことで以下のようなキャストフィーリングの
違いを実感した経験がある。

@ハイスピンダー5点式 ⇒ Aハイスピンダー6点式
  ロッドが1クラス硬く感じられるが、ロッドのバットセクションがしっかり曲がるようになる。
  併せてライントラブルも低減し3投平均飛距離は向上する。
  ガイドフレーム材で比較すると、ステンレス鋼製よりもチタン製の方がロッドが幾分硬く感じ
  られるが、ステンレス鋼製の29gからチタン製は20gに軽量化される分だけロッドの振り切りが
  シャープに感じられる。

Aハイスピンダー6点式 ⇒ Bローライダー6点式
  ロッドが1クラス以上硬く感じられ、抜け弾を打つ確率が増加する。
  トップから#3ガイドへのライントラブルは皆無に近くなるが、バットガイドへのライントラブルが
  増加し3投平均飛距離は低下する。
  特にテーパーライン区間のガイド通過抵抗が大きい印象がある。

Aハイスピンダー6点式 ⇒ Cローライダー改6点式
  ロッドが1クラス硬く感じられるが、ロッドのネジレ,ブレが極小化する感触でバットセクションの
  曲がりが安定化する。
  バットガイドへのライン通過もスムーズで、ライントラブルの発生率は最小に抑えられる。
  ローライダーガイドのフレーム材で比較すると、ステンレス鋼製よりもチタン製の方がロッドが
  幾分硬く感じられる。
  結果的にはこの『体感的な硬さ』に耐えることができなくなり、2008年にローライダー改6点式
  からハイスピンダー6点式にガイドセッティングを戻した。

こうしてごく標準的なハイスピンダー6点式に回帰してキャスティングを続けていた2009年に
新たなキャスティングロッド用ガイド:KWシリーズが発売されたが、2012年時点でこのガイドを
スポーツキャスティング用ロッドに装着しているキャスターはほとんど見かけない。

キャスティング競技仲間で既にKWガイドをテストされた方々から伺ったところでは、
『ロッドが1クラス軟らかく感じられてリリースタイミングが安定しない。』
という印象をお持ちの方が多いようであり、ハイスピンダーガイドの高剛性フレームに慣れてしまう
とKWガイドの低剛性フレームが受け入れ難いというご意見のようである。

確かに、ガイドフット,ガイドフレームのチタン材はハイスピンダーガイドよりも細軸化されており、
ガイドフレーム自体の剛性感がハイスピンダーガイドよりもKWガイドでは数段軟らかく感じられる。

ここで少し考え方を変えると、ロッドが軟らかく感じられるというKWガイドでは、ハイスピンダーや
ローライダーなどの歴代キャスティングロッド用ガイドによる『過剰な剛性感』を排除してくれるので、
腰痛や肩痛などの持病を持つキャスターにとってはスウィング動作が省力化できるメリットがある
のではないか?と考えた。

実際に私自身は過去の腰痛持病の影響で腰のキレが年々悪くなっており、ここ2,3年は
ハイスピンダー6点付け,ローライダー6点付け共にロッドが硬く感じることが多くなっていることから、
『ロッドが1クラス軟らかく感じられる』KWガイドに『40号ロッドが35号ロッドの感覚で振り抜けないか』
との期待を持って、テストを開始することにした次第である。

また、KWガイドはローライダーガイドに比べるとガイドリングが大口径化され、ハイスピンダーガイド
に比べると低重心構造に仕様変更を受けており、ローライダーの低重心=ロッドの芯にシンカー
荷重が乗り易い特性と、ハイスピンダーガイドの大口径=ライン抜けの良さを併せ持つガイド特性
が期待できる。


写真1:ガイド種別毎の重心高さ比較@

同一リング径のKWガイドとハイスピンダーガイドとを比較した場合は数mmの低重心化であるが、
#6ガイド:30mm,#5ガイド:25mm,#4ガイド:20mm,#3ガイド:16mm,#2ガイド:12mmの
ハイスピンダーガイド6点付けから、KWガイド6点付けでは
#6ガイド:25mm,#5ガイド:20mm,#4ガイド:16mm,#3ガイド:12mm,#2ガイド:10mmに1ランク
小口径化する組み合わせを採用すれば、ガイドの低重心化がより大きくなる。


写真2:ガイド種別毎の重心高さ比較A

KWガイドの低重心化により、ローライダー改仕様と同じようにロッドのネジレ,ブレが極小化する
感触でバットセクションの曲がりが安定化する効果も期待できるのだ。

2. ガイド換装作業開始

今回のKWガイドテストロッドにはリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425をチョイス。

2013年1月3日にローライダー改6点仕様を取り外し、KWガイド6点仕様を取り付ける。
翌2013年1月4日には、ガイド固定スレッドに1回目のエポキシコートを行った。

詳細は後述するが、ガイド固定スレッドへのエポキシコートは多層塗りで仕上げるため、1回目の
コート剤は極力薄膜になるよう注意する。


写真3:ガイド固定スレッドへの1回目エポキシコート塗布

冬季のエポキシコートは硬化時間が48時間程度かかることがあるが、今回は主剤と硬化剤の
配合比率をきっちり1:1に調整し、ごく薄く塗布したこともあり24時間後の2013年1月5日には無事
硬化が完了。

続いて、硬化したガイド固定スレッドのエポキシコートに塗装を施す。
塗装の目的は2つあり、単なる装飾目的以外にも紫外線によるエポキシコートの劣化防止も
兼ねて塗装を行っている。

塗装なしでエポキシコートのみ行った場合は半年〜1年の使用でスレッドの日焼けが始まり、
さらに1年半〜2年も経つとエポキシコートの接着力が劣化しガイドのズレを生じることがある。

エポキシコートに塗装を施すことで、塗装膜の日焼けは生じるもののガイド固定スレッドを接着して
いるエポキシコートの紫外線劣化は最小限に抑えられ、2年以上経過してもガイドのズレを生じる
ことはほぼ皆無となる。

エポキシコートへの塗装には、今回はタミヤ・メタリックブルーX-13番を使用した。
塗料にもさまざまな種類のものが販売されているが、エポキシコートへの濡れ性と密着力や塗装面
への仕上げエポキシコートの付着性を評価した結果、プラモデル用のアクリル塗料が最適であった
のでタミヤ製塗料を愛用している。

エポキシコートへの塗装は普通の水彩画用小筆で行うが、1層目は色ムラが出るため約10分の
仮乾燥後に2層目の塗装を施す。

 
写真4:1層目の塗装状態               写真5:2層目の塗装状態

塗装膜が乾燥した2013年1月6日、最後の仕上げにもう一度エポキシコートを施した。
この作業では割り箸と爪楊枝を用いてエポキシを薄く塗るのがきれいに仕上げるコツである。

エポキシコートを筆や刷毛で塗ると、乾燥しているアクリル塗装がエポキシコートに含まれる溶剤
成分に溶かされて色ムラを生じてしまう。

また、エポキシコート中にアクリル塗料の成分が多量に溶け出すことで仕上げに塗布したエポキシ
コートの硬化反応に異常を起こし、48時間以上乾燥させてもエポキシコート表面がネトつくような
仕上がりになることもある。

そこで、割り箸と爪楊枝でエポキシコートを塗装面上に薄く伸ばすようにして塗り、アクリル塗料の
溶け出しを最小限に抑え、色ムラの抑制とエポキシコートの硬化反応異常を防止している。

こうして4日間かけてガイド換装作業も無事完了し、2013年1月7日、KWガイド6点付け仕様の
リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425が完成した。


写真6:KWガイド取り付け完了状態

3. ガイドセッティング別スペック比較

今回テストに用いた、リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425でのガイドセッティング別
スペック及び比較に用いたシマノ・スピンパワー SC 425XXのスペックを表1に示す。

チタンハイスピンダー6点式からステンレスローライダー改6点式へのガイドセッティング変更により
約4g軽量化できたが、チタンKWガイド6点式への変更では更に約7gの軽量化となる。

チタンハイスピンダーとチタンKWガイドの比較では11gも軽量化されるが、25号シンカー(約108g)
を使用するST種目ではシンカー質量の約10%相当ものロッド慣性マスを削ることになり、その分
ロッドの反発エネルギーが強くシンカーを押し出してくれるという理屈でいくらかの飛距離アップが
期待できる。

今回テストロッドにチョイスしたリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425では、KWガイドの
テスト直前までローライダー改6点式で約5年半:224投の投擲データを保有するので、主に
ローライダー改6点式ガイドセッティングとの比較で飛距離の比較分析と考察を進めることになる。

他、参考比較としてリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425と同等の硬さと反発力を有する
ハイスピンダー6点式ガイドセッティングのロッドとしてシマノ・スピンパワーSC 425XXとも実投比較
を進めている。

表1 ガイドセッティング別スペック一覧
 テストロッド リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425 シマノ・スピンパワーSC425XX
全長 (m) 4.25 4.25
ストリップ仕様
カタログ自重(g)
550 505
ガイドセッティング種別 チタン
ハイスピンダー6点式
ステンレス
ローライダー改6点式
チタン
KWガイド6点式(Ver.1)
チタン
ハイスピンダー6点式
ガイド付仕様
実測自重(g)
#1セクション 94 91 88 84
#2セクション 179 178 174 189
#3セクション 361 361 361 300
合 計 634 630 623 573
ガイド
セッティング
トップガイド T-SF-16F : 0mm MNST-12H : 0mm MNST-12H : 0mm T-SF-16F : 0mm
#2ガイド T-SVSG-12 : 200mm LCSG-10 : 198mm KWSG-10 : 199mm T-SVSG-12 : 200mm
#3ガイド T-SVSG-16 : 440mm LCSG-10 : 439mm KWSG-12 : 438mm T-SVSG-16 : 435mm
#4ガイド T-SVSG-20 : 760mm LCSG-12 : 760mm KWSG-16 : 756mm T-SVSG-20 : 765mm
#5ガイド T-HVSG-25M : 1190mm LCSG-16 : 1192mm KWSG-20 : 1186mm T-HVSG-25M : 1190mm
バットガイド T-HVSG-30H : 1888mm HVSG-25M : 1888mm KWSG-25 : 1885mm T-HVSG-30H : 1860mm
リールシート T-LS-7 : 3,325mm T-LS-7 : 3,325mm T-LS-7 : 3,325mm T-LS-7 : 3,330mm
グリップエンド アルミ合金製 : 4,254mm アルミ合金製 : 4,254mm アルミ合金製 : 4,254mm カーボン製一体 : 4,265mm

4. ファーストインプレッション

表2およびグラフ1にハイスピンダー6点式仕様,ローライダー改6点式仕様の投擲データと、
KWガイド6点式仕様での投擲データの比較一覧を示す。

表2 ガイドセッティング別投擲データの比較一覧
 テストロッド リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425
ガイドセッティング種別 チタン
ハイスピンダー6点式
ステンレス
ローライダー改6点式
チタン
KWガイド6点式(Ver.1)
評価項目 テスト時期 2003年10月〜2003年12月 2007年7月〜2012年12月 2013年1月〜
(2013年4月14日現在)
投擲数/テスト回数 56投/6回 224投/23回 152投/14回
ライントラブル発生率 9.4% 0.3% 5.9%
平均飛距離 170.7m 169.4m 172.8m


グラフ1 リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-420でのガイドセッティング毎の飛距離データ比較

@実投テストにおける飛距離とライントラブル防止機能について
KWガイドの実投テストは2013年1月12日以降14回行っており、無風〜横風コンディション,
追い風コンディション,向かい風コンディションと一通りの状況下でデータ取りを行っているが、
かなり強い向かい風コンディションの中でもコンスタントに165m以上の飛距離をマークする一方で
追い風コンディションであっても180mを超える投擲はそれほど頻繁には得られていない。

実はローライダー改6点式仕様でもKWガイド6点式仕様と同様に、向かい風コンディションでは
飛距離低下が少ないが、追い風コンディションでは期待するほど飛距離が伸びないというデータ
が得られている。

このように相反するコンディションで異なる現象がみられる要因はまだつかみきれていないのだが、
総合すると14回のテストの平均飛距離は172.83mと他のガイドセッティングでのデータに比べて
2.2〜3.4mのアドバンテージとなっており、KWガイドへの変更によりキャスティングロッドとしての
戦闘力が僅かではあるが向上することが確認された。

しかし、富士工業が提唱している「糸絡み自動解除フレーム」でのライントラブル発生防止効果は
14回のテストに限ると体感できておらず、残念なことにKWガイド6点式での初投擲でライントラブル
を起こしてしまった。

また、第2回から第14回テストでは#2,#3ガイド周辺に小規模なライントラブルを起こした痕跡と
思われるナイロンカスの帯状付着が見られたことから、ラインリリース直後の一瞬に軽度のライン
トラブルを生じているようだ。


写真7 KWガイド6点式;#3ガイド下に付着したナイロンカス

この現象はローライダー改6点式仕様でも確認されており、この現象によりコンディションなりに
標準的な飛距離に比べて3〜4mだけ飛距離が低下することでも、軽微なライントラブルが定常的
に発生していることが認識できる。

各テスト回毎の飛距離評価時には全投擲の中から上位60%の飛距離平均値を算出しているが、
この現象の発生率は全投擲の40%以下(10〜20%程度)となっているため、飛距離ダウンした
投擲での飛距離データは評価対象から排除されている。
それでも、キャスティング競技の本番では5投しかできない訳であるから、発生率は限りなくゼロ
に近付けたいところである。

ライントラブルの発生要因としては、投擲動作開始時の体の突っ込み(前方方向)やロッドのブレ
(バックスウィング方向)が挙げられるが、私自身の経験では腰のキレが悪い第1投目は特に
体の突っ込みが起こり易く、ライントラブルの発生率も高くなっている。

これまでビデオ撮影によるキャスティングフォームの分析は数えきれないほど行っているのだが、
実はガイドリングにラインが進入する瞬間を視覚的に分析したことはなかった。
そこで今回初めてガイドリングを通過するラインにカメラアングルを調整してビデオ撮影を行い、
スプールから高速で放出されたラインがガイドリングを抜けていく状況を観察した。

ビデオ撮影はKWガイド6点式仕様のスーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425に加えて
ハイスピンダー6点式仕様のスピンパワーSC 425XXでも行い、KWガイドとハイスピンダーガイドで
ラインがガイドリングを抜ける状況を比較した。

その結果、KWガイド6点式仕様ではラインリリース直後のテーパーラインでガイドリングの抜けが
悪く、特に#6ガイド手前でガイドリングに進入できなかったラインがロッドの背面側に大きく
オーバーシュートしている様子が撮影された。
さらにラインリリースから0.06秒後の映像では、全てのガイドでリングに進入できなかったラインが
行き場を失いロッドの背面側に膨らんでいることが判明。

#2,#3ガイド周辺に帯状付着したナイロンカスは、このロッド背面側にオーバーシュートしたライン
がロッドブランクスと接触しながらガイドリングに進入した際に付いたものとほぼ断定された。

なお、このような状態でもラインはガイドフレームには巻き付いておらず、ラインリリースから
約0.36秒後には全てのガイドリングでラインの進入がスムーズ化している。

ガイドリングを通過すべきテーパーライン区間長が10m,シンカー初速度を180km/h(50.0m/sec)
と仮定すると、テーパーライン区間が全てのガイドリングを通過する所要時間は0.2秒である。

つまり、KWガイド6点仕様ではテーパーライン区間がスプールから全て放出されて2号ライン区間
に移行してからもさらに0.16秒間はガイドリングを抜ける際に膨らみ,乱れを生じていることになる。

コンディションなりに標準的な飛距離に比べて飛距離が3〜4m低下した投擲では、リリース直後の
ロッド背面側にオーバーシュートしたラインの角度や高さなどの物理的状況が変化することで
オーバーシュートラインとロッドブランクスとの摩擦抵抗が増加したものと推測される。


写真8 KWガイド6点式仕様でのラインリリースタイミングから0.03秒毎の静止画像
※左端の写真をクリックするとムービー再生!

一方でハイスピンダー6点式仕様でもラインリリース直後のテーパーラインは#6ガイドへの進入時
にロッド背面側にオーバーシュートしているが、その膨らみはKWガイド時よりも幾分小さい。
さらに#2,#3,#4ガイド周辺でもガイドリングに進入できないラインがロッド背面に膨らむ傾向も
あるが、やはりKWガイドよりはラインの膨らみは小さい。

全てのガイドリングでラインの進入がスムーズ化される時間は約0.12秒であり、テーパーライン区間
が全てのガイドリングを通過する所要時間以内となっている。

また、KWガイド6点式に比べると1/3の時間でガイドリングでラインの進入がスムーズ化されている
点でも、ハイスピンダーガイドへのラインの進入がKWガイド6点式に比べてスムーズであることが
確認された。


写真9 ハイスピンダーガイド6点式仕様でのラインリリースタイミングから0.03秒毎の静止画像
※左端の写真をクリックするとムービー再生!

このように、ガイドリングにラインが進入する際の挙動がKWガイド6点式とハイスピンダー6点式で
異なるのは、ガイドリング径の違いから生じたものと推測される。

#6ガイド:25mm,#5ガイド:20mm,#4ガイド:16mm,#3ガイド:12mm,#2ガイド:10mmと1ランク
小口径化したKWガイド6点式では、ロッドの軽量化による反発エネルギーの増加=飛距離アップ
よりもラインの抜けが悪くなることによるラインの膨らみとそれにより生じるロッドブランクスとの
摩擦抵抗の増加=飛距離ダウンの影響の方が増大する恐れがある、ということになる。

飛距離を伸ばすにはロッドの反発エネルギーを増すことに加えてガイドリングへのラインの進入を
スムーズ化する必要もあり、KWガイドでも
#6ガイド:30mm,#5ガイド:25mm,#4ガイド:20mm,#3ガイド:16mm,#2ガイド:12mmの大口径
6点式セッティングに変更するか、
#5ガイド:25mm,#4ガイド:20mm,#3ガイド:16mm,#2ガイド:12mmの5点式セッティングに変更
することが好ましいということだろうか。

もしくは、テーパーライン区間長をぎりぎりまで短く調整して投擲することで、オーバーシュートした
ラインとロッドブランクスとの摩擦抵抗も極小化でき、ロッドの軽量化による反発エネルギーの増加
効果の残高が大きくなる可能性もある。

そのあたりの検証は引き続きビデオ撮影を繰り返して続けることにしよう。

Aキャストフィーリングと投擲精度について
キャストフィーリングについては事前の情報通りロッドが1クラス軟らかく感じられ、竿先からシンカー
までのタラシ長さとラインリリースタイミングの微調整が必要であった。
それでも当初目論んだ通りにロッドを曲げ易く感じる方向へのフィーリングの変化なので、10投程度
の連続投擲では飛距離の安定性が増した印象を受けた。

写真10はローライダー改6点式とKWガイド6点式でのロッドの曲がり具合を比較したものであるが、
キャストフィーリングにおいてはロッドが1クラス軟らかく感じられたKWガイド6点式セッティングでも
ロッドの曲がりはローライダー改6点式セッティング時とほぼ同じであり、ガイドを換装しただけでは
ロッドの曲がりが増す訳ではないことが判明した。


写真10:ローライダー改6点式とKWガイド6点式でのロッドの曲がり比較

ただし、ロッドが曲がった状態からの反発挙動はローライダー改6点式とKWガイド6点式で若干の
違いが感じられ、KWガイド6点式の方が7g軽量化されることによる影響でロッドの返りがほんの
少しではあるが速くなり、シンカー弾道をコート左側まで引張る頻度が増した。

もしガイドセッティング変更によるロッドの軽量化効果でコート左側への投擲コントロールが精度
良く可能になれば、フェアゾーンの狭いST種目では左横風コンディションでの競争力が高まる
メリットがある。

グラフ2はロッド:リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425でのローライダー改6点式仕様
(2007年7月〜2012年12月)と、KWガイド6点式仕様(2013年1月〜4月)での実投シンカー着地点
データを図示したものである。
コートセンターラインに対して左側に着地した場合はマイナス数値で、右側に着地した場合は
プラス値で着地点を図示している。

また、グラフ3はシンカー着地点の度数分布を示すが、棒グラフは2m刻みに区分された領域への
シンカー着地度数(率)分布を、菱形プロットはコート左サイドライン寄り(-20〜-14m区間),
コート左中程(-14〜-4m区間),コートセンター(-4〜+4m区間),コート右中程(+4〜+14m区間),
コート右サイドライン寄り(+14〜+20m区間)の各領域へのシンカー着地度数(率)分布を示した
ものである。

 
グラフ2:ローライダー改6点式仕様とKWガイド6点式仕様でのシンカー着地点比較

 
グラフ3:ローライダー改6点式仕様とKWガイド6点式仕様でのシンカー着地点度数(率)分布比較

一般的にはST種目での右利き投擲時のシンカー着地点はコートセンター〜右中程に集まる傾向
が強いのだが、このエリアを捉える確率は
ローライダー改6点式仕様がコートセンター:29.6%+右中程:47.8%=合計:77.4%、
KWガイド6点式仕様がコートセンター:28.8%+右中程:44.8%=合計:73.6%
とほぼ互角の投擲精度となっている。

コートセンターから右中程を7〜8割の確率で捉える能力があれば十分にキャスティング競技でも
ファールを恐れずに投擲することが可能なのだが、左横風や右横風などシンカー弾道が左右に
大きく流されるコンディションでは、フェアゾーンが極端に狭いST種目の場合コート左側狙いや
右側狙いの投擲を意図的に行う必要がある。

特にコート左中程を狙って投擲するのは経験とテクニックが必要なのだが、それもロッドを曲げる
タイミングを遅らせたり反発挙動を通常より長めに待つことで弾道制御を行うことになるため、
投擲動作中のロッド挙動が常に安定的でかつリアルタイムで身体に感じられることが重要となる。

その要件を満たすロッドとは、ネジレ難く曲がりに節がなく反発挙動が速過ぎず遅過ぎずという
特性が挙げられるのだが、これらの特性はブランクス自体が持っている性能・性質だけでなく
ガイドセッティングによるフィーリングの変化も大きく影響するものである。

◆ローライダー改6点式仕様での投擲精度分析
本レポートの冒頭にも記述したが、ローライダー改6点式仕様ではハイスピンダー6点式仕様に
比べてロッドがやや硬く感じられて、投擲動作におけるロッドの曲げ始めに強い突っ張り感と
反発挙動ではやや急激過ぎる返りを感じるキャストフィーリングであった。

そのため、ラインリリースタイミングが不安定になることがあり、シンカー弾道がコート右中程〜
右サイドライン寄りのやや抜け気味コースに集まる傾向があり、左横風コンディションの時に
意図的にコート左半分を狙って投擲することが苦手であった。

このキャストフィーリングを裏付けるように、グラフ2:左のローライダー改6点式仕様でのシンカー
着地点度数分布ではコート左方向(-4〜-20m)への投擲確率が5.0%しかなく、反対にコート
右サイドライン寄りに17.6%も着地している。
つまり、「確実にフェアゾーンを捉える」投擲確率が約82%しかない、ということでありフェアゾーンが
狭いST種目では大きなリスクを背負っていることになる。

この投擲精度では、左横風コンディションでのキャスティング競技を想定するとシンカー弾道が
右へ流されてフェアゾーンを捉える確率が大幅に低下することになり、最悪の場合3F失格にも
成りかねない。

だから私自身は、ローライダー改6点式仕様のリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425を
キャスティング競技の実戦にこれまで使用することがなかったのだ。

●KWガイド6点式仕様での投擲精度分析
KWガイド6点式仕様では、投擲動作中においてロッドの曲げ始めから反発挙動の開始までの
アクションがローライダー改6点式仕様に比べると1クラス柔軟・従順なキャストフィーリングに生まれ
変わったが、シンカーを弾き飛ばす反発力については投擲歴13年目を迎えた老竿とは思えない
レスポンスと力強さを感じる。

その効果としてラインリリースタイミングの感知精度と安定感が増し、風向風速コンディションに
合わせてコート左中程狙いの投擲制御がローライダー改6点式仕様の時よりも容易に行える
ようになった。

グラフ2:右のKWガイド6点式仕様でのシンカー着地点度数分布でもコート左方向(-4〜-20m)
への投擲確率は14.4%まで増加しており、反対に抜け気味弾道であるコート右サイドライン寄り
(+14〜+20m)への投擲確率は12.0%まで低減している。

つまり、90%近い確率で「確実にフェアゾーンを捉える」ことが可能となった訳で、ここまで投擲精度
が高まればキャスティング競技の実戦に使用することも十分可能だろう。

特に左斜め向かい風コンディションといったST種目右利き選手が最も苦手とする状況下で、
KWガイド6点式仕様のリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425は競争力の向上が
見込まれることから、上記シチュエーション限定での実戦登用もアリかと目論んでいる。

5. ローライダー改6点式 & KWガイド6点式(リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425)
    vs. ハイスピンダー6点式(シマノ・スピンパワー SC 425XX) 対決結果
  併せて小口径スプールリール vs. 大口径スプールリール 相性評価結果

本来であれば、ガイドセッティングの違いによる飛距離への影響を評価するには同一ブランクスで
ガイドセッティングのみ変更した複数のロッドを用いて実投比較する必要があるのだが、残念ながら
テストロッドであるリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425は1本しか保有しておらず同一
ブランクスで異なるガイドセッティングの実投比較ができない。

そこで、あくまでも参考比較となるのだが、リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425と
同等の硬さと反発力を有するシマノ・スピンパワーSC 425XXを用いて実投比較することで、
ガイドセッティングと飛距離との関連性について比較検証を行った。

検証では、リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425でローライダー改6点式仕様期
(2007年7月〜2012年12月)とKWガイド6点式仕様期(2013年1月〜同年3月)に、それぞれ
ハイスピンダー6点式仕様のシマノ・スピンパワーSC 425XXと実投比較を行っている。

併せて、大口径スプールリール(シマノ・スーパーエアロ系)と小口径スプールリール
(ダイワ・トーナメントサーフ45系)で飛距離データを比較し、ガイドセッティングとスプール径との
相性についても検証を行った。

ガイドセッティング毎のリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425 vs. 
シマノ・スピンパワーSC 425XX 飛距離対決結果を表3に示す。

表3 ハイスピンダー6点式 vs. ローライダー改6点式 & KWガイド6点式 対決結果(参考比較)


上記対決結果から判読できるポイントは…

@ハイスピンダー6点式 vs. ローライダー改6点式
   平均飛距離は 169.3m vs. 170.1m でローライダー改6点式の勝利。
   対決勝ち星数でも 3勝2敗 でローライダー改6点式の勝利。

   ローライダー改6点式はハイスピンダー6点式に比べて1〜2サイズ小さいガイドリング径と
   なっており、大口径スプールリールとの組み合わせでは飛距離の低下が予想される。

   実投比較を行った回数が、大口径スプールリール:2回,小口径スプールリール:3回と若干
   少ないが、予想通りローライダー改6点式では小口径スプールリールとの組み合わせで相性
   が良く、ハイスピンダー6点式より2〜4m飛距離が勝る傾向がみられた。

   一方でローライダー改6点式ガイドセッティングと大口径スプールリールとの相性は悪く、
   特にノーテーパースプールが装備されるシマノ・スーパーエアロテクニウムMgでは
   ハイスピンダー6点式に対して3m程度飛距離が劣っていた。

   小口径スプールリールや大口径でもテーパースプールを装備するリールでは、25mm径の
   バットガイドを採用しているローライダー改6点式ガイドセッティングでも抵抗なくラインが
   ガイドリングを通過しているようだが、大口径ノーテーパースプールリールでは25mm径の
   バットガイドでライン通過抵抗が大きく飛距離をロスしているものと推測される。

   大口径スプールリールを使用するなら、30mm径のバットガイドを採用するハイスピンダー6点式
   ガイドセッティングの方が飛距離ロスがなく有利であるようだ。
   
Aハイスピンダー6点式 vs. KWガイド6点式
   平均飛距離は 170.9m vs. 171.9m でKWガイド6点式の勝利。
   対決勝ち星では 4勝2敗 でハイスピンダー6点式の勝利。

   KWガイド6点式もローライダー改6点式と同様にハイスピンダー6点式に比べると1サイズ小さい
   ガイドリング径となっていることから、大口径スプールリールよりも小口径スプールリールとの
   相性が良いことが予想される。

   実投比較の結果でも、予想通り小口径スプールリールではKWガイド6点式が
   ハイスピンダー6点式に対して2勝1敗と勝ち越す結果となった一方で、大口径スプールリール
   ではKWガイド6点式がハイスピンダー6点式に対して3戦全敗する結果となった。

   小口径スプールリールの場合はバットガイドがリング径25mmサイズをチョイスしてもライン通過
   抵抗は飛距離に影響のない低いレベルになり、KWガイドでの体感的なロッドの曲げ易さ向上
   と11gの軽量化の相乗効果により、僅かではあるがハイスピンダー6点式より飛距離が伸びた
   ものと推測される。
   
   やはり、バットガイドにリング径25mmサイズをチョイスするKWガイドセッティングでは大口径
   スプールリールとの相性は悪くガイドリングへのライン通過抵抗により飛距離をロスしている
   ようだ。

Bローライダー改6点式 vs. KWガイド6点式
   ローライダー改6点式とKWガイド6点式による直接対決は行っておらず、別々に採取した飛距離
   データでの比較考察となるが、平均飛距離は171.93m vs. 170.12mでKWガイド6点式の勝利。

   ローライダー改6点式に比べてKWガイド6点式では#2ガイドから#5ガイドのリング径が1サイズ
   大きくなったことでライン通過抵抗が小さくなり、平均飛距離が向上したものと推測する。

   また、ガイドフレームが強硬な印象のローライダー改6点式ではスウィング動作中のロッドの
   曲がりを感知し難い欠点があったが、KWガイド6点式ではガイドフレームが柔軟な印象のため
   にロッドの曲がりを感知し易く、振り幅の小さいST種目でも硬調子ロッドを確実に安定して
   曲げることが可能となったことも、平均飛距離の向上に貢献したものと推測される。

5. KWガイド6点式(Ver.01)の総合評価と課題

2013年1月にスタートしたKWガイド6点式ガイドセッティングでの実投テストであるが、合計152回の
投擲データから導いた総合評価は以下の通り。

(1) 小口径スプールリールを使用するのであれば、KWガイド6点式でローライダー改6点式,
   ハイスピンダー6点式よりも飛距離アップする可能性がある。
(2) KWガイドのフレームが細軸化されたことで過剰な剛性感がなくなり、ハイスピンダー6点式
   やローライダー改6点式に比べるとロッドが曲げ易く感じられる。
(3) KWガイド6点式ではハイスピンダー6点式よりも約11g軽量化でき、その分ロッドの反発が
   力強く感じられる。
(4) 上記(2),(3)の効果として、KWガイド6点式ではローライダー改6点式,ハイスピンダー6点式
   よりもフェアゾーンを捉える確率が向上する可能性がある。
(5) KWガイドでのガイドフレームへの糸絡み発生率は、ハイスピンダー6点式に比べて37%減少
   するが、ローライダー改6点式に比べると1867%増加する。

総合すると、キャスティングロッド用ガイドとしては当初の予想以上に素晴らしい性能を発揮した
KWガイド6点式(Ver.01)であるが、飛距離が安定,向上したメリットとは裏腹にガイドフレームの
剛性不足によるマイナス印象も持つことになった。

それは、私自身の不注意から起きたトラブルなのでKWガイドそのものに致命的欠点がある訳では
ないのだが、ちょっとした油断からリールのベールを反転せずに投擲動作を行ってしまった結果、
ラインリリースと同時にロッドを地面に強打してしまい#5ガイド(KWSG-20)のフレームを変形,破断
させてしてしまった。


写真11 変形,破断した#5ガイド(KWSG-20)

このようなアクシデントは、リールのベール反転忘れ以外にもテーパーラインの張り切れやライン
リリース直後に利き腕の握力を失いロッドを手放してしまった際にも起こり得る。

私自身が記憶する限りリールのベール反転忘れは10年以上ぶりのことだが、テーパーラインの
張り切れや利き腕の握力喪失は年間に数回起こるアクシデントなだけに、その程度の衝撃で
ガイドフレームが変形,破断してしまうのはあまり好ましいことではない。

これまでハイスピンダーガイド仕様やローライダーガイド仕様のロッドを地面に強打してしまった
ことは何度もあるが、これらのガイドではチタン製フレーム,ステンレス鋼製フレームともに変形,
破断したことはない。

もしキャスティング競技の大会本番中にこのようなアクシデントに見舞われた時、KWガイド仕様
ではガイドフレームの破損により残りの投擲ができなくなる可能性がある、ということになる。

KWガイド仕様のロッドでキャスティング競技に参戦する場合は、万が一に備えてバックアップロッド
を用意しておく方が良いかも知れない。
(何よりもアクシデントを起こさないように日頃から細心の注意を払って投擲しなければならない
のだが…)

飛距離アップとフェアゾーン投擲確率の向上が見込まれるKWガイド6点式仕様の
リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425であるが、次の段階としては破損した#5ガイドの
復旧に加えてバットガイドをリング径30mmタイプに変更した『KWガイド6点式(Ver.02)』の実投
テストに着手したいと考えている。

キャスティング競技大会本番用ロッドへの昇格を期待して…
そちらのレポートはまたの機会に。