2018年02月07日

Report #095  川練習での飛距離測定方法の検討


1. 陸上グラウンドでの練習から川での練習に変更せざるをえなくなり・・・

2014年11月に御調山練習場への工場建設が決まり退去せざるをえなくなったが、幸いにも河内
キャスティング会場土地の地主様より練習のお許しをいただけたので、陸上グラウンドでの
飛距離実測練習を継続することができていた。


     かつての河内キャスティング会場(東向き常設コート)

しかし、そんな好条件下での練習もそう長くは続かず、2017年8月にはとうとう河内会場も少年
野球場の建設が決まり退去せざるを得なくなった。

思い返せば、1994年から2017年までの23年間は常に陸上グラウンドでの飛距離実測練習を
続けていたのだが、とうとう川に向かって投げる以外に練習場所の確保ができなくなってしまった。

 
        川練習場所(その@)                 川練習場所(そのA)

当然、1投1投の飛距離を精度良く実測することは不可能となった訳であるが、何とか誤差数mの
範囲で飛距離を計測する方法はないものかと考え検証を行った。

2. ハンドル回転数で飛距離を算出するか、4色染めのラインで飛距離を目測するか・・・

川や海でキャスティング練習をされる方々にとって、飛距離を把握する一般的な方法としては、
@リールのハンドル回転数に「ハンドル1回転当たり巻き取り量」のカタログ値を掛けて算出
A4色染めライン(1色25m)で何色出たかにより大雑把な飛距離を把握
の2種類があると思う。

私自身、キャスティング競技を始めた当初・・・約30年前には神戸港や武庫川河口で練習していた
ので、主に上記@の方法で概算の飛距離を算出していた。

この方法では、飛距離を測定する際のハンドル回転数は200回前後にもなり、途中で数え間違い
や覚え間違いで測定誤差を生じる上に、糸フケ分を何m差し引くかによっては本来の飛距離とは
かけ離れたデータに一喜一憂することになる。

一方で上記Aの方法では飛距離を把握する単位が25m刻みとかなり大雑把になりがちであり、
仮に半色分のプラスマイナスを読み取ったとしても12m刻みでの飛距離測定しかできない点が
不満である。

もっと簡単に、少しでも正確な飛距離を、非陸上環境での練習で把握する方法な無いものか?
海での練習はロッドやリールの金属パーツの腐食リスクがあるので、特に川での練習に着目して
飛距離を正確に求める方法を編み出してみよう。

3. ポイントは糸フケを如何に早く巻き取るか・・・

先にも挙げたが、最も厄介なのは糸フケである。

地形や方角にもよるだろうが、川での練習では川下りまたは川上り方向への風が吹くことが想定
される。

しかしながら、投擲方向は殆どの場合は川岸から垂直方向に対岸に向かって投げることになる
だろう。

つまり、練習投擲時のラインは横風に晒されて糸フケを生じ易くなる。

この糸フケを如何に短時間のうちにスプールに巻き取り、シンカー着水点とロッドとの間のラインを
一直線にするかが飛距離計測の精度を高めるポイントとなる。

具体的には、練習投擲時のシンカー弾道をよく見て、シンカーが川面に着水したらすぐにリールの
ベールを起こしてスプールからのライン放出を停止することが第1ステップとなる。

そして、この時点でフケているラインを高速巻きでスプールに巻き取って行くのだが、余りに高速
巻き取りをし過ぎると糸フケ分以上にラインを巻き取ってしまい、シンカーが着水点よりも手前に
引き寄せられて飛距離の計測結果が残念な値に落ち込んでしまう・・・

ここではラインを指で摘まんでテンションを確かめながら、シンカーの重みを感じ始めるところまで
を糸フケと扱いスプールに巻き取ることに意識を集中しなければならない。

シンカーが川面に着水した時点ではラインの大半はまだ空中に浮遊している状態であり、
十数秒〜数十秒かけてラインが川面に落下して水濡れすることになる。

シンカーが着水した時点で、無風時で15〜20m,横風が強いコンディションでは30m以上の糸フケ
を生じているが、この糸フケを巻き取っている間にラインの一部は川面に落下してしまい、シンカー
着水点からロッドまでの間を一直線にすることが困難となる。

理想的には、空中に浮遊している糸フケラインが川面に落下して水濡れするまでの間に、糸フケ
分のラインをスプールに巻き取ってしまうことが望ましいが、風向・風速コンディションでの糸のフケ
具合によっては無理にシンカー着水点とロッドとの間のラインを一直線にせず、巻き取れる最大限
の糸フケ分をスプールに巻き取れば良いだろう。

これが、川での練習時に飛距離を正確似測定する際に必要な作業の第2ステップとなる。

4. では実際に飛距離を測定しましょう

ここから実際の飛距離を測定する工程を説明しよう。

川に投擲したシンカーまでの距離、すなわち飛距離を測定するのに使用する基準寸法は、
ハンドル1回転当たりのライン巻き取り距離の延長上にある、
『オシュレーション1往復当たりのライン巻き取り距離』
を使用する。

オシュレーション1往復当たりのライン巻き取り距離は、実際の所カタログスペック等から計算で
求めることはやや困難である。

理論的には以下の計算式となるのだが・・・

オシュレーション1往復当たりのローター回転数 ÷ ギア比 × ハンドル1回転当たりのライン巻き取り距離

この計算式で求めた『オシュレーション1往復当たりのライン巻き取り距離』ではなく、私は単純に
実機測定でこの値を測定している。

その計測器が・・・



『プロックス・デプスチェッカー』という、船釣り用の水深計測器である。



この計測器を2ピース・ルアーロッドなどブランクス径が25mm以下のロッドのバットガイド上部に
ワンタッチクランプで取り付けて、本体側面のオレンジ色のラインローラーに2号ラインを1周巻き
付けた状態で練習用リール(スプール)にラインを巻き取る。

 

この時、オシュレーション1往復ずつのライン巻き取り長さを『デプスチェッカー』のカウンターで
チェックしても良いのだが、スプールへのライン巻き取り量が増せばスプールの胴径も増すので、
オシュレーション1往復当たりのライン巻き取り量も徐々に増加する。

そこで、オシュレーション5〜10往復ずつのライン巻き取り長さを『デプスチェッカー』のカウンターで
チェックする。



そして、オシュレーション1往復当たりのライン巻き取り長さの平均値を算出して、この値を練習時
の飛距離測定用基準値に用いる。

ちなみに、私が練習で使用しているリールでのオシュレーション1往復当たりのライン巻き取り長さ
の平均値を表1に挙げる。

表1 練習用リールのオシュレーション1往復当たりライン巻き取り長さの一覧
リール機種 ダイワ
トーナメントサーフ
ベーシア 45C
シマノ
スーパーエアロ
キススペシャル
シマノ
13スーパーエアロ
サーフリーダー
CI4+
シマノ
12スーパーエアロ
フリーゲン
オシュレーション往復数 10 10 5 5
ライン巻き取り長さ(m) 28.0 24.5 52.5 111.7
オシュレーション1往復当たり
ライン巻き取り長さ(m)
2.80 2.45 10.50 22.34

練習時には、上記3.項で説明した糸フケ分のラインをスプールに巻き取る工程の後、ピンと張った
ラインをスプールに巻き取りながら黙々とオシュレーションの往復回数を数える・・・



そして、投擲前に竿先からシンカーまでのタラシ長さを調節した時の状態になるまでラインを巻き
取った時点でのオシュレーション往復回数を0.1往復の単位でカウントした値に、オシュレーション
1往復当たりのライン巻き取り長さ平均値をかけ算して飛距離を求める。

この測定方法により、飛距離を0.3〜2.2m単位の精度で測定することが可能となる。
リールのハンドル回転数に「ハンドル1回転当たり巻き取り量」のカタログ値をかけ算して飛距離
を測定する場合は約0.8m単位の精度で測定が可能であるから、オシュレーション1往復当たり
のライン巻き取り長さでの測定は誤差を拡大する恐れはある。

しかしながら、一般的な投げ専用リールでの練習投擲後のライン巻き取り時のハンドル回転数:
200〜230回転に対してオシュレーション往復回数はスーパースロー・オシュレーションリールで
7〜8往復,ノーマル・オシュレーションリールで60往復前後であり、数え間違いや記憶違いを生じ
難い点で測定精度は高くなるものと考える。

ただし、この計算結果にはまだ若干の誤差を生じている。
誤差の一つ目は、ナイロンラインの伸びによる巻き取り時の全長の延伸長さである。
また、誤差の二つ目にはシンカー着水直後に巻き取り切れていない糸フケの残り分がある。
この誤差分を一律計算で差し引くか、それとも練習時の風向風速コンディションに応じて可変的に
計算をするかは練習場所のコンディション(川の水深や風向きの特性)に応じて調整すれば良い
だろう。

ちなみに、私の場合は上記方法で算出したライン巻き取り長さに2%(160m当たりで3.2m)の誤差
があると想定して一律に0.98倍の係数を掛けて推定飛距離としている。

この2%の誤差の根拠はというと実は明確には無く、シンカーが着水するまでの滞空時間と弾道
高度から経験的に推定される実飛距離とオシュレーション往復回数から算出した推定飛距離との
ギャップを整合する係数が概ね2.0〜3.0%誤差と考えての計算となっている。

表2には、練習時の推定飛距離の一例を挙げている。
すべての投擲で、シンカーが着水した直後に糸フケを巻き取り、シンカー着水点とロッドとの間の
ラインがほぼ一直線になってからのライン巻き取り距離をオシュレーション往復回数でカウントし、
使用したリールのオシュレーション1往復での基準巻き取り長さを乗じた後、誤差2%分の減算にて
推定飛距離を算出している。

表2 練習時の推定飛距離データの一例
練習年月日 2017/11/18 2017/12/9 2017/12/24 2018/1/4
リール機種 ダイワ
トーナメントサーフ ベーシア 45C
シマノ
スーパーエアロ キススペシャル
シマノ
13スーパーエアロ サーフリーダー CI4 35
シマノ
12スーパーエアロ フリーゲン
使用ロッド 魚心観 HYBRID HERITAGE 410 魚心観 HYBRID HERITAGE 410 魚心観 HYBRID HERITAGE 410 魚心観 HYBRID HERITAGE 410
項目 オシュレーション
往復数
ライン巻き取り
長さ(m)
推定飛距離
(m)
オシュレーション
往復数
ライン巻き取り
長さ(m)
推定飛距離
(m)
オシュレーション
往復数
ライン巻き取り
長さ(m)
推定飛距離
(m)
オシュレーション
往復数
ライン巻き取り
長さ(m)
推定飛距離
(m)
第1投目 56.8 159.04 155.86 58.5 143.33 140.46 15.1 158.55 155.38 7.1 158.63 155.46
第2投目 56.6 158.48 155.31 59.9 146.76 143.82 15.5 162.75 159.50 7.1 158.63 155.46
第3投目 56.3 157.64 154.49 59.5 145.78 142.86 14.8 155.40 152.29 6.6 147.46 144.51
第4投目 55.7 155.96 152.84 60.0 147.00 144.06 15.3 160.65 157.44 7.0 156.40 153.27
第5投目 58.4 163.52 160.25 57.0 139.65 136.86 14.9 156.45 153.32 6.9 154.17 151.08
第6投目 54.5 152.60 149.55 61.5 150.68 147.66 15.5 162.75 159.50 7.4 165.34 162.03
第7投目 56.0 156.80 153.66 58.3 142.84 139.98 15.0 157.50 154.35 6.9 154.17 151.08
第8投目 55.0 154.00 150.92 63.4 155.33 152.22 13.9 145.95 143.03 7.1 158.63 155.46
第9投目 - - - 66.2 162.19 158.95 15.3 160.65 157.44 7.3 163.1 159.84
第10投目 - - - 58.0 142.10 139.26 15.4 161.70 158.47 6.7 149.70 146.70
上位60%
平均飛距離(m)
155.91 148.26 157.95 156.92

このように、シンカーが着水してから糸フケを素早く巻き取ることができれば、川に向かって投擲
する練習での飛距離データをある程度の精度で算出することは可能である。

さらに同じ計算ロジックで飛距離測定を続けて居れば、調子が上向いているのかそれともスランプ
に陥っているのかは自分自身の飛距離データの履歴を相対比較することで判断できるので、この
方法でも十分に練習成果を評価することは可能だろう。

またいつか、陸上グラウンドで思い切りキャスティング練習ができて、1投毎に飛距離を実測できる
日がくるまで、この飛距離測定方法で練習を重ねていこうと思う。

5. 川でのキャスティング練習の後に欠かせないリールメンテナンスについて

ところで、川でのキャスティング練習後に欠かせないのがリールのメンテナンスである。

投げ専用リールの多くの機種が採用しているアルミニウム合金製スプールの殆どは耐食性合金
を使用しているが、それでも練習が可能な川幅を有する河川の場合は殆どの場合水質はあまり
良くないものと推察される。

川なので塩分濃度はごく僅かであると思われるが、生活排水や水中植物の光合成などの影響で
pH値は弱アルカリ側に振れている可能性もある。

アルミニウム合金は、アルカリ側のpH値環境では長期的に腐食が進行する特性もあるので、
川での練習後はラインに付着した水分や汚れを除去し、リール本体やスプール胴部,スプール
エッジも同様に水分と汚れを清掃することが望ましい。

そして、ラインを巻き取る際にラインに付着した水分飛沫を浴びているラインローラー部を分解し、
水分の侵入により乳化白濁した潤滑油を清掃した上で新しい潤滑油を塗布する必要もある。

近代的投げ専用リールのほぼすべての機種がラインローラー部にボールベアリングを内蔵するが、
そのボールベアリングについても表面を覆う潤滑油が乳化白濁している場合はウエスなどで清掃
した上で、新しい潤滑油またはグリースを塗布してラインローラーを組み直す必要がある。

                
        ラインローラーの機能維持のために練習後のメンテナンスは欠かせない

 
   ボールベアリング周りの清掃と注油          ラインローラー座金の清掃と注油

さらには、陸上グラウンドでのキャスティング練習時に比較すると、川での練習時のライン巻き取り
時のテンションは大きなものになる。

このため、マスターギアやピニオンギアへの負荷も増すので、駆動系パーツの定期的なオーバー
ホールまたはグリスアップも欠かせない。


  年に一度のオーバーホールをお勧めします

魚を釣ることが無いので、実釣用リールほど頻繁には駆動系パーツのオーバーオールは必要ない
と考えるが、それでもメインシャフトやマスターギアの潤滑油(グリース)膜が黒く汚れてきた際には
一度オーバーホールを実施するのが好ましいだろう。

飛距離アップに直結はしないが、愛機たちの健康状態をチェックしてベストコンディションを維持する
のもキャスティング選手の使命だと思うので。