2006年10月22日
Report #047 2006年全日本SC選手権大会〜ST種目熱投レポート 


「力(りき)むだけが力(ちから)ではない。力(りき)みを抜くことも力(ちから)です。」
通勤途中の「明浄寺」の今月の訓示板のことば。

ふと昨年の全日本SC選手権の投擲を思い出した。
全身に力(りき)みが入り、ロッドの振りに滑らかさがなく・・・

初速のないシンカーは吹き付ける向かい風に失速し、練習では170m超の飛距離が連発できた
コンディションで、まさかの3投平均167.50mと自滅した。

あれから1年。

特に意識したのは、第1投目,第2投目の投擲信頼性向上と、第4投目,第5投目の飛距離アップ
の、2つの課題だった。

7月から8月にかけて出場した兵庫,広島各地区大会では、テスト的に黒BORON:4投+赤BORON:1投
や、黒BORON:3投+赤BORON:2投の組み合わせを試みた。
パワーセーブ状態でもロッドが的確に曲がる「黒BORON」を前半セッションに使用し、第1投目:80%〜
第3投目:95%と徐々にパワーレンジを引き上げて、後半セッションは「赤BORON」にスイッチすれば
100%全開のパワーレンジで「一発!」の飛距離を叩き出す狙いである。

上手くいけば前半セッションに無風換算176〜178m級の飛距離が揃い、後半セッションでは無風換算
180m超級の飛距離で平均スコアを引き上げる計算である。

さらに、従来悪いクセとしてシャクリ投げによる抜けファールが20%近い確率で発生したが、投擲動作を
開始する一瞬にタメを作ることで、抜けた投擲を徹底排除。
5投全ての飛距離が3投平均計算に活かせることは、競技途中で風向風速コンディションに変化が起き
ても飛距離ロスを最小限に抑えるメリットをもたらす。

そんなイメージで競技実投と練習を重ね、今大会では第4投目までの黒BORONでの出来栄え次第で、
最終投擲は赤BORONで「一発!」を狙う作戦で競技に臨んだ。

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2006年10月15日、東広島市河内町広島空港流通団地に全国から119名のキャスターたちが集結した。

そのうち私が出場するST種目にはA,B合わせて34名が実参加。
5種目(A,B)の24名よりも多くの選手が集まったことで、ますます緊張感も高まった 。

1. 前半セッション:北北東の風1〜2m/s

競技開始時点では、北北東(コート左前約30度)の風が1〜2m/s吹き付けていた。
このコンディションなら170m近辺での争いか?

まずは第1投目、いつもよりパワーセーブして、コート正面を狙って投擲。
パワーセーブした分だけ、少し長い時間(といってもほんの0.05secほどか?)ロッドを押し込んでみた。
放たれたシンカーはコートセンターよりやや左側を上昇。
最もロッドの反発が良く伝わっている弾道だ。目標の170mには届いただろう。


         真鍋の投擲

計測の結果は予想外に飛んでいた。174.04m。
第1投目から上々の滑り出しで、精神的にかなりリラックスできた。

続く第2投目もほぼ同じくらいのパワーレンジで投擲。
ただし、向かい風が少し弱まったように感じられたので、弾道をセンターやや高めに合わせた。
シンカーは狙った通りの弾道でテイクオフ!

初速もまずまず出ていたので、「これはもしかして・・・177,8m行ったかな?」とぬか喜び。
計測の結果は174.50mと、無難なスコアに落ち着いた。

この時点で最長は小関選手(投好会・北九州協会)の178.99m。
予報では午後から風が収まるようなので、競技後半には届く飛距離だろう。
今は慌てなくても十分に実力を出せている。落ち着いて、落ち着いて。

2. 競技中盤:北東の風2〜3m/s

希望的予報に反して、風は徐々に強くなった。
まるで3週間前の中四九親善SC大会の第2投目,第3投目と同じコンディションではないか?
中四九親善SC大会では163〜165mが精一杯だったので、今回はせめて167m以上欲しいところ。

風が強くなった第3投目は、パワーレンジを95%程度に引き上げていく。
風を意識して、シンカー弾道は若干左寄り低めを狙う。
投げた瞬間、「これは・・・もしかして170m近く飛んだ?」と自信満々で計測を待ったのだが、結果は
目標値±0の167.15m。

何はともあれ、3投平均が171mオーバー確定。暫定2投平均なら174m台と有利な展開。
残り2投が余裕を持って、思い切り投擲できる!

競合選手の飛距離をチェックすると、小関選手の暫定2投平均は174m台で全くのイーブン。
先の中四九親善SC大会で3位入賞の水野選手(西京サーフ・山口協会)は暫定2投平均170m台と善戦。
どうやら第4投目,第5投目で勝負が決まることになりそう・・・


        小関選手の投擲


        水野選手の投擲

あと1投、できるだけ170mに近い飛距離を出しておきたいところだ。
しかし、無常にも風は勢いを増し、つむじ風となってコートを直撃。
初速のないシンカーは風にはたき落とされるように方向を見失い、ファールエリアへと落下する選手が続出。

第4投目にコマを進めた選手は23人(A,B合計),第5投目にコマを進めた選手はたったの18人となった。

3. 後半セッション:北東の風3〜4m/s

第4投目の順番になり、ST種目ケージに入ったところで、強烈な風が吹き付けてきた。
まるで、「飛ばせるもんなら飛ばしてみな!」と風の神から挑戦状を叩き付けられた心境である。
ならば、と風が収まるのを待たずに、パワーセーブなしに一気にロッドを振った。

シンカー荷重のノリも十分でロッドの反発も上手くシンカーに伝えることができた。
「ヨシ!」と思った矢先に「バチン!!!」と嫌な音が・・・
どうやら、テーパーラインの途中ちょうどリールのオシュレーションがスプールエッジ側でターンする
辺りを起点にパーマを起こしてライン切れしたようだ。惜しくもファール。

3F失格者が続出したために第5投目はあっという間に順番がまわり、風はまだ止む気配もなくビュウビュウ
と吹き付けていた。

かつての私であれば、ここでパワーセーブなしの120%のパワーキャスティングにより自己最長飛距離の
更新を狙ったことだろう。
その結果として、第5投目に一発大逆転の超ド級弾道を飛ばしたことがあっただろうか???
記憶にはない。
いつも力みが災いして、抜けたり引掛けたりの凡投記録か、それともファールに終わっている。

ならば、パワーセーブしてサードスコアの更新だけに注力すれば、より確実に3投平均の引き上げが可能
ではないか?
そんな考えから、今大会では赤BORONを使わずに、最後まで黒BORONで投げ通すことに決めた。

最後の第5投目、とにかくサードスコア更新の168mで良いから届いておくれと、95%にパワーセーブして
投擲した。

結果は目標に少し足りない166.50m。

しかし風コンディションの悪さを考慮すると、十分に満足できる飛距離である。
これで、3投平均:171.90mが確定し、あとは競合選手の第5投目を見守るだけである。

風は相変わらずシンカーを右方向へ流す勢いが強く、選手各人フェアゾーンを捉えることに苦戦している。
小関選手も第4投目にファールしており、最後の投擲では十分すぎるほどのタメで的確にフェアゾーンを
狙ったかに見えた。
計測員が駆け寄った所は160mオーバー地点であり、計測の結果が167m以上なら小関選手の逆転優勝。
それ以下なら私の逃げ切り優勝である。
一瞬の静寂の後、主審が赤旗を掲げた。(何故???)

小関選手の投げたシンカーは、コート左サイドラインよりほんの数mだけ外へ落下していた。
これで小関選手の3投平均は167.71mに確定し、私の大会2年ぶり優勝が決定的となった。

そして、競技前半のセッションで暫定3投平均168.54mをマークしていた水野選手の最終投擲は、
風が強くなっておりサードスコア更新も困難な状況で159.50m。
晴れて全国大会初表彰台となる準優勝が確定した。

最後に忘れてならないのが、井上選手(ダイナミックサーフ・大分協会)の存在。
第1投目と第3投目でファールとなりながらも、失敗を恐れず全力でフルスウィングする井上選手には、
第5投目で178m以上投げると大逆転優勝の可能性もあった。

実際には風がますます強くなるコンディションで、計測結果こそ164.31mであったが、無風なら間違いなく
180mオーバーのナイスキャストだった。
結果3投平均:167.28mで、3位の小関選手には一歩及ばずの4位となり、私の優勝が正式に決まった。

なお、平行して行われたST-B種目では、荒田選手(戸畑サーフ・北九州協会)が3投平均:162.03m,
最長:165.51mで優勝。
荒田選手は、先の中四九親善SC大会での準優勝に続く好調ぶりで、ST種目総合順位でも5位につける
健投だった。


        井上選手の投擲


        荒田選手の投擲

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ところでST-A種目準優勝の水野選手、今年のSC協会対抗戦ST種目で全国大会デビューした選手とは
思えない、実に冷静・的確なキャスティングで、大会ごとにグングン成績を伸ばしている。
私自身は先の中四九親善SC大会で初めて投擲を拝見したのだが、この時にはスウィング時の体重心
位置が前のめり気味な点がやや気掛かりだった。

ところが今大会では、スウィング中の体重心位置が安定感を増しており、この3週間相当な投げ込みを
行って来たのではないかと感じられた。
恐らく、来シーズンには水野選手も優勝争いの一角に加わることになるだろう。

ST-TOP3 Movie

4. Bコートその他の種目ダイジェスト

Bコートでは、ST種目以外に第1種目,第3種目,第5種目-Bとポイント種目が開催されました。

御調山SC研究所からは、第1種目に大出選手と松本選手,第3種目に薬師寺選手,第5種目-Bに
近藤選手が出場。

第1種目の松本選手は、前日の練習で悪い所を全て出し切った感じで、大会本番では第3投目まで
トラブル無く善戦。
ただし160m超もなく、やや迫力に欠ける3投平均:154.15mで3位となりました。

一方で大出選手は、第1投目,第2投目と151〜153m台の飛距離で松本選手とのデッドヒートを予感
させましたが、第3投目以降バックラッシュが続発。

連続3Fで敢え無く失格となってしまいました。


        松本選手の投擲


        大出選手の投擲


第3種目の薬師寺選手は、先の中四九親善SC大会でデッドヒートを繰り広げた小谷選手
(投好会・北九州協会)に加え、全日本3種目マイスター・松尾選手(レインボーキャスターズ・兵庫協会)
との大激戦が予想されましたが、5投を通して競合選手にあと一歩及ばず3投平均:141.97mで3位と
なりました。


       薬師寺選手の投擲

第5種目-Bの近藤選手は、先の中四九親善SC大会でのストレート3Fの雪辱を果たすべく練習を重ねた
ものの、今回も投げ急ぐようなフォームが出てしまいストレート3Fで撃沈。
無言のまま、御調山SC研究所タープから姿を消しました・・・


        近藤選手の投擲

一方で、遠く愛知から遠征参加された八田選手(愛知投友会・愛知協会)は、4.5mもの長さに改造された
サンダウナーCompetitionで圧倒的な大アーチを連発!
完全無風のコンディションで187m台の飛距離を連発されると、観衆からはどよめきが起こりました。


        八田選手の投擲

1,3,5B-TOP1 Movie


むすび

こうして、私にとっては最高の形で2006年シーズンを締めくくることができ、2005年のSC協会対抗個人戦
以来、1年5ヶ月ぶりに表彰台の頂上に返り咲くことができました。
この間、ロッドチョイスの見直しからガイドセッティングの見直し、キャスティングフォームの見直しと、すべて
のこだわりを一旦リセットすることから、立て直しを図りました。

そして、御調山SC研究所の練習仲間の方々には毎週のように練習にお付き合い頂き、良い所,悪い所を
指摘下さったお陰で、今回このような良い成績を残すことができたと思います。
所属の枠を超え、一心同体で取組んで頂いた1年5ヶ月でした。

本当に有難うございました。そして、これからも宜しくお願いします。

最後になりましたが、今大会開催にあたり8月の酷暑の中から少しずつ草刈り作業を進めて頂きました
広島協会関係者の皆様と、大会当日プロジェクト下さいました香川協会関係者の皆様に、
心よりお礼申し上げます。

また来シーズンも、素晴らしいキャスティングコートで投擲できることを楽しみにしています。