'07年10月28日
Report #053  2007年全日本SC選手権・ST種目レポート


2007年キャスティングシーズンもいよいよ終盤戦となり、ST種目に参戦する投げ師たちには年間の
最終戦となる全日本SC選手権が、10月14日に広島県東広島市河内町広島空港流通工業団地
特設会場にて開催された。

例年であれば、本大会のST種目には地元広島協会をはじめ、お隣県山口協会,北九州協会,
香川協会,大分協会の各選手が中心となり競技が行われるが、今大会では北海道協会から
池田選手,橋野選手が遠征参戦。
さらに私の地元兵庫協会からは、協会対抗戦チャンピオンチーム・川端泰三選手,坪田選手,
徳田選手と、準優勝チーム・船曳選手,植田選手が、そして神戸中央サーフからはクラブ唯一の
200mキャスター・磯野選手が4年ぶり3度目の参戦により、参加選手の顔ぶれには近年まれに見る
層の厚さを感じた。

1. 第1投目

競技はST-B種目(10名)から始まった。
ST-B種目ではベテラン選手が多く参加するだけに、ファールはごく少なく競技は順調に進んだ。

先の中四九親善キャスティング大会では残念ながら表彰台を逃した中村選手(北九州協会)で
あったが、今大会では第1投目から気迫のこもった投擲で159.94mを投げて暫定トップ。

以下、荒田選手(北九州協会),磯部選手(広島協会),平田選手(広島協会)が156〜157mで
続いている。

そしていよいよST-A種目。
ST-B種目の上位陣が160m付近であるから、ここは170mオーバーが欲しいところだが・・・

ST-A種目の一番最初の投擲順が何と私だった。
実は投擲順は当日会場で知らされるのだが、ここ数年はST-A種目の比較的最後の方に投擲順
が回って来る大会が続いていたので、少し緊張した。

とは言っても、ここは長年の経験が活きてくる。
いつものようにコートセンターをしっかり見据えてから深呼吸し、投擲動作に入った。

モーションに入ると、ゆっくり息を吸い込みタメを作る。
このとき胸に吸い込む息の量をコントロールすることで、後のスウィング動作で発生するパワー
レンジをコントロールするので・・・ファールを嫌う第1投目はパワーセーブするために息を吸い
込む量をやや控える。

スウィング動作を開始すると、右手人差し指にロッドのしなりを感じるところまでさらにパワーセーブ
し、そこから一気に肩,臂の関節にパンチ力を与えてロッドをコート正面上空40度の角度に突き
上げてフィニッシュ!

第1投目はイメージ通りのパーフェクト・キャストに仕上がった。
弾道はコートセンターから少し左寄り。
一番伸びる弾道だろうか。

170m目標に対し、計測結果は168.29m。
今回は大会前日にテーパーラインの慣らしができずに新品テーパーを使わざるを得なかったため、
そよそよと向かい風が吹くコンディションではこの飛距離なら満足すべきだろう。

テーパーラインの慣らしはこれでできたので、次の投擲では4mアップの172m以上が確実に狙える。

私の次投擲は神戸中央サーフ、いや兵庫協会No.1のパワーキャスター・磯野選手だが、楽々
178.23mを投げている。
丁度10mの差を付けられたが、今の私にはこの飛距離は出せない。
それは十分に分かっている。
今大会は順位を気にせず、ただ自分自身の納得できる投擲を重ねるのみだ。


磯野選手(兵庫協会・神戸中央サーフ)の力投
間近に見るとさらに強烈・・・

引き続き兵庫協会選手の投擲が続くが、協会対抗戦チャンピオンチームが何と言うこと?
徳田選手が168m台をマークしたものの、主砲格の川端選手と坪田選手が揃ってファールをして
いるではないか!

そして、ST-A種目の最終投擲者である井上選手(大分協会)が見事なパワーキャスティングで
183.20mをマークし、磯野選手の178.23m暫定種目最長を更新。
丁度この頃から風は正面から右後方へと変わってきた。

残り4投は追い風傾向での180mバトルになりそうな予感・・・

2. 第2投目〜第3投目

風が追い気味となった競技中盤はST-B種目,ST-A種目ともに各選手とも飛距離を伸ばしてきた。

ST-B種目では、中村選手が165m台をマークし、160〜163m台を投げた平田選手,斉藤選手
(北九州協会),荒田選手より一歩リード。

私はというと、第2投目には追い風を意識し過ぎてしまい、体がかなり前へ突っ込んでしまう。
結果シンカーを乗せるタイミングが大幅に遅れてしまい、コート左ギリギリに引掛けてしまった。

飛距離は追い風のお蔭で174.40mに伸びたが、完全な失投。
すぐに御調山SC研究所の師匠・林選手と対策ミーティングを持つ。

続く第3投目には、先の失敗を対策するために、フォームを微調整。
左足のステップ量を小さくし、体が前方へ突っ込むことによるロッドのブレとラインの緩みを可能な
限り小さく抑えることに意識を集中。

結果、投擲動作に違和感はなく、第1投目よりも大きくロッドを曲げることができた印象。
ラインリリースから飛び去っていくシンカーを目で追ったときには、180mくらい行っただろうか?
と期待したのだが、計測結果は176.32m。
今現在スランプ中の私としては納得すべき数字だろう。

一方で井上選手,橋野選手は180〜186m台の飛距離を揃えて、熾烈なトップ争いを展開している。
両選手とも、滑らかでありながら力強いスウィングで圧倒的なビッグアーチを連発している。


橋野選手(北海道協会・北海サーフCC)の投擲
羨ましいくらい滑らかで力強いスウィングで186.04m!

さらに、船曳選手が177〜180m台,磯野選手が173〜179m台をマークしており、この4選手が
第4投目から第5投目にかけて、どうやら今大会の優勝争いを繰り広げることになりそうだ。

また、池田選手は第2投目にファールしてしまったが、第3投目には177.72mを投げている上に、
数年前の全日本SC選手権大会においても第5投目まで熾烈な優勝争いを繰り広げた実績がある。
競技後半戦で一気に逆転もあるだろう。

今大会は久々に大興奮の競技展開となりそうだ。
できることなら、私もその熾烈な争いに身を投じたいものだが・・・
投げた感触から期待する飛距離には定常的に4〜5m足りていない現状を考えると、持てる力を
最大限発揮した飛距離をせめて3本揃えることに注力しようではないか。

3. 第4投目〜第5投目

競技もいよいよ終盤。
ST-B種目では、中村選手が第4投目に169.15mを投げて独走態勢。
平田選手,斉藤選手,荒田選手,磯部選手は、揃って159〜163m台の飛距離に集中している。
いつもなら和気藹々と競技を楽しまれているST-B種目選手のはずが、皆さん揃って口数が減少
傾向なのは気のせいだろうか???


中村選手(北九州協会・戸畑サーフ)の投擲
中四九の雪辱を果たす一投

結果的には中村選手が3投平均:165.76mで優勝,平田選手が3投平均:161.54mで準優勝,
斉藤選手が3投平均:161.26mで第3位,荒田選手が3投平均:160.96mで第4位,磯部選手が
3投平均:160.94mで第5位となったが、第3位から第5位の飛距離差はたったの0.3mほど。
しかも荒田選手と磯部選手の差はたったの2cmと、かなり熾烈な上位争いだった。

そして、ST-A種目。
私自身は第4投目も慎重に投げることに意識を集中し、自己満足100点満点の投擲で177.75m。
気持ち的には182mくらい飛んだか?!と期待したのだが、やはり5m足りない。
でも十分に満足な投擲ができた。


真鍋(兵庫協会・神戸中央サーフ)の投擲
飛距離の安定感はあるのですが飛距離がちょっと・・・

そこで作戦を変更し、第5投目にはロッドを黒ボロンから赤ボロンに持ち替えた。
実はこの一年間、再び赤ボロンで大会に出ることを目指し、雨の日も風の日もひたすら赤ボロン
を振り続けていたので、どうしても最後の一投だけでも赤ボロンでとどめを刺したかったのだ。

結果はセカンドスコア更新の176.93mと自己最長更新はできなかったが、第4投目のコンディション
よりは若干風が弱まっていたので、かなり満足できる飛距離が出せた。
結果は3投平均:177.00m。

2005年の全日本SC選手権大会では連覇だけを目標にした結果投擲動作に力みが入り、投げて
も投げても期待する飛距離には程遠く、投げることが楽しめずに不満だけが残った記憶があるが、
今大会は不調ながらも自分自身満足な投擲が5投中4投ででき、キャスティングを存分に楽しむ
ことができた。

一方で熾烈な上位争いは意外にも大きな変化はなく、第3投目までに181.18〜186.29mの飛距離を
キレイに3本揃えた井上選手が3投平均:183.56mで初優勝。


井上選手(大分協会・ダイナミックサーフ)の投擲
186.29mの種目最長で堂々の初優勝!

実は井上選手は第3投目を投げた瞬間に足に痙攣を起こしてしまい、続く第4投目,第5投目は本来
の力強い投擲ができない状態となってしまっていた。
もしあの時足に痙攣が起きていなければ・・・もう一本とんでもない飛距離が出ていたかも知れない。
それくらいこの日の井上選手は乗りに乗っていたので、来シーズンの大会が今から楽しみである。

そして、競技中盤に186.04mの好飛距離を出した橋野選手は第4投目に170.65mを投げたが、
第5投目にこのサードスコアを更新できず、3投平均:179.07mで準優勝となった。

第3位には、兵庫協会ST選手陣の中ではグングン飛距離を伸ばしている船曳選手が第4投目,
第5投目と安定して177m台の飛距離を連発し、堂々の初表彰台ゲットとなった。


船曳選手
(兵庫協会・西宮天狗クラブ)の投擲
公式戦初の180mオーバーで初表彰台ゲット!

4年ぶりの全日本SC選手権出場で表彰台ゲットが期待された磯野選手は、かつての抜けファール
癖が全くなくなり、第3投目までに173〜179m台を3本揃えた結果、3投平均:177.33mで第4位入賞
となった。

磯野選手に0.33m及ばなかった私が第5位。

競技後半に大逆転が期待された池田選手は、第4投目に177m台をマークしたが180mオーバーが
出ず、3投平均:175.68mで第6位となった。


ST-A種目入賞者

ST-A種目TOP3 Movie

ST-B種目優勝&ST-A種目4位,5位 Movie

4. さて、来年に向けて

今大会をもって2007年のキャスティングシーズンも終了。
いつもなら2,3週間キャスティング用ロッドを手にすることなく、しばらく「バカンス」を取るのだが、
スランプ中の身分ではそういう訳にはいかない。

今私が抱えている問題は、キャスティング動作の初期段階に体が前方に突っ込むためにロッドが
投擲方向へブレてしまい、その結果ラインが緩むことに飛距離ダウンの原因があるようだ。

この点を改善し、イメージ通りの弾道が得られるよう、またひたすら練習場に通うシーズンオフと
なるだろう。

努力は自分を見捨てない、失敗は成功の途中、さてまた練習するか。