'08年05月27日
Report #058  2008年全日本SC協会対抗戦 ST種目参戦記


2008年5月11日(日)。
春のキャスティングシーズンもいよいよ締めくくりの全日本SC協会対抗戦。

兵庫協会選手団で勝ち取った2007年全日本SC協会対抗戦・ST種目団体戦ワン・ツー独占
から早いもので一年が過ぎた。

私自身は、昨年の夏季SC通信大会以降ちょっとしたスランプ状態となっており、秋の
全日本SC選手権や中四九親善キャスティング大会など、会心の一投がなかなか出ずに
不本意な投擲が続いてしまっている。

一方で兵庫協会・ST種目選手団は、今年もST種目団体戦ワン・ツー独占を再現するべく、
春季SC通信大会から相当気合が入っていたので、チームの足を引張る訳にはいかない。

私も今大会ではベストを尽くすつもりで、GW連休中には3回の練習で100投以上投げ込んだ
上に、大会前日にはコート設営のお手伝いと称して大会Bコートにて雨の中実地練習を強行。
飛距離はコンスタントに164〜172mをマークし、スランプ脱出を実感する上々の仕上り。

あとは大会本番で冷静に5投を投げ切るのみ。

1. そしていよいよ競技開始

今大会ST種目には、13チーム;48人が出場。
各選手とも、各地で開催された春季SC通信大会で上位に入った精鋭揃いであり、中でも
北海道から遠征参戦の菅原選手,池田選手,井森選手,橋野選手は、関西圏や中国,四国,
九州のST選手達にとって同じコートで競技ができる機会がめったにないため、注目が集まる。

また、昨年の全日本SC選手権で悲願の初優勝を飾った大分協会・井上選手も所属クラブ名
が示す通り『ダイナミック』な投擲で注目が集まる。

そんな一流選手達の投擲はネット際から拝見するだけでも十分に価値があるのだが、ここは
敢えて観戦せずに集中力を高める。

私の投擲順は35番目なので、競技開始から小1時間出番は回ってこないだろう。
この時間を利用して、スプールに巻き取ったラインのテンションをもう一度確認し、タラシの長さ
もベストコンディションにセットアップ。
そして自分の投擲順が回ってくる時を静かに待つ。

競技開始時点の風向風速は、コート左横から約2m/s。
このコンディションなら170m台前半での争いとなるだろうと予測。

案の定、大分協会・井上選手:173.79m,北海道協会・井森選手:171.21mと、強豪選手は
第1投目から170mオーバーの飛距離を出しているが、時間の経過とともに風向風速ともに
厳しさを増している。


井上選手の第1投目:173.79m

ようやく兵庫協会選手団に投擲順が回ってきた頃には、コート正面から約3〜3.5m/sの風と
なり、165m〜167m飛べば合格ラインだろう。

しかし、風を意識したのか兵庫協会・Aチーム主将格の川端選手,坪田選手がファールして
しまい、メンバーには強烈な緊張感が漂った。
幸いにも、実力急成長中の徳田選手と船曳選手が落ち着いた投擲でフェアゾーンを捕らえて
健闘。
しかも船曳選手は、向かい風をものともしない力強い弾道で166.93mをマークし、気分的に
プラス傾向の流れをBチームに繋いでくれた。

おかげでBチームでは、私の165.24mを皮切りに高橋選手:135.66m,植田選手:147.56mと
堅実にフェアゾーンを捉えることに成功。
ところが何と、Aチーム主将に続きST選手団長の永谷選手がまさかのファール。
永谷選手がファールとは・・・過去にそんなことがあっただろうか?

とは言え、まだまだ4投ある。
個人戦なら朝の第一投目の飛距離でおおよその順位が決まりがちであるが、今大会の
メインイベントは何と言っても団体戦。

4人チームの総合力ではまだまだ勝ち目はある。
残り投擲でファールをしないよう、各選手とも素振りをしたり、ストレッチをしたり、イメージ
トレーニングをしながら次の投擲順を待った。


真鍋の第1投目:165.24m

2. 競技中盤・・・風はますます強くなり・・・

競技中盤には風がますます強くなり、しかも風向きが左前45度から正面の間でコロコロと
変化し始めた。

第1投目に170mオーバーをマークした井森選手と井上選手は、第2投目にも吹き付ける風
も何ら影響しないかのように井森選手:174.23m,井上選手:168.25mとダントツの飛距離
をマーク。
個人戦はこのまま二人の争いになるかと思われた。

一方、兵庫協会選手団はさらに風に翻弄され続け、川端選手,坪田選手,徳田選手
ともに、第2投目,第3投目が153〜161m台で伸び悩む。
ただ船曳選手だけが、第2投目:162.10m,第3投目:169.53mと飛距離を伸ばし、右肩
上がりの勢いで競技終盤に170mオーバーの期待がかかる。

私も、第2投目を横風に流されファールしてしまったが、第3投目には164.01mを投げた。
残り2投ではあと3,4m追い上げたいところ。

高橋選手,植田選手も第2投目,第3投目に141〜149mを投げ、着実にポイントをゲット。
植田選手は第3投目までノーミス・パーフェクトの投擲で、ふがいない?Aチーム主将に
渇を入れる。

しかししかし何と言うことだろうか、永谷選手がまさかまさかストレートの3F!
前代未聞の出来事で、兵庫協会選手団に衝撃が走った。
動揺を隠せない永谷選手であったが、これも日頃のお世話役の苦労から疲れが出て
しまったのだろう。
残りの投擲を全員一丸となって挽回するのみである。

ところで北海道協会選手団は個人戦,団体戦ともにダントツの優勝候補であるが、
コンスタントに170mオーバーを揃える井森選手に加え、池田選手が第3投目までに
158.24m〜167.59mを3本,橋野選手が2Fながら第2投目に167.87mを、菅原選手も
2Fながら第2投目に164.55mを投げており、競技終盤で一気に団体戦優勝に王手を
掛ける可能性が高い。

兵庫協会Aチームが団体戦2連覇を達成するには、残り2投で全くミスが許されない状況
となったが、Bチームの団体戦2位はこの時点でほぼ絶望的となってしまった。

3. 競技終盤

競技はいよいよ終盤の第4投目〜第5投目となった。

計測当番が最終組である兵庫協会チームは、第4投目を投げるとすぐに第5投目の順番
が回ってくるため、少々慌しくなる。

逆に集中力が高まったままで終盤の2投を投げることができるため、良い飛距離が2つ
続いて気持ち良く競技を締めくくれる可能性も高まる。

兵庫協会Aチームでは、川端選手が第4投目に165.54mの自己ベストを投げ、3投平均:
159.96mが確定。


川端選手の第4投目:165.54m

坪田選手は2Fからの第4投目と第5投目に157m台を2本入れ、3投平均:156.18mに。


坪田選手の第4投目:157.94m

徳田選手は会心の一投で自己ベスト;169.18mをマークし、3投平均:159.30mが確定。


徳田選手の第4投目:169.18m

上り調子の船曳選手は、第4投目に自己ベスト;170.60mを、さらに第5投目にも向かい風
を突く力強い弾道で168.70mを投げて3投平均:169.61mが確定。


船曳選手の第4投目:170.60m

晴れて4人全員が3投平均記録を残せたことで、団体戦2連覇の希望は繋がった。

一方兵庫協会Bチームは、私が第4投目に『持病』の力みが入ってしまい、引掛けミス
キャストをしてしまった。
第5投目には同じミスは許されないためゆっくり深呼吸をしてから投擲し、今日イチの振り
ができたのだが計測結果はまたしても164m台・・・
あと2,3m程欲しいところだが、終始強い風が吹き付けたコンディションでは3投平均:
164.51mなら我ながら良く投げた方だろう。

高橋選手は、私の引掛けミスキャストに釣られてしまったのか?それとも永谷選手の
ストレート3Fに触発されたのか?第4投目,第5投目を連続ファールしてしまい撃沈。

植田選手はサードスコア更新の147.05mを投げて、3投平均:148.11mが確定。
永谷選手は最後まで諦めない投擲で143〜148m台を投げて兵庫協会選手団の競技は
終了した。

気になる団体戦勝敗の行方であるが、ここまで実力的にも雰囲気的にも団体戦優勝
間違いなしと思われた北海道協会選手団の第4投目は、池田選手の種目最長:179.70m
を皮切りに、井森選手:174.11m,橋野選手:167.97mと素晴らしい飛距離を連発した
のだが、こちらも何と言うことか選手団長の菅原選手が痛恨の3Fをしてしまった。


池田選手の第4投目:179.70m


井森選手の第4投目:174.11m


橋野選手の第4投目:167.97m

どうやらこの時点で兵庫協会Aチームの団体戦2連覇は決定的だったようだが、何故か
チームの雰囲気は嬉しさ半分,悔しさ半分といった感じであった。

4. 最後は計測をしながらの観戦

取り敢えず兵庫協会Aチームは成績を残すことができた。

あとは個人戦の結果がまだ不透明である。
こちらは北海道協会選手団と大分協会・井上選手の残り1投で勝負が決まる。

第4投目に180mに届こうかというスーパーキャストで一気に個人戦逆転優勝が見えて
きた池田選手は、第5投目にも173.47mを投げて3投平均:173.59mが確定。

ここまで暫定トップを守り続けた井森選手だが、第5投目を惜しくもファールしてしまい、
3投平均:173.18mが確定。
その差41cmの逆転劇で池田選手が個人戦優勝に王手を掛けた。

橋野選手は170m台に届かなかったが、自己ベスト;168.08mで3投平均:167.97mが確定。
我らが兵庫協会の新エース・船曳選手(3投平均:169.61m)に次ぐ個人戦順位となった。

そして最後の優勝候補、井上選手が投擲エリアに入った瞬間、突然強い向かい風が
吹き付けた。
これではさすがの井上選手ですら170m台は困難か?と勝手に推測したのだが、見事に
振り切られたボロンプロスカイヤーからシンカーは瞬く間に弾き飛ばされ、着地点は
どうやら180mのパイロンからほんの少し手前のようだ。
計測の結果は172.11m。
3投平均:171.38mが確定したが、池田選手,井森選手を大逆転することはできずに
個人戦第3位となった。

結果、ST-A種目の個人戦最終順位では、池田選手が優勝し井森選手;準優勝,
井上選手;第3位,船曳選手;第4位,橋野選手;第5位で、私が第6位となった。
何はともあれ、私自身はスランプからの回復過程にあるだけに個人戦で6位に入賞
できただけでも今回は上出来だろう。

5. ところで御調山SC研究所メンバーは・・・

主要メンバーである備後協会チームは、直前練習の付け刃が脆くも欠け落ちるか、
それとも今年こそは5-1クラブ(5投中1投しかコートに入らない、という意味)の悪名を
返上し、4人全員が3投平均の記録を残すことができるのか?

今回の結果によっては来年以降のチーム存続の危機にも立たされたのだが、何と
無事全員4本以上もコートに入ったではないか。

しかも、研究所では『仙人』とも呼ばれる応谷選手がまさかまさか、3投平均:155.54m
の好記録でST-B種目個人戦優勝の快挙を成し遂げ、また新たな伝説を残した。


応谷選手の第4投目:156.54m

誰も3Fしなかっただけに、備後協会チームは団体戦でも5位に入り、来年の協会対抗戦
に向けてチームが存続できることに決まったようだ。

一方、研究所の河内分所メンバーである広島協会チームは、若手No.1の福岡選手
と第1種目から第5,第6種目,ST種目と何でもこいの超人;三戸選手を軸に、友田選手,
浜松選手のベテラン勢が脇を固める4人組でAチームを結成。

密かに団体戦優勝を狙っていたのだが、三戸選手が足の故障で飛距離が伸び悩み、
結果は団体戦第3位。
しかし、若頭;福岡選手が3投平均:162.73mで個人戦第7位に入賞し、超人の故障を
見事にアシストした。


福岡選手の第4投目:163.91m

こちらも、来年の協会対抗戦に向けてチームはそのまま存続するようだ。

6. むすび

今大会は前日の大雨から一転、曇り空ながら無事大会が開催できましたのも、いつも
プロジェクトをして下さる広島協会関係者のご尽力のお蔭と感謝致します。

また秋のキャスティングシーズンに、河内会場で皆さんお会いしましょう!


全日本SC協会対抗戦 ST種目V2キャスターズ
後列左から徳田道彦選手,坪田充弘選手
前列左から船曳正義選手,川端泰三選手


ST-A種目個人戦 優勝〜第3位