'09年11月03日
Report #072 2009年秋のキャスティング3連戦・ST種目参戦記


7月の北海道選手権遠征から2ヶ月は、束の間のキャスティング大会のないオフ期間となる。

しかし、北海道選手権で弾道が抜け方向に集まってしまい、やや不本意な飛距離で辛うじて3本
をフェアゾーンに投げるだけに終わってしまっただけに、のんびり練習を休む訳にはいかない。

遠征先で本来の力が出し切れなかった悔しさから、秋の3連戦…
 ・9月13日:広島協会・備後協会合同夏季SC通信大会
 ・10月4日:中四九親善キャスティング大会
 ・10月18日:全日本SC選手権大会
…に照準を合わせた練習を、遠征翌週の7月12日に再開した。

北海道選手権遠征では、現地までの移動の疲れや大会会場の地理的特長,風コンディションの
特徴など未知の要素が多いであろうことから、大会までの1ヶ月半はやや軟らかめのシマノ・
スピンパワーSC425XXで投げ込みをしたのだが、地元大会であれば実績面でも信頼性の面
でも安心感の高いBORONプロスカイヤーにロッドチョイスを変更し、ミッチリ投げ込みを重ねた。

ところが…
7月の終わり頃から腰痛が再発。
それでも無理して休まず毎週練習を重ねた結果、とうとうお盆休みには布団から起き上がれなく
なってしまった…
病院での診断結果は『変形性脊椎症』とのことで、15年前にヘルニア除去手術をした椎間板が
元々の厚さの1/3以下まで薄くなり、腰椎同士が直接擦れてしまう状態になっていた。
要するに『老化現象』と、医師には留めを刺されてしまった…(精神的ショック)

幸い、まだ神経系にダメージが及んでいなかったので、腰の関節炎が収まれば痛みは取れる
でしょう、とのことだが結局3週間近く練習を休むことになった。

はてさて、この先のキャスティング人生はどうなることやら…
これからは一日の練習量をセーブして、腰を労わりながら投げなければいけなくなった。
しかも秋の3連戦はもう目前。
全ての大会でパーフェクト・キャスティングを目指すのはやや困難で、最終戦:全日本SC選手権
で最高の投擲ができるよう先の2戦は実地練習のつもりで臨むこととなった。

1. 第1戦(9月13日);広島協会・備後協会合同夏季SC通信大会

まずは初戦;夏季SC通信大会。
これまでの夏季SC通信大会は毎年8月のお盆明けに開催されていたのだが、朝から30℃を
越す猛暑の上に台風接近により開催が危ぶまれることも稀にあった。

今年は日程が変更されて、涼しさを増した9月13日に開催。
1ヵ月後の全日本SC選手権に向けて、本番モードでの投擲チェックができる良い機会となった。

今大会2日前の練習では、腰痛さえ出なければ愛竿:BORONプロスカイヤー・プロトタイプが
気持ち良く振り切れていたのだが、大会前日に雨の中会場の草刈りをした上に「変形性脊椎症」
は午前中痛みが続く傾向がある。
当日朝の腰はジクジクと鈍痛が感じられたので、BORONを振るのは無理かと半ば諦めていた。

では、と今大会は軟らかめのサブロッド・スピンパワーSC425XXで気軽に投げることだけ楽しむ
ことに決めていたのだが、お昼近くに普通種目が終わりST種目がスタートする頃には、腰痛も
納まり何とかBORONで投げることができそう。

慌ててBORONを繋ぎ、リールとシンカーをセットし投擲エリアへ。
風はそよそよと左の谷から吹き込む横風コンディション。
170mオーバーが今日の合格ラインだろうか。

第1投目は予想以上にシンカー荷重のノリも良く、気持ち良くロッドが振り切れたのだが…
ラインにヨレが入っていたのか、それとも投擲動作にちょっと節目ができてしまったのか、
ガイドにラインが絡んで失速してしまった。

飛距離を計ってもらうのも申し訳ないのでファールを自己申告。

気分を変えるためにも、ライントラブルを避けるためにも、ここでスプールを交換。
第2投目は慎重に、二度振りしないよう意識して投擲をしたので、ロッドも絶好調に曲がった。
丁度神風のように一瞬だけ風向きが左斜め追い風になった状況もあり、シンカーはグングン
高く遠くへ伸びて行った!



スプールに残ったラインの量から推定して、180mは超えただろうか。
希望としては185m!と計測結果のコールを待ったのだが、結果は180.17m。
後で計測員の方からお聞きすると、コート側はまだ横風が残っており170mを超えたあたりで
横風を受けて急失速していたとのこと。

それでも180mは超えることができたので大満足。
あと2本同等の飛距離が揃えばなお満足…とちょっと欲が出てきた。

続く第3投目、コンディションは徐々に左斜め向かい風に変化した。
ここでちょっとしたハプニング。
投擲エリアでリールのベールを起した際に、人差し指からラインが滑り外れてしまった。
折角合わせたタラシ長さが狂ってしまったので再調整。
しかしテーパーラインの巻き取りテンションは一瞬緩んだまま投擲せざるを得ない。
何とかなるだろうと思ったのだが、こういう時はだいたいライントラブルが生じてしまうもの。
案の定テーパーラインの途中でパーマしてしまい、その抵抗でシンカーは失速…
一応飛距離は計ってもらえたが、157.75m。納得できない。

残り2投はミスなく完璧に投げる必要があるので、一発の飛距離狙いはお預け。
80%の力加減で、滑らかにロッドを振り切ることに意識を集中した。

第4投目は風がますます強くなり、他の選手の弾道を確認するとコート半分相当を右方向に
流されている。

意識的にコート左半分を狙うと失敗しているので、ここはコートセンターからほんの少しだけ左を
狙い、弾道高さが低くならないようフィニッシュの角度を高くすることを意識した。
スウィング動作の最中、ほんの0.3秒ほどの間の出来事であるが、それが気持ち悪いくらい
ピッタリはまったので、ロッドは最高潮に曲がり理想弾道でシンカーはテイクオフ!



コート左1/3方向に力強く上昇しながら徐々に左からの強風に流されたシンカーは、見事コート
のど真ん中に着弾!
計測結果は170.10mと平凡な値であるが、ロッドの振り切り感と狙い通りの弾道が得られ、
「今日イチ」のベストショットとなった。

ここで油断は禁物。
あと1本マトモな飛距離を出さなければ、全国集計で上位には入れない。

最後の第5投目も慎重にロッドを振り切った。
これも、先の「今日イチ」に匹敵する振りができたのだが、風が強さを増しており170mには少し
及ばず166.74mに。

5投を振り返ると、ちょっとしたミスはあったが無事に3本納得のいく投擲ができて一安心。
3投平均:172.60mで、目標レベルもクリアできたので大満足の一日となった。
あと1ヶ月この調子を維持して、全日本SC選手権は絶好調の状態で臨みたいものだ。

ちなみに、後日連盟から発表された全国集計結果でも準優勝とのこと。
春季通信大会では自身初の全国集計優勝だったので、実は密かに連覇を目指していたのだが。
それでも横風のタフコンディションであったことを考慮すると、準優勝なら上出来だろう。

                      投擲動画


2. 第2戦(10月4日);中四九親善キャスティング大会

続く第2戦;中四九親善キャスティング大会は、中国・四国・九州地区の各協会のキャスティング
愛好家の交流親睦を図るためのイベントとして位置付けされており、全ての種目を一つのコート
で競技が行われる。

もちろん中四九地域協会のクラブ会員と交流があれば、キャスティング愛好家なら所属団体・
協会に関わらず参加が可能なのだが、今大会は中四九地域協会外からの参加者はなく、
中四九地域協会所属の選手71名と大会プロジェクト関係者の方々が広島空港流通工業団地
特設会場に集結した。


ここ数年の大会プログラムでは、最初に普通種目,続いてST種目,最後にポイント種目の順
が慣例化していたのだが、今大会はポイント種目を最初に行い普通種目,ST種目に続くことに。

そうなると出番がくるのはお昼過ぎだろうか。
しばしポイント種目や普通種目を観戦しながら各地の競技仲間の皆様と情報交換。

そんな中で、あるメーカーのテスターもされてる方と思われる参加者が連盟役員の方と口論
まがいの会話をされている。
どうも中には大会の主旨を理解されていない方もいるようで残念…


そんなこんなでようやくST種目の競技が始まった。
そよそよと追い風で絶好のコンディション。

今回こそ180m台の飛距離を揃えたいところだが、あまりそのことを意識し過ぎないよう慎重に
第1投目に臨む。
体が少し右へ開いていたのか、シンカー弾道はコート右2/3方向になってしまったが、ロッドは
十分曲がっていたしリリースタイミングもバッチリ狙い通りでいきなり179.14mの好記録が出た。

思った以上に自分自身の調子は良いようだ。

ところが続く第2投目から少し異変が起きた。
ロッドはキレイに曲がってくるのだが、リリースタイミングが意識していないのに遅れがちに…
弾道はセンターより少し左寄りの低めとなってしまい、飛距離は171.51mとやや不満な値に。

さらに第3投目、症状が悪化してロッドは反発挙動に入っているのにラインキープした人差し指
が握り込まれて離れない…
大引掛けの弾丸ライナーとなり、150.52mの大失投!

折角第1投目で自信がついていたのだが、あっという間に自信喪失…
どうやら意に反して180mを狙って力みが入ったのか、体が前に突っ込んで乗せ遅れしている
ようなので、残り2投はタラシを3cmほど短くして力まず軽く投げることに意識を集中する。

タラシの長さを変えた第4投目はより一層慎重にパワーセーブして投げたのだが、弾道はコート
の右サイドラインギリギリながら無事フェアゾーンに着弾。

180mもいらないからせめて173〜174mは欲しいところだが、計測の結果は170.25m。
コートに入れることだけ狙ったので飛距離はイマイチの数字になってしまった。

最後の第5投目。
ここまでに一応3本をフェアゾーン170mオーバーに揃えているので、サードスコア更新だけを
狙って、第4投目よりは少し力を込めて投擲した。

感触的には結構ロッドも曲がっていたし、リリースタイミングも第1投目と同じところに回復して
いたので175〜176mの飛距離を期待したのだが、計測結果は172.79mと平凡な値に。

これでサードスコア更新は果たせたが、3投平均は174.48mとやや不満な値となってしまった。
今大会の5投を振り返ると、絶好の追い風コンディションだった第2投目と第3投目に痛恨の
ミスをしてしまったのが悔やまれる。

一方で優勝候補の小関選手(北九州協会・投好会)は追い風コンディションの前半セッション
に178.10m〜187.80mの好飛距離を3本揃えており、3投平均:182.22mのブッチギリ優勝。


         小関選手の投擲

そして、第1投目から第5投目まで全くミスなくパーフェクトに171.82m〜176.71mの飛距離を5本
揃えた増田選手(香川協会・観音寺サーフ四季の会)が3投平均:174.68mで準優勝。


         増田選手の投擲

私は辛うじて3位となったが、夏季SC通信大会の好調が維持できていないことが反省点として
残る大会となった。

                      投擲動画


3. 最終戦(10月18日);全日本SC選手権大会

泣いても笑っても最終戦の全日本SC選手権。

仕事が金曜日休業なので近頃の大会直前練習は金曜日に行っているが、今大会2日前の
最終調整では中四九親善キャスティング大会での反省点であるリリースタイミングの安定化も
対策を完了し、ロッドの曲がりも合格レベルで安心を得た。

欲張ってサブロッドの調整までしたので、この大会に向けてやるべきこと,出来ることは全て
やり遂げた充実感のうちに練習を終えた。

あとは大会当日、全てを出し切るのみ。
腰は故障中で治る見込みはないが、信頼性の高いロッドと長年やってきた技術力で、何とか
勝負ができるだろうとこの時は考えていた。


そして大会当日。

予定通り、Bコートの第一部:普通種目(第1種目,第4種目)が終わった後の第二部にST種目
の競技が開始された。

かつては60名前後の参加者がいたST種目であるが、今大会はST-A種目:15名,ST-B種目:
13名の合わせてたったの28名。
ちょっと寂しい気がするが、今大会でははるばる北海道協会から3名ものST選手陣が遠征
参戦して来て下さっていおり競技は以前と変わらずハイレベルである。

競技が始まって間もなく、上位入賞候補の一角;磯野選手(兵庫協会・神戸中央サーフ)の
投擲で184.48mの計測結果コール。
Bコートでは珍しく追い風コンディションでの競技開始となったが、実は予報ではこの後風は
北西(コート左真横)からに変わるはずだ。

このコンディションのまま競技が続いて欲しいものだが、現実はそう甘くない。

そのうち予報通りの北西風に変わり、私の投擲順がきた頃には強烈な横風コンディションと
なっていた。
それでもコートセンターを捉える自信があったので、いつもの練習通りのセットポジションから
投擲動作を開始した。

今回も、第1投目から上出来のスウィング動作でロッドの曲がりも十分実感できていたのだが、
何故かリリース弾道はコートセンターではなくコート右半分のライン。

強い横風でみるみるうちにシンカーは流されて、ファールゾーンに着弾してしまった。
抜けた訳ではないのだが、弾道が右寄りになっている点がちょっと気がかりだったが、次は
何とかセンターを捉えることができるだろうと、まだ自信は失っていなかった。

コートでは投擲順が一巡して、再び磯野選手の投擲でまたしても186.75mの計測結果コール。
今日は完全に磯野選手の独走態勢だろうか?

そんな競技展開を横目に見ながら、自分の投擲に向けて集中力を高め、第1投目の失投から
の挽回策を考えながら次の投擲順を待つ。

そして迎えた第2投目。
センターラインをしっかり見据えて投擲動作を開始すれば、腰のターンと左半身の引き込みが
強くなり、ロッドの曲がりを感じながらリリースタイミングがセンター方向に揃うハズ…
と一気に振り切ったのだが、無常にも弾道は既に右サイドライン一杯のところ。

金曜日の練習ほど腰がキレていない…
敢え無く2投連続でファールしてしまい、もう後がない。

続く第3投目はタラシを約3cm長めに取り、腰のターンが終わった頃にロッドにシンカー荷重が
乗ってくる状態を狙ってみたのだが、この作戦も見事に失敗。
リリース時点で弾道は右サイドラインよりも少し外側へ逸れてしまい、しかもラインが第3ガイド
に絡んでしまっている。
方向性も飛距離も、ダブルパンチのファールとなってしまった。

こうして、昨年の関西オープンキャスティング選手権以来1年半ぶりのストレート3Fで、競技を
終えることとなり、一足お先に荷物整理となった。

今大会の3投を振り返ると、弾道をコートセンターに狙い定めても常に右寄り弾道に集まって
しまったということは、腰がキレてない状態…オーバートレーニング状態…で大会本番を
迎えていたことになる。
やはり腰の調子が8月以降回復している訳ではないので、大会2日前の練習の疲れが完全に
取れていないのか、それとも椎間板が薄くなっているせいで腰が以前のようにキレなくなって
しまったのか。

コートセンターを捉えるためのフォームやセットポジションが全てズレてしまっているようだ。

その辺り、大会後に詳しく分析するためにビデオカメラを回していたのだが、こんな時に限って
そのカメラが故障しており競技のほとんどが撮影されずにカメラは停止したままだった…
ついてない時はとことんついてないな〜と溜息。

一方他選手の競技では、前半の投擲で180mオーバーを連発した磯野選手が第4投目に
178.64mを投げて3投平均:183.29mの好記録で堂々のST-A種目初優勝。


         磯野選手の投擲

中四九親善キャスティング大会でノーミス・パーフェクトキャストで準優勝した増田選手
(香川協会・観音寺サーフ四季の会)が、今大会でも吹き付ける横風をものともしない力強い
投擲で3投平均:172.93mを投げて二大会連続の準優勝。


         増田選手の投擲

中四九親善キャスティング大会の覇者;小関選手は第2投目と第3投目に珍しくサイドライン
を切ってファールというアクシデントがありながらも、堅実に3投平均:171.43mを投げて第3位
入賞となった。


         小関選手の投擲

また、ST-B種目では中華民国の王敏龍選手が昨年大会に続いて2連覇の偉業を達成。
中華民国でのキャスティング大会は、国内大会ではありえないような強烈な大陸風が吹き
付ける中で競技が行われるとの話も聞いたことがある。
そのような状況で鍛え抜かれた王選手だからこその偉業ではないだろうか。


そんな「勝ち組」を恨めしそうに見つめるのは、『呉サーフ特設テント』に陣取った北海道協会
遠征隊(橋野選手,古川選手,中田選手)と大分協会遠征隊(井上選手)、そして地元広島
協会ST-A選手団(堤選手,大本選手,中元選手と私)の3F軍団…
この8名の大半は、今では全日本SCでは毎度お馴染みの仲良しグループであるが、3Fまで
仲良くやらかしてしまった人達。
しかも半数の4名はストレートの3Fをしてしまい、心此処に在らずの抜け殻状態。

さらには広島協会ST-B種目ベテラン勢のうち、平田選手,磯部選手もが3F抜け殻仲間に・・・

広島協会ST選手団では、友田選手(呉投友会)と山根選手(呉サーフ),浜松選手(呉投友会)
だけが過酷なコンディションの中素晴らしい投擲で3投平均の記録を残せたのだが、誰もその
ことを祝う素振りもなく…
3F抜け殻選手団は、口々に「来年こそは!」と挽回を誓ったのだった。

                      投擲動画


4. 今年一年を振り返って…

開幕戦:第2回関西オープンキャスティング選手権大会では参加者3名ながら優勝。

第2戦:広島協会・備後協会合同春季SC通信大会ではST-A種目の広島協会記録を20年ぶり
に更新する好成績で、全国集計でも初優勝。

第3戦:全日本SC協会対抗戦では強豪選手の3Fに救われる形で辛うじて3位表彰台ゲット。

第4戦:北海道キャスティング選手権大会では3位表彰台をゲットしたものの、弾道は右寄りに
集まってしまい2本ファールの苦戦。
この頃から腰に違和感を感じていたのだが、弾道がセンターに持って来れないのは案外
変形性脊椎症で腰のキレがなくなってきていたせいだったのだろう。

そして秋の3連戦。
終わってみれば「腰の不調のせい」と言い訳だけが残る1ヶ月になってしまった。

ならば、と挽回策を練るべく練習に出かけたいのだが、椎間板がなくなった今となってはもう
無理もできないので、「休養も練習のうち」と体を労わってのシーズンオフ練習に取り組み方を
変更する必要が生じてしまった。

このシーズンオフは、腰の状態と相談しながら無理のない練習で、3Fしないよう信頼性の回復
に努めようと思った次第。

また来シーズン、全国のST種目愛好家の皆様とキャスティングが楽しめれば、と思います。