'09年07月26日
Report #070 第21回北海道キャスティング選手権・ST種目参戦記


1. 生まれて初めて北の大地にて投げる!

「北海道にはモンスター級のST種目選手がゴロゴロいる。」
常々そう聞かされながら、私自身その現実を目の当たりにすることなく、長年ST種目でキャスティング
をやってきました。

しかし、このままではただの井の中の蛙でしかない。
一度北の大地で投げてみて、自分自身のキャスティングがどこまで通用するか試してみたい。

そう思うようになったのは、2年程前からでしょうか?

遡ること4、5年前から、広島で開催される全日本SC大会に北海道から遠征して来られる選手の方々
とST種目でともに競技する中で北海道でのキャスティング大会にお誘いを頂いていたのですが、
大会の開催時期や会場までの地理案内など当初は情報もなくまるで「異国の大会」状態。

さすがに初めのうちは、「ただ5回投げるためだけに家計を押して北海道までは…」とためらって
いたのですが、北海サーフ・橋野様より北海道遠征に必要な旅程情報から大会会場までの
アクセスなど全面的にご支援下さるとの大変有り難いお誘いを頂き、本格的に遠征計画が始動
したのでした。

幸い家庭の方も、育児が一段落ついたところでしたし(元々あまり育児には参加していませんが)、
昨年あたりから経済的にも少しばかりゆとりが持てるようになってきたこともあり(2009年がこんな
大不況になるとは予測していませんでしたが…)、めでたく北海道遠征の許可が下りたのが昨年
初夏のことでした。

残念ながら北海道でのキャスティング大会日程と、自身が所属する協会・クラブの行事計画との
干渉もあり昨年の遠征計画は見送りましたが、それにより生じた余裕時間を練習に充てて、万全
の体制で遠征するべく、2009年7月5日の北海道キャスティング選手権大会に照準を合わせました。

「一生に一度?の北海道遠征、行くからには納得の行く投擲をしてくるゾ。」との意気込みで、大会
前日の2009年7月4日午前8時、北海道は苫小牧市の大会会場を目指して自宅を出発しました。


2. いよいよ北の大地へ!

しかし驚きました。
たったの空路1時間半で北海道に到着とは。
普段の家族旅行は車ですし、出張は新幹線なので、飛行機に乗るなんて実に2年ぶり。
しかも北海道は産まれて初めてなので、こんなに「近い」とは思いもしませんでした。

そんな訳で、7月4日のお昼過ぎには新千歳空港に到着し、荷物の受け取りも完了。
まだ自宅を出発してから4時間半も経っていません。
新幹線ならようやく東京駅に到着ってところでしょうか?
到着ロビーには菅原協会長様が既にお越し下さっていました。

菅原協会長様のご案内で、まずは大会会場に隣接する練習場で投げさせて頂きます。
この練習場は、関係メンバーの皆様で会費を地主様に支払われてお借りしているとのことですが、
今回は私も特別に練習会への参加をお許し頂けました。

さらに練習場に到着すると、竿をセットするための三脚から、投擲順を待つ間にくつろぐための
イス,練習シンカー用ビーパー,ST種目用の投擲エリアケージ,冷たいお茶と、何から何まで
お世話になってしまい恐縮恐縮…
(菅原協会長様、橋野様、井森様、北海道の皆様、有難うございました!)

では、と投げさせて頂きましたが、長旅の疲れ?(自宅を出発してからまだ5時間程なのですが…)
か、追い風のコンディションなのに175mしか飛びません。
元々追い風は苦手、ということであまり気にせず明日の大会でミスしないよう注意しながらの練習
に留めましたが、それでも飛んでない…

せめてもの救いは、北の大地での記念すべき第1投目がコートセンターを捉えたことでしょうか?

ドキドキハラハラの「北の大地初投げ」はこれくらいにしとこうか、ということで宿にチェックイン。
この宿から大会会場のアクセスも、菅原協会長様が送り迎えして下さるとのことで、大変申し訳
ありませんがお言葉に甘えさせて頂きました。

この日は、この後北海道協会SC事務局の皆様と、SC大会運営の視察にお越しになられています
青森協会長様などなど、総勢10数名による懇親会にお招き頂き、キャスティング談義,釣り談義が
深夜まで続いたのでした…

3. 大会当日

レポートのタイトル:「ST種目参戦記」ですがようやくここから始まります。



大会会場では、北海サーフの皆様のご好意によりクラブテントに私も混ぜて下さり、三脚やイス,
クーラーボックスまでお貸し頂き、快適に大会参戦&競技観戦をさせて頂きました。

今大会のST種目にはST-Aが8名,ST-Bが6名の合計14名の参加です。
残念ながら、6種目転向やお怪我による欠場とのことで、昨年大会で上位入賞された方々のうち
数名の方が今大会の参加者リストに含まれていませんでした。

昨年大会ではこの2倍程のST種目参加者がいたそうですが、リラックスして自分自身のイメージ
通りに投擲をするには丁度良いくらいの参加人数でしょう。

初めての北海道遠征ですから、自己ベスト級の飛距離を出すとか順位付けを目標にするのでは
なく、3Fしないこと,2F+1ミスして不本意な平均出さないこと,できれば追い風コンディションなり
に180m平均投げたい、それだけを目標に大会に臨みました。

ところで地元での大会では大会プロジェクトから支給されるシンカーに選手自前のビーパーを
テーピング固定してから投擲エリアに行くのですが、今大会では各選手はは自前のシンカーを
ラインに結んでから投擲エリア脇の「検量所」へ行き、シンカー重量を計測の上でビーパーを付け
てもらいます。

シンカーやビーパーの重量コンディションが全員共通となりますし、ビーパーの電源接触不良に
よる不具合も減らせます。

スムーズな競技運営にはなかなか良い方法だなぁと感心していると、あっという間に私の投擲順
が回ってきました。

北海道遠征を想定して昨年秋からミッチリ投げ込みをしてきた愛竿:スピンパワーSC425XX(旧型)に、
全日本SC選手権で3連覇したゲンの良いリール;トーナメントサーフZ45Cをセットし、投擲エリア
へと向かいます。

そして私自身の北海道選手権での記念すべき第1投目は…
思った程の緊張はなく、かなりリラックスして投げることができましたが、リリースした弾道が既に
右サイドライン一杯一杯。
風は斜め左後ろから吹いてますから、これはもう絶望的!
右サイドラインより2m程出てしまったようで、痛恨のファールスタートとなってしまいました。

スプールのライン残量から推測すると180mは超えていたようなので、とても残念です。
でも競技はまだ始まったばかり。とにかく3本コートに入れれば、結構楽しめるんじゃないかな?
とこの時点では楽に構えていたのでした。

ちなみに、今大会への遠征を全面的にアシストして下さっています北海サーフ・橋野選手も同じ
ST-A種目に出場されており、第1投目からスピンパワーXXXをキレイに曲げて184m程飛ばされて
います。
できれば私も180mオーバーを3本揃えて、橋野選手と熱戦を繰り広げたいところですが…

とにかく真っ直ぐ投げよう、飛距離は勝手についてくるだろう、という気持ちで第2投目に臨みます。
ここでは第1投目の反省を踏まえて、スウィング動作の開始をスロースタートに変更し、技術的に
「乗せ遅れ」させるイメージでロッドを振りました。

結果的には狙い通りにコートセンターよりやや左の弾道にシンカーを打ち上げることには成功
したのですが、さすがに「乗せ遅れ」気味の弾道は高度が低く、折角の斜め後ろからの追い風で
飛距離を稼ぐことはできませんでした。
計測結果は173.04m。納得はできませんが、フェアゾーンを捉えることには成功しました。

続く第3投目は、「乗せ遅れ」作戦は止めてセットポジションの調整でコートセンターを捉えるよう
修正を加えました。
スウィング動作は第1投目のタイミングに戻します。
ところが痛恨の抜け弾を打ってしまいまたもやファール!これで2Fの角番を迎えてしまいます。

どうもイメージ通りにロッドを曲げることができていません。
腰のキレがない、というか投擲エリアがいつもの山砂ではなく芝状のためにスパイクのグリップが
良過ぎて足首のターンが途中で止まり、体が右方向へ開いているような印象を受けました。

こういう場面では、スウィング動作の後半に上半身の押し込みで弾道を正面に持ってくる手もあり
かな?との考えから、胴調子で振り始めからガツンと乗ってくる旧型スピンパワーSC425XXよりも、
先調子でスウィング動作の後半にバットが曲がってくる現行型スピンパワー425XXの方が投げ
易いのでロッドチェンジすることに。

ところが…
現行型スピンパワーのトップガイドと#2ガイドの位置が微妙にズレてしまってるではありませんか!
自宅を出発する前には異常は見られなかったのですが、移動中に何らかの影響でガイドを固定
しているエポキシが固定力を失ってしまったようです。

ロッドチェンジ作戦は中止。このまま旧型スピンパワーで投擲することになりました。

そうなると、コートセンターを捉えるための次の方策は…頭の中をもう一度整理します。
次に取った策は、セットポジションを第3投目よりもさらに浅い位置にシフトし、併せてロッドの構え
位置を頭上方向に若干持ち上げて、オーバースロー気味に振り抜くよう微調整。

これで気持ち的にセンターを狙えば、今日の調子ならセンターラインと右サイドラインの間辺りに
シンカーを打ち上げることができるハズです。

ただし、タメとシャクリと押し込みのバランスが第1投目のままに再現しなければ狙い通りの弾道は
打てませんから、慎重にスウィング動作を開始します。

打ち放ったシンカーはほぼ予定通りの弾道でテイクオフし、余裕でフェアゾーンを捉えています。
やっとイメージ通りのキャスティングができた〜と安堵感を覚えます。

計測結果は、目標飛距離には程遠いものの178.01mと自己ベストが出せました。
しかしまだ角番から脱出していません!油断大敵!!!

最後の第5投目、フェアゾーンを捉える自信は付いたのでもう小細工は必要ありませんが、念の
ためセットポジションを第4投目より数cm浅めに微調整。
振り抜き動作も全く同じイメージで始動からフィニッシュまで、一瞬の出来事ですがミスなくやり
遂げました。

第4投目と同じくらい飛んだ手応えを感じていたのですが、計測結果は175.39mと若干低下。
これくらいは風コンディションでバラツキがでても当然でしょう。

結果3投平均は175.48mとなり、目標の180mには4.5m程足りませんでしたが、めったにない2F
角番からのフェアゾーン3本入れは日頃の練習で身につけた技術が大いに活かせました。
そういう悪戦苦闘もまたキャスティングが楽しくなる一面ですし、また来年の大会への課題として
練習に取り組む目的,目標が整ったということでしょうか?
(ってやっぱり来年も北海道来るつもりしてるし。)

大会成績では、第1投目から第4投目まで素晴らしい投擲でキッチリ180mオーバーを3本揃え、
3投平均:182.24mの記録で橋野選手が堂々のST-A種目優勝!

種目最長:189.80m,3投平均:176.63mを投げた北海サーフ・覚知選手がST-A種目準優勝となり、
私が3位、北海サーフ・船橋選手が3投平均:169.60mで4位と、北海サーフテントのST-A種目陣
全員が入賞することができました。



また、ST-B種目では函館サーフ・服部徳彦選手がST種目総合でも2位となる3投平均:180.29m
の好記録で優勝しましたが、北海サーフ陣は中田選手が3投平均:165.91mで4位,古川選手は
3Fと、残念ながら入賞を逃してしまいました。



ST種目の競技が終わると、北海サーフテントはST-A種目選手の祝入賞会兼ST-B種目選手の
反省会会場となり、和やかにキャスティング談義に花が咲きました。

4. まだまだ競技は続きます

続いて競技コートでは、第二グループ:第3種目,第4種目,女性種目と、第三グループ:第2種目,
第6種目、第四グループ:第5種目-A,第5種目-Bの競技が続きます。

各種目とも広島での全日本SC大会よりも一層ハイレベルの熱戦が繰り広げられ、投擲を重ねる
毎に順位が入れ替わり、しかも飛距離がハンパではありません!

◎第二グループ

第3種目優勝の札幌サーフ・森山選手は、本州ではめったに出ない150mオーバーを連発!
左斜め後方からの風にシンカーを乗せて、コート右サイドライン一杯に着弾させる超・テクニック
はスゴイの一言に尽きます。

第4種目は第5投目に絶好の追い風コンディションとなり、各選手が自己ベストを更新して順位が
めまぐるしく入れ替わります。

札幌サーフ・菅原選手は2Fからの第5投目に痛恨の抜け弾を打ってしまい、投擲エリアから一歩
足を踏み出そうかという体制でしたが…
菅原選手の足が投擲エリア内に戻るとほぼ同時に、コート側の副審が白旗を掲げています。
シンカー着弾点は右サイドラインのスレスレ内側で、計測結果176.91mにより3投平均が180.23m
に確定し暫定トップに!

さらに圧巻は、第4種目最終投擲者の札幌サーフ・大内選手が、最後の最後に182.10mを投げて
大逆転準優勝になった瞬間でしょうか。

私自身はちょうどこの時に飛距離データをパソコン入力する担当でしたから、逆転に次ぐ逆転を
モニター見ながらニンマリ楽しませて頂きましたが、北海サーフ・太田選手は表彰台ラインに2m強
及ばずの3投平均:174.49mで第5位となりました。

◎第三グループ

第2種目の表彰台ラインは220m前後ですし、広島の大会とはスウィングスピードもリールの音も
全く違います。
北海道の第2種目上位選手のスウィングは、まるで15号種目か25号種目を見ているような錯覚を
覚える程に速く、さらにラインを放出している最中のリールはほぼ『無音』です。

第3位の札幌サーフ・吉田選手までが210mを遥かに超える飛距離で、上位3名は全く異次元の
キャスティングでした…

ところで北海サーフでは親分的存在の高橋選手が第2種目に出場されていますが、何故でしょう?
投擲を終えられてテントに戻って来られると『無言』です。
北海サーフテントのST選手一同で、高橋選手の投擲に熱い声援を送ったのですが…
表彰台ラインから10m程引き離されての3投平均:207.88mで第4位となりました。
広島の大会で207m台なら十分表彰台に上がれる飛距離なのですが…

第6種目も優勝争いは230m台と、第2種目同様私にとっては初めて目の当たりにする異次元の
キャスティングでした。

◎第四グループ

第5種目は風速が追い風換算で3m/sを超えたために参考記録となりましたが、200mオーバーの
熱投で優勝争いが第5投目まで続き、出場者だけでなく見守る人々も大いに盛り上がりました。

第5種目-Bでは、函館サーフ・服部弘司選手が3投平均:180.80mで優勝されましたが、第5種目
総合でも第6位に相当する力投はダイナミックで見応えがありました。


以上で競技種目は事故もなくすべて終了し、参加者全員によるスピーディーなコート撤収と、
会場のゴミ拾いを行った後、和やかな雰囲気で表彰式が行われました。

5. むすび

今回、初めて北海道キャスティング選手権大会に参加させて頂きましたが、
菅原協会長様、橋野様はじめ関係者の皆様に多大なるご支援を頂きましたお蔭様で、
とても有意義で得ることの多い3日間を過ごすことができました。

大会前日の練習場や懇親会会場,大会会場では、たくさんの方々から今後のキャスティング
にも活かせる有難いお話をたくさんお聞かせ頂けましたので、来年の大会ではもっと飛ばせる
ようさらに精進を重ねたいと思います。

この場をお借りして、お世話になりました皆様に心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。