'09年05月26日
Report #069 2009年全日本SC協会対抗戦・ST種目レポート


1. プロローグ

2009年キャスティングシーズンも春季最大イベント;全日本SC協会対抗戦を迎えた。

この日に備えて、開幕戦;関西オープンキャスティング選手権から広島協会春季SC通信大会と
段階的にフォームやタックルチョイスの見直しを行い、飛距離アップとコントロール性の安定化に
取り組んできた。

今大会で、春のキャスティングシーズンも一区切り。
長らく全日本大会ではスランプ状態的な飛距離に落ち着いてしまっているが、今シーズンは先の
開幕2戦でまずまずの手応えを得ていたことから、今大会では完全復活を目指していたのだが…

結果的には、大会が近付くにつれ悪い癖である前方突っ込み型のフォームが再現してしまい、
折角3月後半から4月下旬にかけて飛距離とコントロール性で大幅に改善が見られたフォームも
何時の間にか過去のものとなってしまった。

大会直前にはそのせいでコントロール性に黄信号を通り越して赤信号が点灯。
主な症状は「抜け」による右ファールと、次いでパーマやガイド絡みなどの「ライントラブル」が
頻発し、練習すればするほど事態は悪化…
とうとう大会前日にはフェアゾーン投擲率は50%を下回ってしまった。

今大会の趣旨は、所属協会から4人選出されたチームにより総合力を競う団体競技になる。
ここで3Fしたのではチームメイトに大変な迷惑をかけてしまう。

まして私自身は今年から移籍したばかりの身でありながら、協会Aチームを任されているだけに
失敗は絶対に許されない。

4月の絶好調期には「BORONプロスカイヤー競技スペシャル」が気持ち良く曲がり、飛距離的にも
十分満足できる数値を連発していただけに、大会でも予定通り「BORON」で投げて絶好調期の
実績に賭けるか?

それとも、予備ロッド的に一応の投げ込みを重ねてきている「スピンパワーSC425XX」で、
コントロール性を最優先した投擲をするか?

あるいは、定常的には投げていないが数ヶ月に一度思い出した頃に振ってみると意外と良く飛ぶ
「BORONプロスカイヤーPrototype」をそれこそ3ヶ月半ぶりに振ってみて大博打にでるか…

大会前日の午後には随分悩んだ。

結局結論は出ないまま思考はタイムリミットとなったため、止むを得ずロッドは3本とも大会会場へ
持って行くことにした。

あとは明日朝の気分次第で、リールをセットする瞬間に右手が掴んだロッドで投げることにしよう。


2. いよいよ大会当日

実はそんな状況(3Fするかも知れない)であることを、クラブの渡辺会長に話すと…
「入れにいっちゃぁいけない。討ち死にしても良いから、思いっ切り振ってきなさい!」と強いお言葉。

このアドバイスに後押しされて、予定通りに「赤BORON」を手にする。
やるだけのことはやったのだから、それを信じて投げるだけだ。

投擲順は出場選手57名中38番目から8名の広島協会選手団が続く。
広島協会選手団の先頭が私で、福岡選手,友田選手,平田選手までがAチーム。
続くBチームは、中元選手,磯部選手,浜松選手,堤選手の順となるが、投擲順が回ってくるまで
小一時間かかるため、その間に集中力を高めてストレッチも十分にしておく。


そして迎えた第1投目。まずは先頭の私がきっちりフェアゾーンを捉えなければならない。

投擲エリアは無風に感じるが、全体的に飛距離はあまり伸びていない模様。
コート側はいつものように左斜め前方からそよ風が吹いているのか?

まずは力まないことにだけ意識を集中して、コートセンターを狙って軽くロッドを振ってみた。

すると前日の不調は嘘のように意外と楽にロッドは曲がり、コート右半分に開いてはいるが理想的
弾道にシンカーを打ち上げることができた。
ところが横風の影響かシンカーはみるみるうちにコート右サイドライン側へ流されていく。

計測員が走り寄る方向では「フェア」なのか「ファール」なのか判断がつかず一瞬ヒヤッとしたが、
幸いシンカーはギリギリセーフでフェアゾーンに着弾していた。
計測の結果は171.00m。
風速コンディションの割りに飛距離が若干不足しているが、一瞬ガイドにラインが絡んだようだ。
それでもコートに入ったので、少し自信が取り戻せた。

続く広島協会選手の投擲を見守るが、一昨年あたりから飛距離を伸ばしてきている福岡選手と、
珍しくベテラン勢の平田選手,浜松選手がファールしてしまった以外は、各選手とも春季SC通信
大会での飛距離をほぼ再現している。

第1投目が終わると適度に緊張感も和らぎ、各々リラックスして次の投擲に備える。


次の投擲までには約1時間の待ち時間となるが、この間に体がやや硬くなったか、第2投目の私は
ロッドを振り始めたところで力んでしまった。
スウィング動作の最後にロッドを押さえ付けるように引掛けてしまい、弾道はコート左半分へ超低空
弾丸ライナーとなってしまった。
フェアゾーンに入っているが、飛距離は163.60mと不満な値に。

続く福岡選手は、ファールこそしなかったがガイドへのライン絡みで失速、128.41mとなり残り3投で
挽回が必要となってしまった。

一方で友田選手からの広島協会選手団は絶好調。
各選手とも満面の笑みで引き揚げてくるところを見ると、良い飛距離が出た模様。

失投を演じた私は、この頃から徐々に自分の世界にどっぷりはまり込むことになり、チームメイト
の活躍がじっくり見られなくなってきた…


勝負所の第3投目には、先の失投を打ち消そうとコートセンターを狙ったのだが、押さえ込んで
ライナー弾を打った次の投擲は抜けてしまうことが多いことは練習データでも明確に現れている。
そして、この時も例外なく見事に抜けてしまい、ファールとなった。

既に強豪選手たちは180mオーバーの好記録も出ているだけに、団体,個人ともにTOP3を狙う
には残り2投は確実に自己ベストの投擲が必要となった。

ここで完全にチームメイトの投擲を応援する余裕がなくなった。ごめんなさい。


競技最終セッションで計測当番に当たっている私達は、第4投目,第5投目を立て続けに投擲する
ことになるのだが、このおかげでインターバルが短くなり集中力や体のキレを持続させ易くなる。

第4投目からは風速も強まり、風向きさえ運良く追い風になればかなりの好飛距離が期待できる。
しかしながら私達広島協会の投擲順が回ってくると、風向きはクルリと回って右からの真横風に…

何とか180m台の飛距離が欲しいので、第1投目のように弾道がセンター高めに上がるよう力まない
ことにだけ意識を集中して投擲動作に入った。

ところがやはり、力まないよう意識はしていても180mを意識してしまったので、フォームは4月の
絶好調期よりもかなり前方に突込んだ形になり、シンカー荷重がロッドの芯に乗ってくるタイミング
がやや遅れてしまった。

第4投目,第5投目ともに弾道は理想的高度よりも若干低めとなり、目標の180mには全く届かず
179.26mと177.26mとやや不満の残る値となり、私の3投平均は175.84mに確定。

残念ながら4月の絶好調は幻だったのか?自分自身納得のいく投擲が一本もできないまま競技
を終えることになった。


それでも広島協会チームは競技後半に素晴らしい追い上げを見せ、Aチームでは福岡選手が
172.48〜179.06mを2本入れて3投平均:159.98m,友田選手が167.22〜173.41mを3本入れて
3投平均:171.02mに。
Bチームでは中元選手が157.15〜161.78mを3本入れて3投平均:160.04m,磯部選手が148.87〜
163.85mを3本入れて3投平均:157.26m,堤選手が159.83〜162.27mを3本入れて3投平均:160.70m
の記録が残せた。

残念ながらベテラン勢;Aチーム・平田選手とBチーム・浜松選手が3Fしてしまい、団体戦TOP3の
目標は成し得なかったが、チーム全員が実力を出し切れば団体戦ワン・ツー独占も夢ではないと、
早くも来年の大会に希望が持てたのだった。


さて、あとは計測員として強豪選手の投擲をじっくり拝見しながら飛距離をチェックしておこう。

団体戦,個人戦ともに優勝候補となる北海道協会チームはさすがにST王国とも呼ばれるだけに
スウィング,飛距離ともに強烈で圧倒的。
池田選手,井森選手,菅原選手ともに本州の選手とは桁違いの初速と弾道角度で、吹き付ける
横風にも全く関係なく183〜184m台の飛距離を出している。

また、毎大会の個人戦では必ず上位に入賞している北九州協会・小関選手は第4投目,第5投目
に186m台を連発しており、今大会個人戦優勝は確実な模様。

私がレーザー計測を担当していた第4投目中盤〜第5投目最終までの間には、他にも180m台を
投げた選手が数名いたことから、この時点では広島協会の団体戦上位入賞も私自身の個人戦
入賞も全くの圏外脱落か、と思っていたのだが…


3. 競技も終わり表彰式

こうして2009年の全日本SC協会対抗戦は事故もなく無事終了。
出場選手の皆様の協力を得て、迅速にBコートとネットの撤収作業も完了。
プロジェクト協会員としては、事故なく無事に大会が終えられて一安心。

表彰式が始まり、私は表彰台に上がる練習仲間,競技仲間の勇姿を撮影しようと、カメラを手
に本部席脇で暢気にシャッターを押していたのだが…

団体戦表彰に続いて、個人戦ST種目の表彰が始まった際にも、特に何も考えず3投平均:185.83m
で優勝した小関選手,3投平均:182.90mで準優勝の池田選手と、3位に上がる選手を写真に収め
ようとカメラアングルを狙い構えていた。

すると、「3位、広島協会・呉サーフ、真鍋」のコール。
え?何かの間違いでは???
と半信半疑で、ちょっと間抜けなお顔での3位表彰台登場となってしまった。

まさかあの飛距離で表彰台に上がれるとは…想定外でしたが、競技後半に180m台を投げていた
選手の数名は3Fしていたとのことで、私が運良く表彰台に上がれたようだ。

さらに続いて4位入賞に広島協会のコール。
チームメイトの友田選手が、全日本SC大会では過去最高位となる4位入賞となった。

しかしまだまだこの結果で喜んではいられない。

ST-B種目で日本記録となる3投平均:181.64mで優勝された北海道協会・菅原選手が、ST種目
総合では3位となるため、実質的には私は4位,友田選手は5位となる。

もっともっと練習を重ねて精進せねば。

しかも私自身の次の出場大会は7月5日の北海道選手権である。
北海道選手権というと、ST種目では事実上の日本一を決定する大会になるだろう。
それくらい北海道のST種目はハイレベルであり、そこで今大会のような失投は許されない。

これから一ヶ月、4月の好調期を越えて飛ばせるように、また練習練習の週末になりそうだ。