'11年10月26日
Report #084 2011年全日本SC選手権 ST種目参戦記 


1. 2011年SCシーズンの振り返り…

3月6日の関西オープンキャスティング選手権で開幕以降、5月15日の協会対抗戦までは
超・愛竿:BORONプロスカイヤー・プロトタイプで参戦したのだが、自身の腰の状態によって
飛距離や投擲精度にムラがあり常に万全とは言い難い前半戦を過ごした。

結果的には協会対抗戦で体調管理とフォーム修正の効果が現れ、3投平均:177.84m,
最長:180.05mと満足できる結果を残すことができた。

15年間このロッドで最も多くの大会を投げてきたが、腰の状態は不安定さを増すばかりで
今後も回復の見込みは全くない。
腰の状態を今よりも悪化させないためには、このロッドを一旦封印して反発挙動が少しでも
穏やかなロッドに持ち替える方が長くキャスティングを楽しめるとの考えに至った。

そこで6月からはサンダウナー・コンペティションU40-425とスピンパワーSC425XXに持ち替え、
仕掛けとリリースのタイミングがBORONプロスカイヤーから大幅に変わることに対応するよう
フォームも若干修正を加えた。

7月末には飛距離とフェアゾーン投擲率で2本のロッドのどちらが優位か比較した結果、
スピンパワーSC425XXの飛距離がサンダウナー・コンペティションU40-425の飛距離よりも
3〜6m上回ることから、2011年SCシーズン後半戦の本番ロッドに昇格。

8月からはロッドをスピンパワーSC425XXに絞り、さらに投擲精度の安定性を増すために
フォームを修正した。

2009年,2010年と連続で全日本SC選手権ではストレート3Fという不名誉な結果に終わって
いるのだが、両大会とも左横風に流されてフェアゾーンを逃しただけでなく腰がキレずに
体がコート右サイドライン方向へ開いた状態で投擲動作を終えていた。

今年の全日本SC選手権は絶対に3Fで終われないと、キレない腰でもシンカー弾道を正面
まで引張れるようフォームの修正を行ったのだった。

9月に入り広島協会通信大会,北九州協会通信大会でフォーム修正の成果を5投限りの
実戦投擲でチェック。

この時点ではまだ5投中1〜2投しか満足な投擲ができず、あとの3〜4投は腰をかばい過ぎて
引掛け気味の弾道となったり、逆に腰が逃げて抜け弾を打ち上げたりと反省点が多く残った。

10月に入り、仕上がりチェックの中四九親善でも安定度はそれほど向上せず5投中3投しか
満足な投擲ができていない。

少しの焦りがさらに事態を悪化させ、10月9日の最終調整では仕掛けるタイミングが無意識の
うちに早くなり抜け弾を連発。
これでは左横風が吹くと絶望的ではないか?

練習の後半には仲間からのアドバイスもあり、何とか仕掛けるタイミングを思い出して満足の
できる飛距離が揃ったところで打ち止めとした。
あとは大会当日に腰痛が出ないことを祈るのみか。

ここで5月の協会対抗戦以降の練習データを客観的に分析したのだが、飛距離が右下がりに
低下しているように見えなくもない。
それとも直近の2か月間だけを眺めると緩やかな上昇傾向と捉えることもできるか?



いずれにせよ、極端にスランプ状態という訳ではなく気持ち次第で上昇も下降も起こり得る
という状態だろうか。
そんなことを悶々と考えていたら全日本SC選手権当日、10月16日を迎えた。
ところが、よりによってこの日は朝から腰にチクチクと軽い痛みが走っている…
何とか5投持ってくれよと腰に鎮痛発布剤を貼って自宅を出発した。

2. まずは第一グループ:第1種目と第3種目の観戦…

いつものように、大会会場である広島空港流通工業団地特設会場にはA,B2面のコートが
設営され、Aコートでは第2種目,第4種目,第5種目,第6種目,女性種目,ポイント種目が、
Bコートでは第1種目,第3種目,ST種目の競技が行われる。

私の出場するST種目はBコート第二グループなので、まずは第一グループ:第1,第3種目の
計測と観戦で待ち時間を過ごす。

第一グループの競技では無風コンディションからスタートし、徐々に西風(左横風)が強くなる
のが例年のパターンになっているが、やはり今年もその展開となった。

第1種目は7号ライン,第3種目は5号ラインの通し仕様なので、西風が強くなるとシンカー弾道
がコート右方向へ流されることになる。

私自身は計測第1班のレーザー担当なので投擲選手の真後ろからシンカーの行方を目で追う
のだが、今大会では競技開始直後からシンカー弾道が5〜8mほど流されているではないか。

この調子だとST種目の競技が始まる頃には何m右へ流されることになるのだろうか???

そんな不安を感じながら第一グループの競技を観戦したが、ここ1年ほどの間に第3種目への
参加選手が増えたことと5号ラインで15号シンカーを振り抜いても切れ難い強靭なラインが
発売されたことの相乗効果であろうか、競技は序盤から150mオーバー連発の熱戦となった。

結果、三戸庸行選手(広島協会・広島リールクラブ)が第5投目に渾身の投擲で種目最長:
155.11mを投げ、3投平均:152.74mで日本記録更新優勝の快挙を成し遂げられました。


 三戸選手の第5投目投擲連写画像

三戸選手へのお祝いもそこそこに、いよいよ次は第二グループ:ST種目の出番となった。
我々広島協会ST選手団も三戸選手に続いて好記録を目指さなければ。

3. いよいよST種目の競技開始

続いて第二グループ:ST種目の競技が始まった。
今大会は投擲順が従来とはやや異なり、ST-B種目(14名)が一巡してからST-A種目(13名)
が投擲を行うので、いつもよりも入念に腰のストレッチとタラシのセッティングなど入念に準備
ができた。

第1投目をフェアゾーンに投げることは後の投擲への影響も考慮すると特に重要であり、
今大会は3年ぶりに3投平均記録を残すことを最大の目標にしていたため、これまでの
キャスティング人生を振り返っても最上級の集中力で投擲動作に入った。

この集中力がもたらしたのかどうかは定かではないが、練習でも体感できないくらいに気持ち
良いシンカーの乗りとロッドの振り抜き感でリリースできた。

 
写真左:シンカー荷重が最も乗った瞬間    写真右:リリースタイミングまで我慢時の瞬間

シンカー弾道は狙い通りにセンターを捉えており、左横風に流されても十分な余裕を持って
フェアゾーンに着地。

計測の結果は169.24mと横風コンディションとしてはまずまずの値だったが、全日本SC選手権
で3年ぶりのフェアゾーンスタートができたのが何よりも嬉しかった。

続く第2投目。

ここも落ち着いて投擲動作に入ったつもりだったのだが、練習通りのセットポジションではまだ
体がコート右2/3方向に開いてしまっており、シンカーはコート右サイドラインぎりぎりのところに
着地。


第2投目の投擲:体が少し右へ開いてしまった


抜け弾ではなく乗せて振り切った方向がやや右寄りとなっただけなので、飛距離は174.82mと
十分に満足できる値だった。

何とか最初の2投が大きなミスもなく投擲できたので一安心である。

第3投目は先の投擲で体が右に開いた点を補正したセットポジションから投擲動作に入ったが、
悪い癖が出て体が前方に突っ込んでしまい理想弾道より低めのライナー弾を放ってしまった。

幸い弾の勢いは先の投擲と同等レベルだったので、飛距離のロスは最小限に抑えることが
できたようだ。
計測の結果は172.11mで、暫定の3投平均は170mオーバーを確保できた。

残りの2投でもう1ランク上の飛距離が出せるようさらに集中力を高める。

そして第4投目。
投擲動作に入る際の左足のステップ方向と量に意識を集中し、体が前方に突っ込まないよう
慎重にスウィングを開始したのだが、シンカー荷重が徐々に乗ってきたところで腰にピリッと
痛みが走った。


第4投目の投擲:このあたりで既に腰の痛みが…

この症状が出るとフィニッシュでの右足の蹴り込みができないため、体がコート正面まで向いて
来ずにコート右ライン方向に開いたままでラインをリリースしてしまい抜け弾のファールに。

この痛みが一時的なもので消えてくれれば良いのだが…

第5投目の順番が近付いた時点でもまだ腰にピリピリと痛みが残る。
また抜けるかも…と不安を感じたが、ここでまたしても御調山練習場の師匠からアドバイスが。

「落ち着いてゆっくり行け〜。」

投擲動作の開始を意識的にいつもよりゆっくりと仕掛ければ、何とかあと1投痛みを感じずに
投げれるかも…

その可能性に賭けるしかない。
最終投擲は練習でも試したことがないレベルまで投擲動作の開始をスローモーションに変更
したのだが、その修正が見事に機能して腰に全く痛みを感じないままにロッドが振り切れた。

シンカー荷重の乗りは練習で体感したことがないくらい完璧な状態だったし、ラインリリースする
瞬間の人差し指の弾きも理想的弾道を完璧に捉える位置で決まった。
俗に言う「今日イチ」の投擲ができたのだ。

  
第5投目の投擲:すべての動作が完璧の「今日イチ」

計測の結果は180.43mと、このコートでの自己記録(182.47m:2005年全日本SC協会対抗戦)
と比べても2mしか落ちていない。
十分満足な飛距離で今大会を締めくくれた。

投擲直前に的確なアドバイスを下さった師匠のお蔭です。有難うございました。

結果、3投平均:175.79mでST-A種目第3位に入賞。
実に2009年5月10日の全日本SC協会対抗戦以来、2年半ぶりに全日本SCでの表彰台ゲット
で2011年のキャスティングシーズンを終えることができ、大満足です。


2年半ぶりの第3位入賞、純粋に嬉しいです。

4 むすび

今大会をもって2011年キャスティングシーズンも終了し、約5カ月間のオフシーズンに入ります。

来シーズンもまた楽しくキャスティング競技に参加できるよう、腰の調子と相談しながら研究と
精進を重ねたいと思います。

最後になりましたが、今大会でプロジェクトいただきました香川協会役員と関係者の皆様,
全日本サーフキャスティング連盟役員の皆様には大変お世話になりましたこと、心よりお礼を
申し上げます。