'17年03月27日
Report #094 第5回九州オープンキャスティング選手権 ST種目参戦記 


1. 冬季オフの練習成果をチェック〜2017年シーズン開幕用タックルチョイス

昨年11月の全日本SC選手権大会以降、冬季オフの期間中のほとんどの練習を
魚心観・HYBRID HERITAGEで投げていたのだが、2月下旬の練習では大会前の仕上がりを
チェックする目的でロッドを21年来の超・相棒:リョービ・BORONプロスカイヤーPROTOTYPE
に持ち替えてみた。

  
       魚心観・HYBRID HERITAGE        リョービ・BORONプロスカイヤーPROTOTYPE

BORONプロスカイヤーPROTOTYPEは10年以上もの期間ガイドセッティングやリールシート
位置の変更をしておらず、組み合わせるリールを変更してもそれなりのポテンシャルを発揮
できる点で信頼性が高いため、NEWロッドでの練習の仕上がり度合を評価する際には
ベンチマークロッドとして活用している。

今冬季オフ練習では、約2年続いているスランプからの脱出を目指してフォームの修正を
行ってきたが、飛距離が回復傾向にあることを実感し始めていたのでその出来栄え確認を
行うべく、BORONプロスカイヤーPROTOTYPEで実投比較を行った次第。

結果は予想とはやや異なるもので、魚心観・HYBRID HERITAGEのフェアゾーン投擲精度や
平均飛距離自体は冬季オフ練習でのデータと比較しても上昇傾向であることは間違いない
のだが、それ以上にBORONプロスカイヤーPROTOTYPEでの飛距離が1〜2m優れていた。

年月日 ロッド 上位60%平均飛距離 フェアゾーン投擲率
2017/2/18 魚心観・HYBRID HERITAGE 167.40m 82%
2017/2/25 魚心観・HYBRID HERITAGE 159.78m 60%
リョービ・BORONプロスカイヤーPROTOTYPE 160.68m 80%
2017/3/4 魚心観・HYBRID HERITAGE 166.43m 92%
リョービ・BORONプロスカイヤーPROTOTYPE 168.55m 70%
2017/3/10 リョービ・BORONプロスカイヤーPROTOTYPE 167.69m 50%

BORONプロスカイヤーPROTOTYPEで飛距離が伸びた一方で、ここで問題点が一つ増えた。
愛機:キススペシャル コンペエディションをBORONプロスカイヤーPROTOTYPEに
組み合わせた際に、突如としてバックラッシュの発生率が魚心観・HYBRID HERITAGEでの
平均10%の2倍程度に上昇したのだ。

このバックラッシュであるが、これまでキススペシャル コンペエディションを3シーズン使用して
得た知見として、「ロッドが曲がれば曲がるほどバックラッシュし易くなる」という現象から、
スプールに巻かれたテーパーラインの最後の1周がラインテンションによってスプール表層の
2号ラインの隙間に潜り込むことでバックラッシュを引き起こしていると推察している。

そこで、対策としてスプールに巻かれたテーパーラインの最後の1周が2号ラインを直接圧迫
しないよう巻き方を工夫することと、競技用2号指定ラインのヨレの除去を徹底的に行い
大会に臨んだ。

このキススペシャル コンペエディション、オーナーがマシンと対話して最高のコンディションを
作り上げていくことが重要であり、使いこなすまでに沢山の失敗をしてその倍の数の改善を
重ねてようやく飛距離と信頼性が得られるようなリールであると考える。

スプール受けに装着するワッシャーに関しても、リールの付属品だけでは調整代がラフ過ぎる
ため、0.05mm単位で調整可能な極薄ワッシャーを自作して使用している。

オートマチカルに飛距離が稼げるタックルではなく、イジってツツいて微調整を重ねてようやく
「自分仕様」に仕上げてきた結果として納得の飛距離と投擲精度が得られる
キススペシャル コンペエディションは、所有する30数台の投げ専用リールたちの中でも
最高にキャスティングが楽しめるリールだと惚れ込んでいる。



大会仕様のタックル整備も完了し、いよいよ2017年キャスティングシーズンが開幕する
北九州市若松区響灘埋め立て地特設会場へ。
片道約350kmの遠征に、3月18日のお昼に福山市を出発した。

2. いよいよ2017年シーズンが開幕



明けて3月19日、午前7時より選手の皆さんで協力してコートを設営した後、8時30分から
第1グループ:女性種目,ジュニア種目,ポイント種目の競技が開始。

未来のキャスティング選手になってくれるであろう少年たちの投擲で会場は歓喜に包まれて
いたが、続く第2グループは私が参加するST種目の出番である。



急いでタックルの準備を進めて、もう一度競技用2号指定ラインのヨレ除去を行う。
そしていよいよ9時30分からはST種目の競技が開始された。

2017年キャスティングシーズンのスタートとなる第1投目はなるべくファールしたくないもので
あるが、左真横から1.5〜2.0m/sの風が吹いているだろうか。
コート右半分よりも内側に投げないとシンカーがファールエリアまで流されそうだが、
残念ながら私の第1投はリリース弾道がすでにコート右ライン一杯の方向。



計測員が駆け寄りシンカーを確認されたのは、コート右ラインからほんの1m位の所だった
ようでファールの判定だった。

続く第2投目はシンカーと竿先,軸足の置き位置を微調整して、リリース弾道がコートセンター
を捕らえるよう修正を行う。
ここでコートセンターよりも左方向を意識的に狙うと極端に低いライナー弾道を放ってしまう
ことが多いので、投擲動作に入るとコートセンター上空だけを見つめてリリースタイミングを
計った。



結果、リリースしたシンカーはコートセンターを捕らえて理想的高度に上昇。
スプールから放出されるラインのスピードや音にも異常はないので、ミスなく投げることが
できたようだ。

計測の結果は、166.28m。
左横風コンディションであることを考慮すると、十分満足できる値だ。

ここで、スプールを交換してラインの傷や巻き取り時に再びヨレが含まれていることによる
トラブルへの事前対策を行う。

第3投目になると、左真横から吹き付けていた風が斜め後方からに変化してきたようだ。
もしかすると、170mオーバーの記録も期待できるかも・・・と少し欲が出た。

投擲動作の一つ一つは第2投目と同じように冷静にできたつもりだったのだが、リリース直後
のシンカーがほんの1秒ほどの短時間ではあるが姿勢を乱してしまった。

ロッドを振り切った感覚では170m行ったか?!と期待したのだが、やはりシンカーが姿勢を
乱した分飛距離は落ちた模様で、計測結果は166.07mとロッド1本分ロスしてしまったようだ。

ここで計測員の交代が入り、主審を務められていた大先輩から「シンカーが少しだけど暴れて
いるのが惜しいね。肩に力が入っているから、少し力を抜いて投げてごらんなさい。」と貴重な
アドバイスをいただいた。

この言葉でかなり冷静さを取り戻せた。

第4投目以降は投擲動作に入る前に、少し・・・1秒か2秒くらいだろうか・・・間合いを取り、
肩から腰にかけての筋肉を一旦弛緩させた。



スウィング動作を開始してからは、力を抜くこと無くシンカーに加速を与え、リリースポイントを
逃すこと無くコートセンターを捕らえることに成功したことで、第3投目時以上の初速でシンカー
は理想的弾道に上昇した。



幸いにも風向きが斜め後方からに変化していたこともあり、シンカーは失速することなく着弾
までの滞空時間がかなり長く感じられた。

計測結果は、第4投目が172.24m、最後の第5投目が174.25mと期待以上の記録を残すことが
できた。

大先輩からのアドバイスのお蔭です。

結果、久しぶりの170m超えとなる3投平均:170.92mで2014年の第3回大会以来のST-A種目
での優勝ができた。

記録的にはまだまだ完全復活とはいえないが、2015年から2016年シーズンの大会成績と比較
するとスランプ脱出をうかがわせる飛距離が出せたことで、4月から始まる全日本SCイベント
に向けて勢いを付けることができそうだ。

この調子が維持でき、さらに飛距離を伸ばすことができるよう、また練習に明け暮れようと思う。