2013年01月04日記録開始
                                                     2013年01月10日Rev.02
                                                     2013年01月21日Rev.03

Report #088  KWガイド-6点(Ver.01)テスト開始! 
       テストロッド:リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425



1. ガイドセッティングの変遷とKWガイドに期待するポイントは

私自身のキャスティング競技用ロッドのガイドセッティングの変遷は、以下の通り。
@1991年〜2002年:ハイスピンダー5点付け(SF-16F,SVSG-16,20,HVSG-25M,30H)
A2003年〜2004年:ハイスピンダー6点付け(SF-16F,SVSG-12,16,20,HVSG-25M,30H)
B2003年:ローライダー6点付け(MNST-10H,LCSG-8,10,12,16,20)
C2004年〜2008年:ローライダー改6点付け(MNST-10H,LCSG-10,10,12,16,HVSG-25M)
D2008年〜2012年:ハイスピンダー6点付け(SF-16F,SVSG-12,16,20,HVSG-25M,30H)

これらの変遷において、ガイドセッティングを変更したことで以下のようなキャストフィーリングの違い
を実感した経験がある。

@ハイスピンダー5点付け ⇒ Aハイスピンダー6点付け
  ロッドが1クラス硬く感じられるが、ロッドのバットセクションがしっかり曲がるようになる。
  併せてライントラブルも低減し3投平均飛距離は向上する。
  ガイドフレーム材で比較すると、ステンレス鋼製よりもチタン製の方がロッドが幾分硬く感じ
  られるが、ステンレス鋼製の29gからチタン製は20gに軽量化される分だけロッドの振り切りが
  シャープに感じられる。

Aハイスピンダー6点付け ⇒ Bローライダー6点付け
  ロッドが1クラス以上硬く感じられ、抜け弾を打つ確率が増加する。
  トップから#3ガイドへのライントラブルは皆無に近くなるが、バットガイドへのライントラブルが
  増加し3投平均飛距離は低下する。
  特にテーパーライン区間のガイド抜け抵抗が大きい印象がある。

Aハイスピンダー6点付け ⇒ Cローライダー改6点付け
  ロッドが1クラス硬く感じられるが、ロッドのネジレ,ブレが極小化する感触でバットセクションの
  曲がりが安定化する。
  バットガイドへのライン通過もスムーズで、ライントラブルの発生率は最小に抑えられる。
  ローライダーガイドのフレーム材で比較すると、ステンレス鋼製よりもチタン製の方がロッドが
  幾分硬く感じられる。
  結果的にはこの『体感的な硬さ』に耐えることができなくなり、2008年にローライダー改6点付け
  からハイスピンダー6点付けにガイドセッティングを戻した。

こうしてごく標準的なハイスピンダー6点付けに回帰してキャスティングを続けていた2009年に
新たなキャスティングロッド用ガイド:KWシリーズが発売されたが、2012年時点でこのガイドを
スポーツキャスティング用ロッドに装着しているキャスターはほとんど見かけない。

キャスティング競技仲間で既にKWガイドをテストされた方々から伺ったところでは、
『ロッドが1クラス軟らかく感じられてリリースタイミングが安定しない。』
という印象をお持ちの方が多いようであり、ハイスピンダーガイドの高剛性フレームに慣れて
しまうとKWガイドの低剛性フレームが受け入れ難いというご意見のようである。

確かに、ガイドフット,ガイドフレームのチタン材はハイスピンダーガイドよりも細軸化されており、
ガイドフレーム自体の剛性感がハイスピンダーガイドよりもKWガイドでは数段軟らかく感じられる。

ここで少し考え方を変えてみると、ロッドが軟らかく感じられるというKWガイドでは、ハイスピンダー
やローライダーなどの歴代キャスティングロッド用ガイドによる『過剰な剛性感』を排除してくれるので、
腰痛や肩痛などの持病を持つキャスターにとってはスウィング動作が省力化できるメリットがある
のではないか?と考えた。

実際に私自身は過去の腰痛持病の影響で腰のキレが年々悪くなっており、ここ2,3年は
ハイスピンダー6点付け,ローライダー6点付け共にロッドが硬く感じることが多くなっていることから、
『ロッドが1クラス軟らかく感じられる』KWガイドに『40号ロッドを35号ロッドの感覚で振り抜けないか』
との期待を持って、テストを開始することにした次第である。

また、KWガイドのフレームはローライダーガイドに比べるとガイドリングが大口径化され、
ハイスピンダーガイドに比べると低重心構造に仕様変更を受けており、
ローライダーの低重心=ロッドの芯にシンカー荷重が乗り易い特性と、
ハイスピンダーガイドの大口径=ライン抜けの良さを併せ持つガイド特性が期待できる。


写真1:ガイド種別毎の重心高さ比較@

同一リング径のKWガイドとハイスピンダーガイドとを比較した場合は数mmの低重心化であるが、
#6ガイド:30mm,#5ガイド:25mm,#4ガイド:20mm,#3ガイド:16mm,#2ガイド:12mmの
ハイスピンダーガイド6点付けから、KWガイド6点付けでは
#6ガイド:25mm,#5ガイド:20mm,#4ガイド:16mm,#3ガイド:12mm,#2ガイド:10mmに1ランク
小口径化する組み合わせを採用すれば、ガイドの低重心化がより大きくなる。


写真2:ガイド種別毎の重心高さ比較A

KWガイドの低重心化により、ローライダー改仕様と同じようにロッドのネジレ,ブレが極小化する
感触でバットセクションの曲がりが安定化する効果も期待できるのだ。

2. ガイド換装作業開始

今回のKWガイドテストロッドにはリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425をチョイス。

2013年1月3日にローライダー改6点仕様を取り外し、KWガイド6点仕様を取り付ける。
翌2013年1月4日には、ガイド固定スレッドに1回目のエポキシコートを行った。

詳細は後述するが、ガイド固定スレッドへのエポキシコートは多層塗りで仕上げるため、
1回目のコート剤は極力薄膜になるよう注意する。


写真3:ガイド固定スレッドへの1回目エポキシコート塗布

冬季のエポキシコートは硬化時間が48時間程度かかることがあるが、今回は主剤と硬化剤の
配合比率をきっちり1:1に調整し、ごく薄く塗布したこともあり24時間後の2013年1月5日には
無事硬化を完了。

続いて、硬化したガイド固定スレッドのエポキシコートに塗装を施す。
塗装の目的は2つあり、単なる装飾目的以外にも紫外線によるエポキシコートの劣化防止も
兼ねて、塗装を行っている。

塗装なしでエポキシコートのみ行った場合は半年〜1年の使用でスレッドの日焼けが始まり、
さらに1年半〜2年も経つとエポキシコートの接着力が劣化しガイドのズレを生じることがある。

エポキシコートに塗装を施すことで、塗装膜の日焼けは生じるもののガイド固定スレッドを
接着しているエポキシコートの紫外線劣化は最小限に抑えられ、2年以上経過しても
ガイドのズレを生じることはほぼ皆無となる。

エポキシコートへの塗装には、今回はタミヤ・メタリックブルーX-13番を使用した。
塗料にもさまざまな種類のものが販売されているが、エポキシコートへの濡れ性と密着力や、
塗装面への仕上げエポキシコートの付着性を評価した結果、プラモデル用のアクリル塗料が
最適であったのでタミヤ製塗料を愛用している。

エポキシコートへの塗装は普通の水彩画用小筆で行うが、1層目は色ムラが出るため約10分の
仮乾燥後に2層目の塗装を施す。


写真4:1層目の塗装状態…色ムラを生じている


写真5:2層目の塗装状態…色ムラもなくなりきれいな発色

塗装膜が乾燥した2013年1月6日、最後の仕上げにもう一度エポキシコートを施した。
この作業では割り箸と爪楊枝を用いてエポキシを薄く塗るのがきれいに仕上げるコツである。

エポキシコートを筆や刷毛で塗ると、乾燥しているアクリル塗装がエポキシコートに含まれる
溶剤成分に溶かされて色ムラを生じてしまう。

また、エポキシコート中にアクリル塗料の成分が多量に溶け出すことで仕上げに塗布した
エポキシコートの硬化反応に異常を起こし、48時間以上乾燥させてもエポキシコート表面が
ネトつくような仕上がりになることもある。

そこで、割り箸と爪楊枝でエポキシコートを塗装面上に薄く伸ばすようにして塗り、アクリル塗料
の溶け出しを最小限に抑え、色ムラの抑制とエポキシコートの硬化反応異常を防止している。

こうして4日間かけてガイド換装作業も無事完了し、2013年1月7日、KWガイド6点付け仕様の
リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425が完成した。


写真6:KWガイド取り付け完了状態

3. ガイドセッティング別スペック比較

今回テストに用いた、リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425でのガイドセッティング別
スペック一覧を表1に示す。

チタンハイスピンダー6点式からステンレスローライダー改6点式へのガイドセッティング変更
により約4g軽量化できたが、チタンKWガイド6点式への変更では更に約7gの軽量化となる。

チタンハイスピンダーとチタンKWガイドの比較では約11gも軽量化されるが、25号シンカー
(約108g)を使用するST種目ではシンカー質量の約10%相当ものロッド慣性マスを削ることに
なり、その分ロッドの反発エネルギーが強くシンカーを押し出してくれるという理屈でいくらかの
飛距離アップが期待できる。

今回テストロッドにチョイスしたリョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425では、KWガイド
テストの直前までローライダー改6点式で約5年半:224投の投擲データを保有するので、主に
ローライダー改6点式ガイドセッティングとの比較で飛距離の比較分析と考察を進めることになる。

表1 ガイドセッティング別スペック一覧
 テストロッド リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425
全長 (m) 4.25
ストリップ仕様
カタログ自重(g)
550
ガイドセッティング種別 チタン
ハイスピンダー6点式
ステンレス
ローライダー改6点式
チタン
KWガイド6点式(Ver.1)
ガイド付仕様
実測自重(g)
#1セクション 94 91 88
#2セクション 179 178 174
#3セクション 361 361 361
合 計 634 630 623
ガイドセッティング トップガイド T-SF-16F : 0mm MNST-12H : 0mm MNST-12H : 0mm
#2ガイド SVSG-12 : 200mm LCSG-10 : 198mm KWSG-10 : 199mm
#3ガイド SVSG-16 : 440mm LCSG-10 : 439mm KWSG-12 : 438mm
#4ガイド SVSG-20 : 760mm LCSG-12 : 760mm KWSG-16 : 756mm
#5ガイド HVSG-25M : 1190mm LCSG-16 : 1192mm KWSG-20 : 1186mm
バットガイド T-HVSG-30H : 1888mm HVSG-25M : 1888mm KWSG-25 : 1885mm
リールシート T-LS-7 : 3,325mm T-LS-7 : 3,325mm T-LS-7 : 3,325mm
グリップエンド アルミ合金製 : 4,254mm アルミ合金製 : 4,254mm アルミ合金製 : 4,254mm

4. ファーストインプレッション

表2およびグラフ1にハイスピンダー6点式,ローライダー改6点式の各ガイドセッティング時投擲
データと、KWガイド6点式ガイドセッティングでの投擲データの比較一覧を示す。

表2 ガイドセッティング別投擲データの比較一覧
 テストロッド リョービ・スーパーD-HZ プロスカイヤー 40-425
ガイドセッティング種別 チタン
ハイスピンダー6点式
ステンレス
ローライダー改6点式
チタン
KWガイド6点式(Ver.1)
評価 テスト時期 2003年10月〜2003年12月 2007年7月〜2012年12月 2013年1月〜
(2013年1月14日現在)
投擲数/テスト回数 56投/6回 224投/23回 20投/2回
ライントラブル発生率 9.4% 0.3% 10.0%
平均飛距離 170.7m 169.4m 172.8m


グラフ1 ガイドセッティング毎の飛距離データ比較

KWガイドの実投テストは2013年1月12日以降2回行っているが、何れも無風〜弱い横風
コンディションであったためにシンカー弾道と飛距離が安定し、過去にテストを行った他のガイド
セッティングよりも優れた飛距離を得た。

しかし、富士工業が提唱している「糸絡み自動解除フレーム」でのライントラブル発生防止効果は
2回のテストに限ると体感できておらず、残念なことにKWガイド6点式での初投擲でライントラブル
を起こしてしまった。

ライントラブルの発生要因としては、投擲動作開始時の体の突っ込み(前方方向)やロッドのブレ
(バックスウィング方向)が挙げられるが、私自身の経験では腰のキレが悪い第1投目は特に
体の突っ込みが起こり易く、ライントラブルの発生率も高くなっている。

残念ながらその悪いクセが貴重な新しいガイドセッティングでの最初の投擲で出てしまった、
ということになる。
これはガイドに要因があるのではなくロッドを振る人間に原因があるのだが、#2ガイドに絡んだ
ラインはシンカーの着弾まで解けることはなかったことから、「糸絡み自動解除フレーム」の効果
についてはクエスチョンマークの付くスタートとなった。

キャストフィーリングについては事前の情報通りロッドが1クラス軟らかく感じられ、竿先からシンカー
までのタラシ長さとラインリリースタイミングの微調整が必要であった。
それでも当初目論んだ通りにロッドを曲げ易く感じる方向へのフィーリングの変化なので、10投程度
の連続投擲では飛距離の安定性が増した印象を受けた。

写真7はローライダー改6点式とKWガイド6点式でのロッドの曲がり具合を比較したものであるが、
キャストフィーリングにおいてはロッドが1クラス軟らかく感じられたKWガイド6点式セッティングでも
ロッドの曲がりはローライダー改6点式セッティング時とほぼ同じであり、ガイドを換装しただけでは
ロッドの曲がりが増す訳ではないことが判明した。

ただし、ロッドが曲がった状態からの反発挙動はローライダー改6点式とKWガイド6点式で若干の
違いが感じられ、KWガイド6点式の方が7g軽量化されることによる影響でロッドの返りがほんの
少しではあるが速くなり、シンカー弾道をコート左側まで引張る頻度が増した。

もしガイドセッティング変更によるロッドの軽量化効果でコート左側への投擲コントロールが精度
良く可能になれば、フェアゾーンの狭いST種目では左横風コンディションでの競争力が高まる
メリットがある。

なお、これらの評価,考察は2回のテストデータに基づく第一印象的なものであり、飛距離やライン
トラブル発生率,ロッドの曲がりと反発挙動についての評価考察については引き続き数か月間
データ採りを進めた上で結論を導く予定である。


写真7:ローライダー改6点式とKWガイド6点式でのロッドの曲がり比較